ど-136. 良い知らせです
吉報、とも言う?言わない?
「旦那様、良いお知らせが御座います」
「…何だ?」
「旦那様、そう身構えになられずともよろしいのでは?」
「自分の胸に手を当てて日頃の言動を考えてみろ」
「…、旦那様は必ずや諸手を上げてお喜びになるはずで御座います」
「……駄目だ。いつもの事から考えて俺の方が判断つかねえじゃないか。もううだうだと考えるのは止めだ。んで、その良い知らせって言うのは何だ?」
「はい、旦那様。実は旦那様の大事にされている花壇――」
「なっ!?また誰かが荒らしてるのかコンチクショウっ!!」
「…いえ、今朝方ラクリエの花が咲いたのを見かけたのでご報告を、と思ったのですが。旦那様、早とちりはいただけませんよ?」
「――――――…それを早く言えってばぁ」
「旦那様」
「何だ?」
「その必要以上に満面の笑みは余りにも気分が優れなくなるので即刻止めていただきたいと存じ上げます」
「何だよそれは俺が笑っちゃダメだとでも言うのか?」
「いえ、そのような事を申し上げているわけでは断じて御座いません。けれど、今にも張り裂けてしまいそうなこの胸の静まりをどうすればよいのでしょうか?」
「どうもするな。つか俺にどうしろって言うんだ?いや、それよりもそれだけの事なら俺はさっさとラクリエの花を見に行きたいのだが」
「旦那様、冷たいです。それもこれも全て彼奴等めの所為で御座いますか?」
「…ゃ、待て。少し落ち着こうぜ?」
「ええ、旦那様。私は十二分に落ち着いておりますとも」
「だよな、そうだよな?――まずは手にしたハサミを手放そうぜ?」
「おや、私とした事がいつの間に。己の行為に気づくのを拒絶しておりました」
「だから、まずはそのハサミを置いて、ゆっくり話し合おう?いや待てどこに行く気だお前?」
「本日は気分のよろしい天気ですので、少々散歩でもいたそうかと思いまして。いえ、断じてそれ以外の他意はございませんとも。ましてや彼奴等の始末を、などと……。さて、では行ってまいります」
「いや待て頼むからそこは無いって完全に言い切ってから出てって下さいよねぇ!?」
「旦那様、早くおいで下さいな?でなければ……ふふふっ」
「待てこらおい、いえ本気で頼みますから待って下さいお待ちになってお願いしますから考え直して下さいませっ!?」
「――えぇ、お待ちしておりますとも旦那様。旦那様の花壇の前で」
「いやだからっ!!!」
「………本日は良い日和で御座います。例えばそう、ラクリエを眺めながら外で食事と言うのもそう悪くは御座いませんか?」
心底どうでもいい知識。
ラクリエというのは三枚葉の赤い小さな花です。
別名、『赤き聖少女』ともいうらしいのです。
レムくんの好きな花の一つ。
旦那様の今日の格言
「良き日にはお祝いを」
メイドさんの今日の戯言
「良い事の後には必ず悪い事が御座います?」