ど-118. ハジケロっ!
空を飛ぶ手段はいくつあるでしょうか?
灼耀の飛竜・・・女神シャトゥルヌーメの一欠片を持って生まれた飛竜の事…らしいよ?
「一発飛ばしてみましょうか?」
「…は?」
「一発、トばしてみましょう」
「や、いきなりそれだけ言われても何の事か分からないから」
「ここは景気よく、盛大に行くのがよろしいかと思われます」
「だから何の事だよ、もう少し詳しく説明を求める」
「…旦那様」
「何でそこで俺が『はぁ、わざわざ説明しないと分からないのか、本当に仕方がないなこのクズめっ』ってみたいに溜息つかれなきゃいけないんだよ!?!?!」
「それは旦那様の被害妄想です」
「…だとしても、だ。ぐだぐだごたごたはいいからもっとちゃんとした説明を要求する!」
「単純に私が暇でしたので暇つぶしを、と考えただけの事ですが?」
「それでどうしてさっきの一言になる?」
「全く話は変わりますが本日は晴天で、このような空を闊歩できたとすれば非常に気持良さそうで御座いますね、旦那様?」
「何だよその急にの話題転換はっ!?つかそれは遠まわしに俺に空でも飛んでみるか?って提案してるのか?しているのか、ねえ!?」
「…旦那様は空を飛べたので?」
「そこでお前が驚くなよ。最初に提案したのはお前だよ」
「いえ、私はあくまで飛ばす提案と、本日は気持ちの良い晴天だと旦那様にお話ししただけでございます」
「で、その流れだと俺に飛べと遠まわしに要求している事に気付かないか?」
「旦那様、ヒトとは望めば空すらも飛べるのでしょうか?」
「飛べねぇよ!」
「旦那様はやればできるお方です」
「そう言っていつぞや俺をここから地上に突き落とした事があるのを俺は忘れない」
「そして旦那様が戻りになられたとき、いつにない規模で“隷属の刻印”を刻まれた方々を伴っていた事実を私も忘れておりません」
「ナンノコトですか?」
「果敢にも地上へダイブした事は覚えておられてもご帰還なされた時の事は覚えておられないとは、流石は旦那様。素晴らしく都合の良い頭をお持ちでございます」
「そう言えば飛ぶで思い出したけど灼耀の飛竜、今どうなってるんだ?」
「あからさまな話題転換ではありますが旦那様のご意思に沿いましょう。しかし旦那様はご自分で様子を見には行かれないので?」
「いや、アレも大きくなってきたからな、下手に懐かれると今は俺の身が危ない気がする」
「そうですか。旦那様がお尋ねになれば喜ぶでしょうに。…それではご報告いたしますが、灼耀の飛竜――アレクセ様はルルーシアと名付けられましたが、“彼女”ならば今はシャトゥと、それは楽しそうに遊んでおります」
「シャトゥと……、あぁ、言ってみりゃ同じような存在、もしくは魂の双子とか主と眷属みたいな関係だもんな。そりゃ意気投合もするよな」
「はい。それと旦那様?」
「何だ?」
「ルルーシアの件なのですがそろそろヒトを乗せての飛行を練習させようかと考えております。つきましては旦那様に乗竜して頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「俺に?……まぁ、灼耀なら誰かを背中に乗せるって事は嫌がるだろうしなぁ」
「旦那様なら心配は要りません」
「ま、確かに。…ま、今まで避けてて悪いな、って気はしてたしな。この際だ、その提案に乗るか」
「寛大な享受、ありがとうございます」
「これくらいどうってことないって」
「そうで御座いますね。旦那様がルルーシアにじゃれつかれ、危うく生死の境をさまよう事になる可能性もあると言う事実も所詮は細事と言う事なのでしょう」
「……やっぱり止めにしない?」
「致しません」
「だよなぁ。仕方ない、ここは腹をくくるとしますか。…ん?」
「旦那様?」
「なあ、そう言えばだけどさ」
「はい、どうしたのでしょうか?」
「最初お前が言ってた、飛ばしてみようってもしかしてこの事だったりしないのか?」
「……さて、どうだったでしょうか?」
メイドさんの真意はあくまでメイドさんの心の中だけって事で。
旦那様の今日の格言
「空は広いな、大きいな、っと」
メイドさんの今日の戯言
「本日は空を駆けるのには良い天気です」