ど-14. お姫さま
美少年を手に入れた!
旦那様はショタコンに目覚め……たりしないよ、ええ、本当に。
「数日前にアトラビが落ちたらしいな」
「はい、旦那様。確かにその通りでございます。情報部の方でも既にそのように確認が取れております」
「それは良いとして、風の噂なんだが国王は公開処刑、王妃は奴隷にされて相手国の下種貴族に買われるそうだがどうにも姫と王子の姉弟はまだ捕まってないらしい」
「はい、私もその噂は耳にしております。そしてお二方に懸賞金がかけられているのもまた事実でございます」
「で、だ。お前ここ数日何処に行ってたんだ?」
「失礼ですが旦那様、質問の意図するところが私には理解できかねます。それとも旦那様は今現在の状況を理解できぬほどに愚かだったので御座いましょうか?」
「いや、どっちかって言うと理解したくないなぁ〜って所かな」
「そうですか。良かったです。旦那様が私の期待よりも遥かに間抜けであると言う事実は何を賭しても覆い隠す事はできませんがまだましであるという要因が残っていらしたようですね」
「…じゃあ、敢えて今まで聞くまいと思っていたんだが…一応聞いておくぞ?」
「はい、何なりと。旦那様」
「お前の横に倒れてる如何にも身なりの良さ気な十四・五歳の女と十歳くらいの男は何だ?」
「アトラビの国の姫君と王子様、ご姉弟の御二方でございます」
「……お前、なぁ。数日失踪していたかと思えばやっていたのは人攫いか」
「いえ、それは違います旦那様。私が偶々散歩していた所、このお二方が城内に落ちていらしたので拾ってきたまでの事で御座います。それが何か?」
「アトラビの首都だったところでもう一つ、こんな噂がたってるのを知っているか?大きな麻袋を背負って逃げ出す女の使用人を見た、ってやつ」
「はい、それなら存じております。全く以って酷い話で御座いますね。そのお方は主人を見捨てて主の金銀を掠め取ったという事です。大変遺憾な事ですがその所業はメイドの風上にも置けません」
「ちなみにその麻袋の中から女のものと思われるうめき声が聞こえたらしいぞ」
「まあ、そうすると物取りではなく人攫いの類でございましたか。最近は“隷属の刻印”を刻まれた方々の売買も広まっている様子。身を切り売りするなど大変悲しい事です。私も涙がほろりと…」
「出てないだろ。しかも全くの無表情。少しでも悲しいって言うんならそんな表情をしろよ」
「…ほろり」
「……いいけどな。それとな、そもそも戦時中にこんな何処にでもあるような噂がたった理由だけどな、どうにもその使用人の女がえらく目立ったかららしい。何やらそいつは少々くすんじゃいたが見事なまでの銀髪だったらしい……お前と丁度同じ位のな」
「それは珍しいことでございますね、旦那様」
「ああ、メイド服着た銀髪ってのは珍しいけどな、俺は一人知ってるぞ。正確には銀髪の奴は今まで俺は一人しか見た事ないけどなっ」
「はい、私もお一方存じ上げています」
「ちなみに聞くがお前が今手に持っているその麻袋は何だ?」
「何、と聞かれましても麻袋としかお答えかねますが?それでも未だご不満でおられるのでしたら人を二人ほど入れても大丈夫なほど大きく強固な麻袋、とでも申し上げればよいのでしょうか?」
「ああ、そうだな。そこに転がってる二人くらい入りそうだよなぁ」
「旦那様」
「何だ?」
「敢えて申し上げます――私は潔白である、と」
「……あのな、これだけ状況証拠が揃って…しかもお前の発言も含めて今更そんな言い分が通るとでも思ってるのか?」
「悲しい事です。旦那様はこの私をお疑いになっている様子。人の想いとは常に報われないのがこの世の中の理なので御座いますね」
「で、もう言葉のお遊びは十分だと想うけど。お前は結局何がしたいんだ?てか俺に何をさせたいんだ?」
「そんな、私が旦那様にしてもらうなどとおこがましい事…数億と御座いますが敢えて申し上げる事は致しません。申し上げずともしてくださるのが旦那様の義務であり存在理由で御座います」
「俺の存在理由がんな変な事で堪るかっ。しかも断言するなよ……ん〜、でもなここって俺のハーレム実現の為の拠点だし、俺より偉い奴なんていらないぞ?」
「旦那様、言葉のお遊びはもうよろしいと申されたのではないですか?このお二方に“隷属の刻印”を刻み込めば済む話かと思われますが?そうすればこのお二方の所有権は旦那様に移ります。つまり見栄と欲望のみの旦那様が王族であられるこのお二方より上位に立てる唯一の方法でございます」
「一国の王族から奴隷に転落……まあ生きてるだけ儲け物なんだろうけどな。果たして誇りと生とどっちを取るかって問題だな。てか、お前はそうさせるつもりで連れてきたんだろ?」
「はい、その通りでございます旦那様。死ぬよりは“隷属の刻印”を刻まれた方がまだましでございましょう、と私は判断いたしました。そして隷属に堕ちるのならば、私は主には旦那様を推薦いたします」
「そんなに俺をかうなよ。じゃあ、早速“刻印”の儀式でも頼んでくるか……………ふむ、しかし奴隷の姫君、か。何となしにイイ響きだ」
「――旦那様?」
「な、何だ。いきなりドスの篭った声を出して?」
「いえ、そのお二方の教育係は通例どおり私が行いますがよろしいでしょうか、と許可をいただきたいだけで御座います」
「あ、ああ。それね。ん〜、別に今回は俺が特別手取り足取り…」
「ええ、許可をいただけたようで何よりで御座います、旦那様」
「…俺の立場は無視かよ。まあいつもの事だけどね」
「旦那様」
「何だよ、まだ何かあるのか?」
「はい、お一つだけ、僭越ながらお言葉を進呈させていただきます」
「何だ?」
「滅びたとはいえ王族の誘拐は大罪でございますよ、旦那様。匿うなど以っての他な事」
「…それをお前が言うか」
「私の所有権は旦那様に御座います。詰る所その意味は私の犯した罪は旦那様が償うべきである、と言う事」
「また、都合のいいときだけ所有権を主張するな…」
「それでは、ご納得いただけたようですのでこの御二方を魔道部の方へ連行してまいりますので、これにて失礼させていただきます」
「ああ、ってか俺の意見なんてそもそも聞いてないだろ、お前。もう勝手にして」
「中々心外なお言葉にございますが……それでは、失礼致します」
「………、姫様、ね。さて、王子の方はどうすっかな?確かアトラビの王子って言えばその歳で武芸に秀でてたって聞くし。今から警備の奴らに揉んでもらえば少しは使えるようになる、かな?」
本日の一口メモ〜
『奴隷たちの年齢について』
一部の例外を除いて、実は意外と若い。平均して15才くらい?
年を食うと奴隷として役に立たなくなる、と言う実質的な面もあるが本質としてはちょこっと違う。結婚適齢期(20〜30辺り?)になるとメイドさんが地上からお婿さんを探してきます。当然、旦那様には内緒で。そしてそのまま愛の逃避行へ…(喜)。
そして前回の解答の結果です。
答えは、1. でした。
旦那様の権利を無断使用いたします。ある意味これも違法です。“隷属の刻印”は本来は魂間同士の契約みたいなものなので全くの他者が無断使用はできないはずなのですが…メイドさんはします、無茶でもやります。それがメイドさんクオリティと言うものですから(断言)
登場人物紹介
アメリア
亡国アトラビの元王女様。お姫様ですよ、お姫様……まあ、元がつくけどね。
ムェ
元王子様。アメリアの弟。ショタで館内のお姉さま方に大人気だそうな。ある意味その人気は旦那様をも上回るっ!
…悔しくなんてないやい
カウントダウン、 ゼロ
…終わっちゃったよ