ACT XX. スィリィ-27
全てを忘れたその頃に。
スィリィ・・・この物語のメインの女の子。いろいろあったけど…
アイネ・・・スィリィ嬢の親友?の女の子。胸を刺されて死にかかっていた気もする
「んっ、ぁぅ…?」
「スィリィ、起きた?」
今の、声は…
「アイネ!?」
「わっ!?」
「アイネ、大丈夫?無事っ!?」
「無事って、そもそも私は元気だけど、どうしたの、スィリィ?」
「ぇ、あ……そう、よね?」
何でだか、アイネが誰かに殺されかけた気がしたんだけど、いくら考えてもそんな事実はないし。
それにアイネだって全然元気そうだし、やっぱり私の勘違い…?
「――」
「スィリィってば寝ぼけてる?」
「…そう、よね。うん、ごめん。ちょっと寝惚けてたみたいだわ、私」
アイネが殺されかけるなんて、しかもそれをあいつが、なんてそんな悪夢みたいな事あっていいはずが……あれ?あいつって、誰の事だったかしら?
「???」
「スィリィ、大丈夫?もう学校行く時間だけど、無理そうなら休んじゃう?」
「――あぁ、いいえ行くわ。ごめんね、ちょっと今日は調子が乗らないみたい」
「まっ、無理もないよ。スィリィってば、覚えてないだろうけど道端で倒れてたんだよ?」
「倒れて…私が?」
「うん、道端…って言っても寮の前に倒れてて、二日ほど目を覚まさなかったんだから」
「二日も?」
「そう。お医者様に見せたら軽い魔力欠乏だって。その割になかなか起きなかったけど、スィリィってば何かやっちゃったの?」
「……私が二日も寝てたとか、それって本当の事よね?冗談とかじゃなくって?」
「本当に決まってるでしょっ。私がどれだけ心配したと思ってるの?私そんな薄情じゃないよっ!」
「……」
参るわね。ほんとに、全然記憶にない。
もしかするとまだ少し頭がぼっとするのは、ちょっと長く寝過ぎちゃったからかもしれない。
それにしても不思議なものよね。すっごく心配してたのはこっちだって言うのに、起きたら逆に心配されて………
「……」
「スィリィ?」
「あ、うん、ごめん。またちょっとぼっとしてたみたい」
今も何か変な感じがした気が…。私、どんな事を考えてたっけ?
………ダメだ。ちょっと前の事はずなのに、何でか全然思い出せない。大事な事だった気もするし、とても他愛ない事だった気もする。なんなのかしら?
「スィリィ?本当に大丈夫?」
「ええ、大丈夫。私は大丈夫…な、はず」
「はず〜?なにか危ないなぁ。ホントに今日は休んじゃった方がいいよ、スィリィ。先生たちには私の方から言っておくからさっ」
「や、本当に大丈夫なはず……いえ、大丈夫だから。身体は心配ないのよ。ただちょっと頭の方が、少し霞がかったみたいにぼっとするだけだから」
「ちょ、そっちの方がやばいって、スィリィ!」
「…あー、うん。そうなんだけど、そうじゃなくって。だからっ、ちょっと寝過ぎて頭がぼぉってしてるだけだってば」
「あ、なるほど。確かに二日ってのは寝過ぎだもんね。って事は単なるスィリィの寝坊だったわけか。いやぁ、焦った焦った――てぇ、これ以上心配させんなバカっ!!!」
「あいたぁ!?」
「全く、ふざけるのも大概にしてよね?」
「や、別にふざけたってわけじゃ……でも、ありがと。それとごめん、心配させちゃって」
「ぁ、ぁ、ぅ……いいのよ、そうやってちゃんと反省してくれれば、うん」
「そう?」
「そのなのっ。それよりスィリィ、ちゃんと元気なら急いで学校行くよっ。スィリィのバカなコトした所為で急がなくっちゃ間に合わないんだからっ」
「いや、それはそもそも自業自得のような気が…」
「良いからっ、つべこべ言わずに急ぐっ!」
「分かったわよ、もうっ。…そう言えばヒトコマ目の講義って、何?」
「実地だよ!しかもファアフお姉様のだから人気課目なのっ本当に急がないと定員割れしちゃうんだからっ!」
「定員割れって、どれだけすごい人気なのよ…?」
要は場所さえあれば定員割れなんて起きないんのよね。確か、私の記憶が確かならこの学園の総数の三割はおさまるだけの運動場、もとい特殊空間が用意されててた気がするんですけど?
つまりはファアフお姉様とやらの講義ってアルゼルイ全生徒の三分の一以上のヒトが受けに来てるって言うの?……んな馬鹿な、でしょ流石に。
「ねえ、アイネ?」
「何っ、本当に急がなくっちゃなんだけどっ!?」
「ところでファアフお姉様って、誰?」
「――え!?」
「と、言うよりもそんな名前の講師の人っていたかしら?まあ流石に私も全講師の名前を覚えてるわけじゃないけど」
流石にそれだけの人気が有れば覚えてても不思議じゃない気がするんだけど、少なくとも私の記憶には『ファアフ』なんてヒトの名前は聞いたことがない、わよね?
「……スィリィ」
「な、何よアイネ、急に真剣な声出して」
「スィリィ、やっぱり今日は休んだ方がいいって」
「何言ってるの?だから私は十分に元気だってば」
若干、ちょっと前よりも身体が重いかな?って感じもするけど、たぶん二日も身体を動かしてなかったからだし。
「いいからっ、スィリィは今日はお休み、これ決定。はい分かったっ?」
「え、や、でも…」
「スィリィはまだ疲れてるんだよ。そうじゃないとファアフお姉様の事を忘れるだなんて、そんな恐れ多い事できるはずがないしっ。……それともまさかこの期に及んでまでふざけて私をからかってる、何てことはないよね?」
「ないない。ないってば。だからそんなに睨まないでよ」
「そう?ならいいけど…て、よくはないけどっ。とにかくスィリィはもう少し休んだ方がいいよ」
「…うん、まぁ、分かったわ」
アイネがここまで言うんなら…私自身は本当に元気だし身体も万全だと思うのだけど、安心させてあげる為にもここは引き下がった方が利口よね?
そうして、私はアイネを見送って自分は部屋の中に残る事になった。
――何かが違う、何かが足りない
「さて、どうしましょっか?」
本当に体は元気そのもので。素直に休んでる気になんて全然なれないんだけど、後で休んでない事をアイネに知られたらそれはそれで大変な事になりそうだし。
少し考えた末。
「……ま、いっか」
ファアフお姉様とやらはすごい人気らしいし、なら少なくとも一コマ目で私がアイネに見つかる事はないと思うし。
どこか適当に散策でもしてみましょうか。
――致命的なまでに何かがズレている
絶対に拭い切れない違和感を覚えたまま、
いつか時間がその違和感を消し去ってくれる事を信じて。
私は惹かれるまま、導かれるように足を進める事にした。
全てを忘れてしまったスィリィ嬢。
さて、違和感は時間が拭ってくれるえのか。それとも惹かれるままに足を進めた先で何かしらの出会いがあるのか。
………ど、どうしようか。全く考えてませんよぅ(汗)
取り敢えず、非常に尻切れな感じでひとまずの“灼眼の因果”は終了と言う事で。
もうじきようやくこの物語でやりたかったヒト場面を出す事が出来ます!…かな?そんなものは一切の覚えがない。