ACT XX. スィーカット-7
一方その頃…。(結構なネタばれあり?)
スィーカット・・・小瓶の悪魔。今作では珍しい、男性。
ミミルッポ・・・スィーのご主人さま、でもレム君の奴隷の女の子
ライカーレ・・・ミミルッポの世話役…みたいなもの?
「…はぅ〜」
「――」
「ほぇ〜」
「――何、コレ?」
ミミルッポの気の抜けた声が隣から聞こえるが、今は気にもならない。恐らく更に隣にいるライカーレも似たようなものだろう。もっとも二人にこの光景の全てが見えているとは思わないが。
しかし、これは、…ほぅ。
我であっても感嘆を上げずにはいられない。
対峙しているのは二人の女性。
「相も変わらず生きしぶといですね」
「それは私の科白だ。いい加減くたばれ」
「口が悪いのも相変わらず。どれだけ生きても何も学んでいない証拠です」
「はっ、それはあんたにも言えてる事でしょ。その似非丁寧語、相変わらず聞いてるだけ苛ついてくるわ」
「なら聞かなければいいだけの事です。いっその事その両耳を削ぎ落したら如何です?」
「あんたの口を縫い合わせる方が千倍もマシよ。と、言うわけで今からその薄汚い口を閉めてやるから感謝しな」
「出来ない事を口にするものじゃないですよ、姉様?品位の底が知れて見えます」
「あんたこそ、口を開く度に程度の驚くほどの浅さが判るってものよ、この愚妹」
「…あの人の事は、後は全部私に任せてくれていいんですよ?」
「馬鹿じゃない?いい加減、自分がうっとおしがられてるって気づいたらどう?」
「それは姉様にも同じ事が言えると思いますが?」
「…どこぞの愚妹と同列に扱われると、不愉快だ」
「ええ、全く、私もです」
「……」
「……」
「「――相変わらずムカつく」」
「……」
「……」
「いい機会です。いい加減死んでください、姉様」
「そっくりそのまま返すぞ。充分生きたな、くたばれ、愚妹」
会話を繰り広げている間も二人の交戦は凄まじい。
こういうのをどう現すのだったか。確か……怪獣大決戦、だったか?
少なくとも常人が間に入ったとしても瞬殺されるのが関の山だろう。
何故このような事になっているのかと言うと…我にも判らぬ。
急に世界一面が赤に染まり――ここまで来ると我にも想定が出来る。恐らくは三柱が一柱であった女神に列なるモノの揮う力だろう――気がつくとどことも判らぬ場所に転移させられていた。
幸いなのはすぐ傍にミミルッポと、…ついでにライカーレも居た事だろう。転移がどのようなものかは知れぬが、散り散りにならなかった事が一番の幸いと言えよう。
そうして現状、どう打破すべきかライカーレと相談していたところ――ミミルッポは昼寝の最中だったため、無理に起こす必要もないと判断して放置した――突然、誰かが転移してきた。
他でもない、いま目の前で桁外れの力を揮って殺し合いをしている…おそらく姉妹の事だ。
今のところこちらに害がないので静観しているが、正直あの二人が我らに牙を剥いた時、ミミルッポとライカーレの二人を守り切る自信は我にはない。どころか勝てるかどうかも怪しい、と言ったところか。
…まぁ、あの二人の実力はほぼ互角。当分決着がつく事もないだろうし、問題はないだろう。
後しばし、この恐ろしくも美しい殺し合いを観させて貰うとしよう。
そう言えば。
今となっては随分と昔の事だが、懐かしい言葉を思い出した。
――“白”と“黒”、そのどちらもがいつか主たちを滅ぼすぞ?……それが姉妹であったなら、さぞ愉快だろうな、くふふっ
そう言って、奴は神たちの怒りに触れたのだったか。
“白”に“黒”――『創生の白龍』と『滅亡の黒龍』、聞いた時は面白い事を言うと思ったものだが、いま目の前に広がっている光景の何とした事か。
――片や見事な“銀髪”の、間違いなく奴直系の子孫である白龍
――片や美しい“漆黒”の、間違いなく真の【厄災】…黒龍
「ああもうっ、うっとおしいですよ“姉様”!!」
「いい加減観念しろっ“愚妹”!!」
繰り広げられる殺陣の舞の何と美しい事か。
…………双方の口の汚さは聞こえないとして、な。まあ、それが奴に似ていると言えば確かに懐かしいのだが。
どのような戦いが繰り広げられているのかはご想像にお任せを。態と書いていないわけではないので、あった方がいいのなら付け足しましょう。
察しの良い方は気づいたかもしれませんが、程よくほんのりとネタばれっぽいものが含まれておりますお話です。
…何に対するネタなのかは若干不明ですが。
スィリィ嬢の時とは違ってこちらは…と言うよりも他の人たちは割合のほほんとしております。
ちなみに一番縁のある相手ですが、
ライカーレ → スィーカット → ミミルッポ → ライカ…(最初に戻る)
になっております。…何気に縁のある三人だ。
白黒の姉妹は他のところで喚ばれて、空間破って侵入してきてます。
『ど-X. ある姉妹/ ある少女』の姉妹と同一人物ですので、悪しからず。