ど-147. 人選の無駄
本日も懲りないレム君です。
「なぁ、ヒトには“ここぞ”って思う時って人生に必ず一度はあると思うよな?」
「我はヒトではないから答えかねます」
「…人選ミスだった」
「ところでレム、何を無駄な事してる?」
「無駄な事とはなんだ、無駄な事とは」
「それもそう。レムのする事はすべて無駄と母様も言ってた」
「…そんな事は断じてないぞ、シャトゥ」
「ならレム、今何してたの?」
「ふふっ、よくぞ聞いてくれた。ズバリだな、ヒトには人生に一度はここぞと思うとき、つまりは一番輝いて見える時が必ずあるんだよ」
「ヒトでないので我にはありません?」
「いや、多分あるとは思うぞ…って茶々を入れずにちゃんと聞けよな」
「うむ」
「よし。じゃあ続きだけどな、だからこそだな、その輝いている俺を奴隷たちに見せれば俺の威厳は回復どころか、ハーレムという夢への実現の第一歩どころか二歩三歩と進んでしまうのではないかという壮大な思惑が――…て、シャトゥ、その目は何だ?」
「やはり無駄でした」
「無駄ってなんだよ、無駄って。てかシャトゥ、お前は今俺の話の何を聞いてたんだ?ちゃんと聞いてたならそんな言葉は絶対に出てこないはずだ」
「…我が思うに、偉大な母様でなくても皆同じ事を言うと思う」
「根拠は?その根拠はなんだよ?」
「我の超絶稀なる勘です」
「はっ、所詮はシャトゥの勘だろ?そんなものを根拠にされても……いや、ちょっと待て。そう言えばシャトゥって元はあの“なんちゃって♪存在”の――」
「我の勘を甘く見ると痛い目見るぞ、レム」
「…どうしてだ?」
「皆の探し物を見つけた事が三度ほどあります」
「……高々三度程度――」
「今日一日で」
「……」
「あと母様からのお墨付きもあります。我の勘は素晴らしいものです、己の直感を信じなさい、と褒めてくれた。えへへ」
「……」
「ちなみに総計は我の指の数より多いので数えられませんでした」
「…それは、また。二重の意味でびっくりな事だな」
「レムに褒められても嬉しくないのはどうして?」
「そこは素直に喜んでおけ、と言っておく」
「うむ。では我の心に反して喜ぶ事にする。わーい……でもやっぱりあまり嬉しくないです」
「…と、言うよりもあいつも判を押す程に信憑性のある勘で今俺がやってる事は無駄だと言われたわけか」
「うむ。でも落ち込む事はない?」
「どうしてだよ?これが落ち込まずにいられるかっての。俺の、俺の輝いていた時は一体――」
「大丈夫。レムは存在自体が無駄だから?」
「――なぁ、シャトゥ」
「うむ?」
「多分、それはあいつに毒されてるだけだから、もうちょっと頑張って勉強しような?」
「レムの言う事はよく分からないけど、勉強はレムに言われるまでもなくします。我は母様のような立派なメイドになる!」
「…あれは断じて立派じゃない」
「だから我は母様に近づくために忙しい。レムも無駄な事に勤しんでください?」
「ゃ、ちょっと俺、もう一度自分を見つめ直してみる事にするわ」
「うむ?よく分からないけど頑張って?」
「あぁ、シャトゥも頑張れよ」
「うむ!早く“レムを操る五兆三千二百十一億飛んで三の方法”をマスターするのっ」
「――いや待てシャトゥ!それは一体何……くっ、無駄にこういう時の足だけは早いな。しっかし、あいつもあいつだぞ。一体今度はシャトゥに何を誑し込んでるんだか」
そして次第にシャトゥは完成?へと近づいていく。
旦那様の今日の格言
「俺の時代よ――カムバック」
女神さまの本日のぼやき
「我の時代、かもーん?」