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harem!〜カオス煮、いっちょ上がり!〜  作者: nyao
【スィリィ・エレファン編】
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ACT XX. スィリィ-22


なげっぱなし。


スィリィ・・・この物語ではメイン?のはずの女の子。

アイネ・・・スィリィ嬢の一番のお友達の女の子。

アレフ・・・武術科の男の子。『ACT XX.スィリィ-2に少しだけ登場



「…!」



空間を砕いた瞬間、向こう側に広がった景色に、見覚えのある顔を見つけた。



…アイネも、ここに巻き込まれてたんだ。


巻き込まれていた事に、見つけられた事に、会えて良かったような悪かったような、奇妙な感覚が胸に湧き上がって、



「アイ――」



私は、



「――ネ?」



親友に、アイネ・シュタンバインの胸に深々と剣が突き刺さる光景を直視した。



「――すぃり…ぃ?」



手を伸ばせば届くような、本当にそんな距離。いつもと違う、アイネが濁った瞳で私を見て、



「やっほ、すぃり…」



大量の血を吐いた。



咄嗟にアイネに手を伸ばす。


手に触れたアイネの体は温かくて、それでいてどこか無機質のように冷たい気がした。


小さな痙攣を繰り返していて、揺すったり手を離したりしてしまうとそのまま壊れて消えてしまいそうで怖い。





「――」



「スィリィ・エレファン?どうしました、早く進みなさい」



「――」



「それともまた変なモノでも見ましたか?」



「――」



「何をどうし……む?」





何、これ?…え?


非常事態なのは分かってたけど私には“冰頂”がいて、他のヒト達も緊張感がないけど何だかんだ言って全然大丈夫そうで。


さっきまでは、『こんな状況を作り出した奴を一発殴ってやらないと気が済まない』なんてことを思ってて。


……え?






そんな私の意識を呼び覚ましたのは後ろからせっついて来ていた冰頂じゃなくて。






「ぅ、あ、え?何で、俺、どうして……」



「……」



あぁ、そうだった。


呻くような声に、ようやくもう一人の存在を思い出す。


そう、だ。ここは“因果の意図”の中で、だからこそアイネを傷つけたのはアイネに一番縁のあるはずの――そいつ。



思えば今までが奇妙なだけだったんだ。


私の“応報”はレム・スタンピートで、沸き上がった殺意のままに私は彼を殺した。…もっともこれには“一応”がつくけれど。


スィーカット、ミミルッポ、ライカーレの三人の“応報”はどうなのか分からないけど、見当はつく。多分スィーカット、あの世界も破壊できる『優しい悪魔』が他の二人の事を護っていたに違いない。


そしてエレムは考えるまでもない。彼女が殺し尽くしたあの悪種達、あれがきっと彼女の“応報”。


“因果”の“応報”で傷つけ合い、競い合い、殺し合い、高め合う。それが此処のルールであり前提。


呼ばれる殺意は、沸き上がる殺意はそんな簡単に抑えられるものじゃないって事は私自身がよく理解しているじゃない。



ただ、今この、私の感情は“応報”の所為なんかじゃない。



「そんなつもり、全然なくて、一緒に協力って、さっき……なん、で?」



それは貴方が弱いから。力に振り回された、愚かな私と同じだから。


だから、アイネをこんなにした“報い”を受けさせてあげる、この私が。



「――あああああ!!!」





冷静に。



「――え?」



少し呆けた、見覚えのある男の顔。あぁ、えっと、誰かと思えばアレフじゃない、武術科の。



「あああ!!!」





極めて冷静に。



なんで、よりによってあんたかな?


――と、最悪を思い出す。そもそも私が科の違う彼の名前を覚えてたのだって、アイネに聞いたから。


アイネの一番縁のある相手がアレフ?そりゃ、よかったじゃない。喜ばしい事だわ――だ、なんて。じゃあなんでよりによってあなたがアイネを傷つけてるのよ?





左手が殺意を作る。



――スィリィ・エレファン、それは…!?



うん、そう。これは私。


今度は、今度こそ他の誰でもない私自身の殺意の塊。静止する世界の青の息吹。






ようやく、本当にようやくこの“因果の意図”って魔術が最悪だって事を理解する。


だって、だってよ?一番縁のある相手と言えばほぼ例外なく――私の場合は例外に違いないけど――好きな人同士、未来の結び結ばれる相手なんだから。


それをよりによって殺し合え?殺意はこちらが用意する?


――本当に、冗談じゃないくらい最悪な魔術だ、これは。


きっとこんな光景は“因果の意図”に取り込まれたヒト達の周りでは今現在に渡って満ち溢れていて。だからこんな“最悪”を考えたのも、きっと“最悪”に違いない。






形作る殺意は一瞬。だから頭に瞬いた想いも一瞬。


これ以上ないほどの明確な意志を込めて、私は茫然と佇む親友の思い人に“清浄なる粛清”を振り下ろす。


ヒトを殺すという行為を、私自身の意志で以て執り行う!



「――」



ずっと呆けたままだったアレフの表情が私の振り下ろした“殺意”を見て、ほんの少しだけ安堵に笑ったように――





その頃のスィリィ嬢一味。

アレフ君、誰も覚えてないだろうなぁ。私だってほとんど思えていません。


う〜む、何かスィリィ嬢のみが酷い目にあってる気がする。他の面々は割とお気楽なのになぁ。…あ、あとハインケル先生とかもいたか。


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