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harem!〜カオス煮、いっちょ上がり!〜  作者: nyao
【スィリィ・エレファン編】
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ACT X. ???-現世にて信ずるは御魂の恩頼-


少しだけ裏のお話。


メイドさん・・・云わずと知れた、メイドさん

リッパー・・・レム君のストーカ娘でスフィア王国のお姫様。権力者で人気もある

燎原の賢者・・・敵、な男。


空間には亀裂が入り、結界そのものも今にも崩れ落ちてもおかしくはない損傷を受けている。


この景色を見せられて今から世界が崩壊すると言われれば間違いなく誰もが信じるだろう、そんな光景の中に彼女は一人立っていた。


その立ち位置は少しばかり妙なものだった。何かしらの強大な力がぶつかり合った――ちょうどその中間、そんな場所に一人で立っているのだ。だがその奇妙さを指摘する者はこの空間にはどこにもいない。



「全く、余計な手間をとってしまいました。ええ、本当に全くでございます」



他に何人もない空間で、メイド服を着こなしたくすんだ銀髪の彼女はため息を吐く。




だがふと、何かに気づいたように視線を巡らせて……ある一点で止めた。



「何故、貴方が此処にいるのです?」



怒気すら込めて――彼女にしては非常に珍しい事に――言葉を向けた先にはいつの間にか一人の男が立っていた。


紅い髪、赤い瞳、血の如き朱の衣に身を纏い、その表情に笑みを張りつかせて、男は楽しげに言葉を口ずさむ。



「何故?不思議な事を聞くものだね。そもそも灼眼の望みは何か、それを思えば何もおかしな事じゃない。実に皮肉な事だとは思うけどね」



二人の間に広がるのは間違いなく剣呑な雰囲気。だが一方で男はとても楽しそうに口元を釣り上げていた。



先に動きを見せたのは――メイド姿の彼女の方、だが男もすかさずそれをけん制する。



「――」



「おっと、残念ながら今日は貴女の相手をしに来たんじゃないんだ」



争いの意志はないという男に、取り敢えず、今は攻撃を諦める。



「…見れば解ります。その手に持っている杖――それは聖遺物でしょう?大方、目的は灼眼の集めた力でしょうか。するとその杖の形をした聖遺物は吸収型、と言う事になりますか」



「その通りっ!!!…集まった“力”が不思議と予想よりは少ないけど、今のところはこれで十分さ。でも一目で解るなんて、やはり貴女は素晴らしい。やはりあの男には本当にもったいないくらいだ」




「――あなたに、旦那様を穢す言動を許した覚えは御座いませんが?」




「おお怖い。僕としては事実を言ったに過ぎないんだけどね。君が気分を損ねたのならいくらでも謝罪しよう」



「心の籠らぬ謝罪など必要ありません」



「そう?僕としては充分に心を込めるつもりではいるよ?」



「だとしても全くの問題外で御座います。旦那様を穢すその口が何をおっしゃいましょうか。それは既に聞き届ける必要すらない類のものです」



「相変わらず君は一口目には旦那様旦那様旦那様って……全く本当に面白くないね」



「先ほどの言葉、意味が通じなかったのであればはっきりと申し上げさせていただきます、貴方と交わす言葉などない。黙るか、もしくは疾く私の視界から去なさい」



「やれやれ、本当にどうして…。つい、うっかりこの手にした力でアイツを殺したくなってくるよ。ほんと、君の守護さえなければあの程度の奴――」



「――」



「っとと。分かったよ、黙れって事だね。今、君と事を構える気ははじめからなかったしね。想定よりも“灼眼の因果”に集まった“力”が少ないのが妙なところではあるんだけど……」



「――」



「はいはい。なら早々に…藪を突かない内に退散するとしよう。あの男だってそろそろ僕の存在に気づくだろうし、僕としても好き好んであんな奴と顔を合わせたくはないからね」



「――」



「じゃあ、またね。…次に会う時は今度こそ僕の気持を受け取ってくれると嬉しいよ」



男の姿が消える。








その場に残ったのはくすんだ銀髪の娘が一人で――否。



振り返って出迎えに首を垂れる。





「――あいつはどうした?」



「……ほんの一足違いで御座いました、旦那様」



「そうか」



「ところで旦那様、一つお伺いしてもよろしいですね?」



「お、おう、何だ?……と言うよりも本当になんですか?微妙に雰囲気が怖いというか、俺何か悪いことでもしましたか?」



「何故、リッパー様まで連れてこられたのです、旦那様。彼――『灼眼の賢者』がいる事は分かっていらしたのではないのですか?」



「いや、解ってはいたんだけど…」



「本妻は譲りませんっ!…側室なら考えないでもありませんけど」



「と、言うように離してくれなくてな」



「……旦那様は、また“あの時”のような事を繰り返すつもりです――」

『っ!!』





「――ふざけてもそんな事はぬかすな。いいな?」





「申し訳ございません、大変失礼致しました旦那様」



「分かればいい。…っと、俺も少し大人げなかったか」



「そうですね。おかげでリッパー様が大変怯えておられます」



「〜〜、ワイルドさは殿方の魅力ですっ!!」



「…これで怯えてるのか?」



「訂正いたします。旦那様に惚れ直したご様子ですね?」



「こ、声が怖いのですが?俺何か悪いことでもしましたか?」



「いえ。それとも何か心当たりがおありですか、旦那様は?」



「全く、これっぽっちも。全然ない!」



「ならそう怯えずともよろしいはずですが?」



「それとこれとは話が少し違う気もする」



「違いません。それとリッパー様、旦那様が少々動き辛そうですのでそろそろ離れていただけると助かるのですが?」



「嫌」



「そう、ですか」



「…俺は今、初めてリッパーの事を尊敬しかけたぞ」



「では実力で排除します。ご容赦のほどを」



「そう簡単には…あら?」



「おぉ、かれこれ半日、ようやく解放されて独り身になれた。清々しいなぁ」



「うぅ!メイドさんの分際で!離して下さい!二人の逢瀬の時間の邪魔をしないでくださいっ!!」



「お断りいたします」



「わ、私は本妻ですよ!?」



「誰が本妻だ、誰が。しかしつくづく勇気あるなぁ、リッパー」



「旦那様もああ仰られております」



「あぅ、レム様ぁ〜」



「許せ、リッパー。つか、あれだけくっついてればもう満足してもいいと思うのだが?」



「そんな、レム様の温もりを頂ける時間に満たされこそすれ、満足などあるはずがありません!!」



「それには同意いたしましょう、リッパー様」



「そうですよね?やはりそうですよねっ?ですが本妻だけは譲る気はありませんからっ!!」



「見事です。挑発と受け取りましょう」



「望むところです!」



「何!?一体何の話してるの、お前たち!?それに一瞬前まで剣呑な雰囲気だったのに一瞬で仲良しこよしさんですか!?」



「乙女の友情は固いのです!そして恋する乙女は無敵なのですっ!」



「そういう事にしておきましょう」



「…若干一名、違うっぽいけどな。それはそうとしてアレがもういないんなら、せっかく解放されたわけだし、俺行くわ」



「――旦那様、どちらに?」



「ん〜、ちょっとばかり心配な奴が一人いてな。ちょっとそいつの様子見」



「……スィリィ様、ですか」



「お前、気づいてたの?」



「いえ、推測の域ですが。今この地にいる方々で旦那様がそこまでご心配なされるのはスィリィ様か…もしくはファイ様くらいしかおられないはずですので」



「まあな。スィーカットもいる事だし、そういう意味じゃあっちは大事にはならないだろうからな。ファイは……まあ何とかしてるだろ。何気に悪運強いし、ついでに言うとポケットに最終凶器もってたしな」



「凶器ですか?」



「そう、あいつ自作の飴玉が一つ。アレ一つで千人は殺れるはずだ」



「流石にそれは言いすぎ…でもない気もしますね」



「だろう?」



「…むぅぅ、お二人とも、私に理解できない会話をしてらして、ずるいです!それとメイドさんはそろそろ私の関節極めるのを解いてくれると嬉しいです」



「それはお断りいたします。旦那様の命ですので」



「ああ、拘束といたら即俺に飛びかかってくるだろうしな。絶対解くなよ?」



「了解いたしました、旦那様」



「スィリィのバカ野郎、感情に任せて冰頂の力を馬鹿みたいに使い散らしてたからな。“馴らし”もなしにあんなんで身体が耐えられるかっての。…取り敢えずはしばらく様子を見てみるつもりだから。しばらくは帰れない可能性もある。そのつもりでよろしくな」



「了解いたしました、旦那様」



「んじゃ、行ってくる」



「はい、行ってらっしゃいませ」



「ああ!?レム様!!!!」




一方の無言の礼ともう一方の悲痛の叫びを受けて、消えた。


今度こそその場に残ったのは二人――女二人だけ。




「ひっ、酷いです!レム様が行ってしまわれました!?それに先ほどから仰られているスィリィさん?ですか。なんだか女の人のような気がしますし!!」



「スィリィ・エレファン様は間違いなく女性で御座います、リッパー様」



「や、やっぱりっ!?そんな、レム様の貞操の危機ではありませんかっ!?」



「申し訳ございませんが私は旦那様の命には逆らいませんので。……それを踏まえた上で提案が一つあるのですが、よろしいでしょうか、リッパー様」



「何を…」



「こちらをどうぞ」



「はい?…これは手配書、ですね。えっと、『幼女&養女誘拐拉致監禁調教未遂容疑』レム・ザ・へたれキングを捕まえし者に金貨10枚を与えるものなり?』ふむふむ、成程ですね」



「如何でしょうか?」



「ですがダメです!!」



「何故でしょう?」



「金貨10枚は少なすぎます。百枚は出すべきです!」



「それは盲点で御座いました!ではそのように変更しておきましょう」



「はい、お願いします!!…ですが、目から鱗です。このようにしてライバルの魔手を寄せ付けないようにしつつ、身柄の確保を同時に行えるわけですね!…なかなかいい手際ですね、メイドさん」



「お褒めいただき、恥ずかしい限りで御座います」



「いいえ、私は誇ってもいいと思います!」



「そうでしょうか?」



「ええ、そうです!!」



「……ふふ、あなたとは気が合いそうな気がいたします」



「私もです!本妻は譲りませんけどねっ!!……では、元の場所に戻り次第、さっそくこの手配書を国中…と言わずギルドに回して世界中に公表するとしましょう!」



「ええ、よろしくお願いいたします、リッパー様」



「どんと任せて下さい!!」



「「ふふふふふっ」」



まあ、関係ない会話…?


と、言う事があったそうな。





済みません、もう少しだけ続きます。いや、もう少しと言うか、あと一話ですけど。ちなみに書きたいお話はこれではなく、次回のお話です。


しかしレム君、相変わらず酷い目にあっている様子。

と、言うわけでスィリィ嬢が逃走劇に巻き込まれる事になった直接的な原因でした。


次回こそ、スィリィ編のらすとだ!


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