ACT XX. スィリィ-13
短いです?
スィリィ・・・実は結構なお嬢様、な女の子
ファイ・・・奴隷で使用人な、天災料理人の女の子
エレム・・・レム君に助けられた?時期族長候補なエルフの少女
“跳んだ”先では女の子が頭を下げていた。
「ご免なさい悪気があったわけじゃなくってほんのちょっとだけ外の様子を見てみたかっただけなの本当にそれだけなの、だから許し……って、誰?」
貴女こそ誰よ――って言いたかったけど私より先にファイの方が反応した。
「エレム様!? こんなところでどうなさったんですか!?」
「あ、ファイ……だよね? レムくんのところで働いてる……」
レム“くん”?
「はい、そうです。レム様の所のファイです、エレム様」
レム“様”!?
……何かごく最近、『レム』って名前のヒトに会った事がある気がするけど、たぶん別人よね?
あ、でもあの“レム・スタンピート”先生はどことなくヘタレでお坊ちゃまっぽくて、ファイは奴隷――体の良い使用人――で。もしかしてもだけど、絶対にあり得ない話じゃないなんて可能性がある気もするし。
このエレムって子もどことなく気品と言うか高貴さみたいな空気が漂ってる気もするし、どこかのお嬢様?って言われたら納得しそうな感じではある。
でもスタンピート先生が貴族で偉くて、“ご主人さま”?
あの“なんちゃって学者”の格好をしたスタンピート先生が偉ぶってファイや他の使用人に命令を出しているところを想像……て、駄目だわ限界。無理あるでしょ、やっぱり。
偉ぶってるスタンピート先生なんて不思議と道化にしか見えてこない。これもある意味才能っぽくはあるけど……そんな才能は断じていらないと思う。
たぶん別人……そう言う事にしておこう。世の中狭いって言うけど、きっと私の知らないところで広がってたりもすると思うし。
なんて、実は私自身も実家に戻れば十分お嬢様って事を忘却の彼方に置いてありもしない妄想をしている中、既知だったらしい二人の会話も続いてはいたわけで、
「しかしこんなところでどうされたんですか? エレム様が突然いなくなられて皆さん、大騒ぎしていたんですよ」
「それは……そのぉ……ちょっとだけ冒険がしてみたくなってね? ほんとにちょっとだけだよ、ちょっとだけのつもりだったんだよ? けどね、何か道に迷っちゃって、道を教えてくれるって言う親切なオジサンについていったらその人は実は悪いヒトで…」
「よく分かりませんけど、エレム様が何か気苦労をされた事は何となく伝わりました。とにかく無事で良かったです、エレム様」
「あ、うん。……えへへっ」
「それでエレム様、先ほど酷く慌てていらしたようですけど、どうかしたんですか?」
「そうだった!! ……実はね、その悪いオジサンにイケナイ事をされそうになったの」
「い、イケナイ事ですか」
「うん。すっごくイケナイ事」
「ど、どのくらいイケナイ事なのでしょうか?」
「お嫁さんに行けなくなるくらいかな?」
「そっ、それは大変ではないですかっ!? ……え、エレム様はご無事だったのですか?」
「あ、うん。あともうちょっと、ってところでね、そのオジサン、いきなり『光だ、光が見えるよ父さん……!』って叫んで奇声を上げながらどこかに行っちゃったから何とか助かったんだ。あれってもしかしてキミたち小人族にとっての、しなきゃいけない儀式か何かなの?」
「いえ、多分違うと思いますけど……でも、それなら本当に良かったです」
「うん。それでね、そのままオジサンが帰ってこないから今の内に逃げちゃえ、と思ったところでファイたちがいきなり現れたんだもの。凄く驚いたわよぉ」
「そ、それは済みませんでした」
「ううん、結果としてはオジサンじゃなかったし、ファイに会う事も出来たから万々歳だよ」
「そうですか」
「うん。……あ、それとね、ひとつ聞きたい事があったんだけどいいかな?」
「はい。私に分かる事かどうか分かりませんけど、良いですよ」
「あのね、この赤い糸ってなんなのかな? オジサン、この赤い糸に触れた瞬間に変な事言い出したし。でも私には何の影響もないんだよね。魔法で編み込まれたモノみたいなんだけど、なんなんだろ、これ?」
「……あ」
「ファイ? この糸の事、何か知ってるの?」
「……あの、スィリィ様」
「?」
ファイの呼ぶ声に、ようやく私は意味のない妄想を止めて、ファイが呆然と見ていた方を見て、同じように動きを止められた。
「……“因果の意図”」
視線の先、エレムが不思議そうに指で弄っていたのは間違いなく、やっと逃げれたと思っていた赤い糸“因果の意図”に違いなかった。
……それに何か不気味に蠢いてるしっ!?
きっとだれも覚えていないエレムさんのご登場です。
たった一度出てきたっきりで出番がないという事なので、ご登場願いました…て言うより気づいたらいました。
ららら