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harem!〜カオス煮、いっちょ上がり!〜  作者: nyao
【スィリィ・エレファン編】
162/1098

ACT XX. いん、スフィアтри


триはロシア語の三です。

意味は全くない。

何もない空間、そこにひと組の男女だけがぽつりと存在していた。それ以外は何もない、地平線の向こう側までただひたすら世界が広がっているだけ。


男の方は興味深げに辺りを見渡しており、女の方はそんな男に僅かに眉尻を上げている、といった風景。





「やれやれ、これはまいったね」



「…あなた」



「と、同時に興味深くもある。“因果の意図”がこれほどのものとは、これってもしかして魔術の最高峰たる“隷属の烙印”に匹敵する出来栄えじゃないのかな?」



「…あなた、少し不謹慎じゃありませんか?」



「そんな事言っても、ねぇ。現状で僕たちに何ができるって言うのかな、マイハニー?」



「する事なら沢山あるじゃないですか。ここ――おそらく“因果の意図”内部からの魔術の解析とか、脱出法を探るとか、多分巻き込まれているだろう他の生徒たちを探しに行くとか」



「そうだねぇ〜」



「ならそんな呑気そうにせず、」



「なら聞くけど、君が言った事のどれか一つでもできると、君は本気で言って信じているのかな、マイハニー?」



「それは、私の実力では無理でも、あなたなら何とか…」



「評価してくれるのは嬉しいけどね、流石にここまで完成度の高い式だと僕には無理だよ、特に内側から何かする、なんてことはね」



「そうなんですか?」



「うん。外にいたなら、まぁなんとか小細工程度はできたかもしれないけど」



「でもそれなら――」



「うん、言いたい事は分からないでもないけどね、マイハニー。今回に限り君のいう“お姉様”からの手助けは一切ないと考えていい」



「で、でもお姉様なら」



「無理だね。あぁ、とは言ってもこれは“お姉様”――あの『白面』が何もできないという意味じゃない。彼女は今回に限り絶対に手助けをすることはない、と言うだけの事だよ」



「ぇ、それはどういう…?」



「何も難しい事じゃない。彼女の御主人様であり君の元御主人様からそう聞かされているだけだよ。そして、彼がそう言ったのであればどんな理由があってどんな状況になったところで『白面』が出てくる事はありえない。これは僕よりも君の方が理解しているはずだよ、マイハニー?」



「それは…確かに、レム様がそう仰られていたのならお姉様は……」



「ま、そう言う事だから。救援は考えない方向で何とか現状を打破しないといけないんだよねぇ。…そもそも他人の手を借りようって考え自体が甘えのような気もするけどね」



「…先ほどまで何かをしてらしたようですけど、なら何か現状打破の糸口でも見つけられたんですか?」



「いや、全く。ほんと、驚くほどの完成度だよね、コレ」



「あなたっ、感心してる場合じゃ――」



「うん?まあ落ち着いて。巻き込まれている生徒たちが心配かもしれないって言うのは解るけど、だからって焦っちゃいけない。あくまで冷静に、ね?」



「あ、はい。……ごめんなさい、あなた」



「いやいや、そんなところも君の素敵なところさ、マイハニー」



「…そんな」



「照れた表情も可愛いよ?」



「…もうっ、余りからかわないでくださいっ。ちゃんと現状を考えて…」



「うん、もちろんちゃんと考えているよ」



「そうなんですか?」



「……もう少し僕の事を信用してほしいなぁ」



「いえ、別に信用していないわけでは…」



「分かってるよ、マイハニー。まあ結局この術式について解った事はたった一つだけ、この世界から脱出する手段は一つだけって事。そしてその一つって言うのがコレ、さっきから僕の頭の中に囁きかけて来てる声。たぶん君にも聞こえているんでしょ、マイハニー?」



「…私の気のせいかと思っていたんですけど、違ったようですね」



「そいう事。そして現状を打破できそうな方法はこの一つだけって事なんだよね」



「でもっ、こんなこと私にはできませんっ!!」



「そんなの、僕にだって当然無理だよ。マイハニー、“君を殺せ”だなんてたとえ世界が滅んだとしても拒絶する」



「私もです」



「あぁ、もうっ可愛いなぁ」



「わぷっ、ゃ、ちゃんと時と場合を考えてください、あなた」



「僕に抱きつかれるの、嫌?」



「嫌じゃないです。そんな事あるはずもないです。でも、もう少し真面目に事を考えて…」



「ヒトからはよく誤解されるけど、僕はいつだって真面目なつもりなんだけどね?」



「あなたの真面目の基準は他の人とはずれてるんですっ」



「みたいだねぇ」



「……だから、放っておけないんですけど」



「うん、いつもありがとうね、マイハニー」



「いえ」



「…でも――ほんと、何を考えてこんな事をさせようとしているのかね、『灼眼』は。結局答えを聞かないままこんなところまで飛ばされちゃったしねぇ」



「……私もそれを考えてみました」



「何か気付いた?」



「いえ、ですが“因果の意図”が潜在能力を無理やり引き出していた事、そして今の状況においてまだその魔術は実行中である事から、考えられる可能性は多くありません」



「うん、それで?」



「恐らくコレも対象の潜在能力を開花させるような手段の一つだと思うのですが…違ってますか?」



「いや、僕もそう思うよ。実力、能力の近い相手か――もしくは関わりが深い相手と殺し合いをさせる事によって一定の能力を引き出させようとしている、と僕は睨んでるけどね」



「殺し合いで死んでしまったら…」



「それまで。ジ・エンド。お終い、終了、って事じゃないかな?………もしくは、それだけで十分目的が果たせている、と言う可能性もあるけどね」



「?どういう…」



「いや、最後のは根拠のない僕の空想だからね、気にしなくていいよ」



「はぁ、そうですか」



「うん。………………もし、僕の空想、むしろ妄想の通りだとしたらふざけた話ではあるけどね」



「ぇ?今何か…」



「いや、何でもないよ。それでマイハニー、僕らはここから脱出しなくちゃいけない。例の“仕掛け”も何もしないわけにはいけないからね」



「でも、私はあなたとは…」



「それは僕も同じだよ。非常に悔しい事だけどね、君の元御主人様から“因果の意図”に巻き込まれた場合の対処法は聞いてるんだ。それにね、殺し合う――この事と考え合わせていると成程、確かに裏ワザっぽいけど有効そうな方法ではあるんだよね、これ」



「それはいったいどんな…」



「――一つになろう、マイハニー?」



「は?え??えぇ???」



「『愛ってのは世界を救うらしいぞ』って言うのが彼の助言でね?言われた時は正直真生のバカだね、こいつ、くらいにしか思ってなかったけど」



「へ?あ、でも…?え?えええ???」



「ふふっ、彼がどんな意味を込めてこの言葉を言ったのかは知らないけどね、僕らにとっちゃ意味も方法も一つしかないよね、これって?」



「え、あ、でも、時と場合が…ええぇ??」



「大丈夫。と、言うよりもこういうのも意外と燃えるよね?」



「ふぇ!?は?いや、でも??ふぇぇぇ!?!?」



「ふふっ、慌てる姿も魅力的だよ」



「でも、でもでもでも…」



「大丈夫。僕に任せて?」



「えぇと、その………――はい、すべて、あなたにお任せします」



「うん♪」







同時刻。



「…む?」



「どうなされたのですか?」



「今どこかで非常に不快なモノを感じた気がする」



「そうですか」



「ああ、っていうよりリッパー、いい加減に離れないか?」



「嫌ですっ、レム様のお傍を離れるなんて、考えられませんっ」



「あぁ、そう。……はぁぁぁ、何でこんな事になってるんだろうなぁ?」



「♪」



どこかで溜息をつく男と、満面の笑みで彼に抱きついているお姫様がどこかにいたとかいないとか。





何故にこっちも平和(むしラブラブ?)な雰囲気なのでしょうか?

いや、熱々夫婦ですのでこれいくらいは…時と場合を考えて下さい。

そしてレム君、ただいま拘束中。


ちなみに、基本的にリッパー様はストーカーですが、レム君を捕まえてどうこうしようと言う気は全くありません。と、言うよりも彼女はレム君に抱きついていればそれだけで満足という性分の持ち主です。



メイドさん、観戦中。


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