ど-151. 一日一本、これ大事です
シャーマル・・・マッドで医療部副長な、奴隷の少女。
「一日一本、これ毎朝の基本です」
「んで、一体何の事なんだ、シャトゥ?」
「猛牛?」
「いや、ますます意味が分からんし」
「クレトーレの実を擂り潰して、カルータレの骨粉とマイマイの葉の雫とその他諸々を微妙なブレンドで混ぜ合わせた特製ジュースなの。通称“もーれつに牛肉が食べたい”、略して猛牛?」
「……突っ込みどころが満載だな、おい」
「そんな事はない」
「いや、十二分にあるから。ちなみに聞いておくが命名って誰がしたんだ?」
「我です。良い名前?」
「シャトゥ、もう少しセンスってものを学ぼうな?」
「うむ?」
「それと、それ作ったのってまさかお前じゃないよな?」
「うむ。母様に教わりました」
「だよな。確かマイマイの葉の雫って分量を少しでも間違えると猛毒になるってやつじゃなかったか?」
「うむ。良薬口に苦し!」
「や、良薬ってレベルじゃ……そもそもアレって百年に一度、しかも一日だけ生い茂るマイマイの木の、朝日と同時に漏れた葉から微量に零れ落ちる朝露の雫――とか言うめちゃくちゃレアなものじゃなかったか?世間じゃ確か万能薬とかいって国一つ買えるほどの値段で取引されてるの見たことあるぞ、俺」
「我にかかれば簡単な事?」
「いや、それはある意味そうかもしれないけど、違うだろ?」
「うむ。母様が持ってたマイマイの葉の雫から、シャーマルが成分を分析しての合成に成功したって言ってた。我は体の良い人体実験です?」
「シャーマル……あぁ、医療部副長のシャーマルか。そう言えば最近自分の研究室にこもって何かしてるって聞いた気もするが、まさか万能薬の開発に成功してたのか?」
「ううん、失敗らしい」
「は?失敗?」
「うむ。成分的にはマイマイの葉の雫と同じなので巨人もコロリのものだけど薬としては傷薬が精々ってシャーマルは言ってた」
「どういう事だ、それ?」
「だって、万能の葉の雫はクゥちゃん特製の滋養強壮効果なのです」
「クゥちゃんて誰だよ、クゥちゃんて」
「うむ?…クゥ?」
「って、もしかしてシャトゥにも分かってない?」
「聞き覚えはある気がします。それにクゥちゃんはクゥちゃんなの」
「クゥ、ね………まぁどうでもいいか」
「うむ」
「しかしそうするとそれって単に毒ってだけじゃね?」
「――!我は毎日毒を飲まされていたのですか」
「いや、まぁ本当に適量なら薬になるはずだし、あいつが許してるんなら大丈夫じないのか?」
「毎日飲んでる事は母様には秘密。シャーマルに教わった」
「………よし、シャトゥ、ちょっと診てやるからそこに座って上着を脱げ」
「うむ?レムは我の裸をみたい?」
「見たくはな…いや、確かに今は診る必要があるけど、それはあくまで治療行為の一環であってだな」
「レムはいいわけをしています」
「だから違……、そもそも勘違いされてまで俺が見る必要もないんだよなぁ。よし、シャトゥ、これから医療部の方に行くぞ。誰かに診てもらおう」
「嫌!」
「…なんでだよ?」
「我はお注射が嫌いと告白します」
「よしっ、さっそく行くぞ。そしてぶっといのを打ってもらおう!」
「レム嬉しそう」
「そんな事はないぞ〜?」
「やー!!レムに犯される!!!たーすーけーてー」
「ちょ、おま、何物騒な事を…」
「きゃゆ〜……脱兎!」
「あ、待て、てめ…!」
クレトーレの実・・・紫色の毒々しい外見の果実。ブドウみたいな感じで、よく睡眠薬の材料に使われている。
カルータレの骨粉・・・カルータレ、と言う豚みたいな動物の骨髄を擂り潰したもの。食べると死ねる。
マイマイの葉・・・くるくると渦状なのが特徴。龍種でも一撃でころりの猛毒。
以上、かなりどうでもいい解説でした。
旦那様の今日の格言
「まあ、健康であるに越した事はない」
女神さまの本日のぼやき
「…逃げきった!」