ACT XX. スィリィ-24
小瓶の悪魔さんは強いのです
冰頂の力が全てを覆い尽くす。
世界を改変する――“制限しなければ”森羅万象万物に介入出来得る、本当の意味で神に次ぐ力。
世界が青になって、私の望んだモノに対して牙剥く刃。
「あぁもうっ、何でかな、点睛っ?」
「スヘミアさん、短気は…」
「判ってはいる、んだけどねっ。…もうっ、さっきから厄介過ぎだよ“冰頂”の能力〜!!」
「そうですか?私はそうでも――」
「そりゃそうだよっ!?ラライちゃんにとってはこの程度の攻撃何でもないだろうけどさっ!?」
「…そんな事、ないですよ?」
「あるのっ!!でも全方位が全部敵だなんてほんとに無茶苦茶だよ?!?!」
「……『点睛の魔女』の言えるセリフじゃないと思いますけどね」
「シャラップ、そこっ!」
それでも中々うまくいかない。流石は世界最強に数えられるだけの事はある。
…いや、この場合、もしかせずとも私の方が異常なのよね。ほんの少し前までただの一学生だったはずの私が、こんな風に一方的にあの『点睛の魔女』と『灼眼の剣士』を攻撃してるんだから。
「〜〜っ、もう我慢の限界、“点睛”!!」
来るっ!?
「っ、冰頂」
――分かっています。こちらは私が引き受けましょう、スィリィ・エレファン
がきっ、と。
身体に割り込みを受けた私はそのまま構わずに動きを続ける。
「え、嘘なんで!?今確かに割り込んで…」
「スヘミアさん、恐らく今のは“冰頂”が代わりに――」
その通り。さすが、と言いたいところだけど――チャンス。
点睛の魔女は驚きで、灼眼の剣士はタネを点睛に教えるために私から意識が逸れた。当然、見逃す私じゃない。
「――終わりよ」
「うむ、その通りだな」
「――ぇ?」
「おいたが過ぎるな、冰頂の転生体。お前がこの魔術に中てられてどうする」
「ぇ、あ、…何で?」
急に、力が入らない。
後ろに立っているのは誰?スィー、カット…?
「“これ”は殺意を誘発する魔術だ。故に、今お前が持っているそれは決して、お前自身の殺意ではない。まずはそれを認める事だ。」
いえ、違う。これは――
「ああ、予め言っておこう。抵抗はするだけ無駄である、特にお前のような外部出力型ならば我に勝る事は不可能だ」
――検索。
私は“彼”を“知って”いる。
『優しい悪魔』スィーカット。原初の白龍の時代より生存が確認されている、希少種にして世界を滅ぼすほどの力を有する数少ない存在。
神にも匹敵すると三柱をして云わしめた“原初の白龍”ルーロン、彼女に及ぶとも言われていたほどの実力者であり、同時に彼女の友人であった模様。
“彼”が害を加える事はほとんどないと言ってもいいが、けれどだからと言って無視していい存在じゃない。むしろ意図せぬ介入を受ける可能性もあるから注意が必要。
性格は気分屋ではなく、一途で一本気。こうと決めたら動こうとしない頑固者であり、褒め言葉や応援に非常に弱い(ここ重要)
能力、不明。だが『破壊』に特化したものであるものと推測される。
つまりは、一種のバケモノであるって事。
それを使徒さえも言っているのだから、本当なのだろうし性質が悪い。なら私の中の、冰頂の力だけを切り離してしまう、なんてこともできるかもしれないわけだ――今みたいに。
周りには私の集めた“力”があるはずなのに、それに“触れられ”ない。つまり、力を揮えない。
でも、今まで対して気にもしなかったけどどうしてこんな所にそんな大物が…。
「それに気づかぬか?今はこのような事をしている場合ではないぞ?」
「――?」
「来た、な。…コレは流石にミミルッポの傍を離れる訳にはいくまい」
何かとっても嬉しそうな声を出して、背後の気配が消えた。
もう動かせる!?
どうしてかスィーカットが退いてくれたおかげで、力の自由が利くようになった。この隙にあの二人に今度こそ――
と、思ったけど、その二人の視線は私の方を見ていなかった。ぼんやりと――いえ、あれはこことはどこか違う空間を見ているのね。
一体何が――って、チャンスには変わりないから良しとす――
――みぃつけた。毒婦、私を否定した、愚かな器、愚かな聖上
どこからともなく、身震いするように冷たい声が脳裏に響いた。
スィーカットさん、本領(?)ちょっとだけ発揮してます?
しかしこんな事で終わりに迎えるのか、と思ったりなんだったり。
スィリィ嬢は相変わらず酷い目にあい続けております、と言うよりもスィリィ嬢だけが割を食っているという状況に……まあいいか、それがメインの宿命ってものですものね?
では、スィリィ嬢にはもっとひどい目に当ていただきましょ〜(???)