ど-143. 夢の中の帰還
夢オチってのは便利です?
「レム、助けて」
「……!」
「レム、助けてっ」
「……!」
「レム、たけすて?」
「……へ?」
「我帰還せり!」
「どわっ!?」
「一味逞しくなった我を見よ、レム」
「……何だ、夢か」
「レム?」
「あぁ、シャトゥ。お前は本物…だよな?」
「うむ。一皮成長してしまった我を見違えるのは仕方のない事だけど、我は本物です。どう?どう??」
「どう?と言われても……あぁ、何となく目が覚めてきたな。んで、何がどこか変わったのか、シャトゥ?」
「ががんっ。我はショックです」
「相変わらずオーバーなリアクションをするなぁ」
「泣いてない。我は泣いてなどいません」
「……悪かった、俺が悪かったよ」
「ぐすっ、分かればいい」
「…今のでいいのか?」
「うむ。と、言うわけで我は数段飛ばして逞しくなりました。なった?なった??」
「ああそうだな、なってるね?」
「具体的にはどこが?」
「どこって……って、なぜに後退る?」
「今レムの視線に身の危険を感じました」
「成程。勘違いにも磨きがかかってるみたいだな、シャトゥ?」
「それほどでもない」
「で、だ。おふざけは良いとして冒険は楽しかったか?」
「うむ。レムの言うおふざけが何かは分からないけど、我は満足しました」
「そうか、それはよかった」
「下僕一号様の慌てる姿が非常に面白いの」
「下僕一号?」
「蔑称をファイと言う?」
「あぁ、成程。そう言えばファイの奴を連れてったって言ってたか。…あとな、それは蔑称じゃなくて本名だからな?」
「うむ。でも下僕一号様は下僕一号様なので大丈夫」
「何が大丈夫…て、しかも下僕と言いつつ敬称が“様”なのか。敬ってるのか下げずんでるのか分からないな」
「我の魂が叫ぶ、我の最大限の恩恵」
「訳分からんが、取り敢えず分かったから」
「それとレム、少しだけ待ってて?」
「は?待つのは良いけど、いきなりどうしたんだ?」
「我は今帰還したばかりなので誇り塗れ」
「…微妙に言ってる事の意味が違う気もするが、まぁ言いたい事は分かる。確かに埃っぽいしな。それで?」
「なのでレムに襲われる前に身を清めてくる。しくしく」
「…だから本気で泣くなつーの。それに誰が襲うかっ!!」
「レム」
「即答か。いや、な?シャトゥ、それは間違ってるから、俺はもうちょっとは立派な奴だから、勘違いを正そうな?」
「そう言う事を言うレムは本気?」
「ああ、本気も本気――て、なぜに部屋を出ていこうとする?」
「母様に帰還の報告を。あと覚悟を決めて身を清めてきます」
「だからいい加減その勘違いは――……つか、本当に行きやがっ、…………?何だ、今背筋にものすごい寒気が奔った気が。気の所為か?」
「母様、母様、あのね、レムが――」
色々な意味で逞しくなっていくシャトゥ。
そして色々な意味合いの被害が増えていくレム君。
メイドさんは草場の影で苦笑する。
『ワールドランキング上位十名ランダム発表会』(不定期掲載)
『夜天』
欠番ナンバーその一。白面と同様に名前が全く知られていないW.R.保持者で欠番のお方。
漆黒の髪と瞳をもった存在、と言われているが本来この世界に黒い髪と瞳の存在はいない。黒と言えば【厄災】に限られる。
ちなみにこのお方は欠番なのでW.R.の十人の中には入っていなかったりする。
旦那様の今日の格言
「悪影響のある芽は早めに摘み取っておくべきだ」
女神様の本日のぼやき
「我はまだまだ成長する。――この意味が分かる?」