ど-102. 都合の悪い事は不具合と言う?…言わないよ
お久しぶりの、メイドさん
「旦那様には不具合がございます」
「唐突に何の事だよ、一体」
「修復すべきは是非もなく。旦那様には致命的とも言える不具合が生じております」
「おい、俺の話を聞け」
「はい、なんでございましょうか旦那様?」
「俺の、いったいどこに不具合があるって言うんだよ?」
「旦那様ご自身が自覚なされていないのが一番の不具合かと」
「うぐっ、それは無駄に説得力がある説明だな。…一応聞いておいてやるがその不具合って言うのは何の事だ?」
「常々思っていました事ですが、旦那様は――………、さて?」
「おいおいおいおい非常に気になる止め方をするなよ一体何だって言うのだよっ!?」
「いえ、よくよく考えてみれば旦那様に不具合などないと判明しまして。然るに初めからどうしようもないものは不具合とは呼ばずに欠陥、もしくは欠損と呼びます。旦那様は欠陥品ですね?」
「俺はどこぞの商品かっ!!」
「非常にお安くなっております」
「そこまで売れのこっちゃってるの、俺?」
「心配には及びません。旦那様でしたら私が一つと言わずいくらでも買い取りますので」
「…それは結構な事で」
「いえ、当然の事でございます」
「それはそうと…お前にも不具合があるぞ!」
「そうですね」
「そうですねって、そう簡単に認めるって言うのはどうよ?」
「どうよ?と仰られましても、表情が出にくいのは確かに私にとっての不具合ですので。確かに旦那様の仰られている事は直接的に突き刺すダーツのように正確であると言えます」
「…そういやそうだな。ついお前に対抗して言ってみのだが、これじゃ意味がないじゃないか」
「まるで旦那様の意義そのものですね?」
「…常々思っているのだがどこまでお前は俺の事を貶めたいのですか?」
「そんな、旦那様を貶めるなど恐れ多い事、私がするはずも御座いません」
「なら日頃のあの態度は一体全体何のつもりだ?」
「日頃と申されましても…いつ私が旦那様のお気に障るような事をしてしまったのでしょうか?」
「………それを心底真面目に言っているお前がつくづく怖いと、俺は思う」
「だ、旦那様に怖がられてしまったら私はどうすればよいと言うのですか?」
「是非もない。自分で考えろ」
「…、考えました。つまりはいつもどおりで問題ないと言う事ですね」
「何故そうなる!?」
「旦那様の不具合と密接につながっております」
「え、まだそのネタ引っ張ってたの?」
「ネタ、というよりは真実ですが」
「もういい。俺は行くぞ」
「はい。私も旦那様のお相手には疲れました」
「酷いいようですね!?」
「ですが飽きてはおりませんのでご心配なさず。そもそも旦那様とのなれ合いを飽きる事など…」
「あーいい、もういい。分かったから。そう言うわけだから、俺はもう行くぞ、行くからな?」
「はい、お引き留めして申し訳ございませんでした」
「まあ、適度な暇つぶしが出来たからいいけどな。…暇と一緒に俺の精神も若干潰れたような気がするけどな」
「では、旦那様」
「ああ、じゃあまたな」
「はい。………旦那様、優しすぎると言うのはある意味都合の悪い不具合と同じなのですよ。意味のない事と気づいていてなお、やはりご自身をお責めになりますか?」
のんびりと運営中。
久しぶりのメイドさんはちょっと調子が狂うかもしれない、と思ったり思っていたり。
旦那様の今日の格言
「都合の悪い事も見つからなければ問題ない」
メイドさんの今日の戯言
「既に露見済みで御座います」