ACT XX. ファイ-5
ファイ・・・レム君の料理を毎日作っている、天災料理人の奴隷の女の子。悪運強し。
シャトゥ・・・本名、シャトゥルヌーメ。女神様…ではない。
「…おや?」
「うむ?」
目の前の女の子、どこかで見たことがある気がします。
赤い目に、赤い髪のとても可愛らしい女の子です。でも見た事のない顔ですね?
最近新しくレム様に連れられてきた子……がいるなどとは聞いてないんですけど。どちらさまでしょうか?
「うむ、少しお時間いいですか、メイドさん一号?」
「?」
周りを見ます、私以外誰もいません。
試しに私自身を指さしてみると頷いて貰えました。どことなく偉そうな態度ですけど容姿から可愛らしさが滲んでいます。
…まあ偉そうにしてみたい年頃なのでしょう、きっと。可愛らしいので逆に和みますけど。
「なんですか?」
「我と会った事はありますか?」
「う〜ん、会った事はないと思いますけど、私も貴女様に会った事がある気がします」
…あれ?
今、私何か変なしゃべり方をしていた気がします。貴女…様?あれれ??
「名前は何ですか?我はシャトゥと皆から呼ばれて虐められてる?…いえ、気のせいです」
「シャトゥちゃんですか。私はファイって言いま――」
…シャトゥ、ちゃん?
「うむ?…ファイ?」
もう一度、よく目の前の女の子を見てみることにします。
赤い髪、赤い瞳、そしてその顔と――何より雰囲気。
「めっ――女神様!?」
「うむ?我はシャトゥルヌーメと言いますが女神ではありません」
「え?で、ですけど…」
「それと思い出した。確かファイ・ルーメと言う愉快なヒトです。そして我の下僕一号様」
「ふぇ!?」
その『ルーメ』という名前は以前女神様から頂いて誰にも話した事はありませんのに!
…や、やっぱりこのお方は女神様?でもどうして女神様がこんな場所に…
「ちょうどいい処で逢いました。下僕一号様、我は今から冒険に出ようと考えていますが一人だと心細いのです。ついて来て下さい」
「ふぁ!?め、女神様、そんな、私なんかに頼みごとなんて恐れ多い…それに頭を上げてくださいっ!」
「でもヒトにものを頼む時はこうすると母様から教わりました。間違っていますか?」
「い、いいえ。間違ってはいませんけど…」
それに、母様?…あれ?女神様にもお母さんっているのでしょうか?女神様のお母さんだとするとその方は……何と呼べばよいのでしょうか?
「では我について来てくれますか?」
「そ、それは勿論です、女神様!」
「うむ?ついて来てくれるのはありがたいけど、我は女神様じゃないのです」
「め、女神様じゃない?」
「うむ、もう一度教えますが、我はシャトゥルヌーメと言う名前です。皆からはシャトゥと呼ばれてさげずまれてる?」
「…いえ、さげずまれているかどうかは私は知りませんけど。で、でしたら貴女様の事はどうお呼びすればいいのでしょうか?」
「一番初めの呼び名でいいです」
「一番初めの呼び名?」
…と、言うとやはり女神様?ですけど、この方は女神様ではないとご自分で…
「気軽にシャトゥちゃんとお呼びくださいませ、下僕一号様」
「そっ、そんな。『ちゃん』付けなんてハードルが高すぎますっ!?」
「うむ?下僕様のくせに生意気な」
「ごっ、ごめんなさいシャトゥさ――……シャトゥ、ちゃん?」
「うむ!うむ、我は寛大ですので怒ってません」
「…ほっ」
よかったです。
「では下僕一号様」
「…はい?」
「さっそく地下迷宮へと突入ですー!!」
「………はい?」
地下迷宮と言えばこの館の地下に(何故か)ある迷宮のことですよね?そして護衛部の皆さんが修練のためによくお使いになる場所で……。
えっと、とても危険な場所ではなかったでしょうか?
「れっつ、ごー!」
「ふぇ!?ちょ、ちょっと待って、待って下さいシャトゥちゃん!?」
「時は待たないというものです下僕一号様。覚悟を決めて行くのだ、ごーごー!」
「え?え、えぇーー!?!?」
……後述として、せめて食料がほしかったです。
シャトゥは下僕を手に入れた!
…で、久しぶりにちょっと書いてみた。
そうしてファイさんの不幸?は始まって行く。
ちなみにファイさんとシャトゥの出遭い?は50ほど前の『ACT XX. ファイ-4』にある………かもしれない。