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harem!〜カオス煮、いっちょ上がり!〜  作者: nyao
【スィリィ・エレファン編】
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ACT XX. スィリィ-10


スィリィ嬢、暴走中。



「この雰囲気は、灼眼の仕業ですか。本当に女神の使徒は何を考えているのか。……まあ良しとしましょう、こうして私も顕現した事です。これで、遂に願いを果たせる」



私じゃない“私”が口を開く。その口から漏れるのはどんな氷よりも冷たい、憎しみの言葉。



――私これを知っている。


――私はこの憎悪を覚えている。



それを感じたのは、知ったのはいつの事だったか。何もかもを忘れたい、消し去りたい衝動の中で不思議な懐かしさがこみ上げる。



「おおぉぉぉ」



「?」



陶酔しきった声に、“私”が気づく。


もしこの近くにヒトがいたら……それに、ミリアレム先生はどうなったの?


見渡す限りの青い世界に人影はない。全てが凍りつき、停止している。今、青い世界の中で動いているのは私じゃない“私”と、歓喜の表情を浮かべている彼だけ。


ぞっとしない現実に、でも私は何もできなくて、事はただ進んでいく。



「お、おぉ、我が聖上、この日を幾度夢見た事か」



「……龍種?」



“私”の口から出た言葉はどこまでも冷たかった。それこそ道端の石ころを、無価値なものを見ているように感じる。


けど陶酔したような彼には通じていなかったらしい。



「はい、聖上。私は――」



「聞いてない」



「……は?」



「【厄災】に語る言葉はない。失せろ」



全くヒトの温かさを感じさせない口調で、跪く彼に“私”は存在の否定を云い渡す。


同時に。



ずぶり



「な、ぁ……?」



――ぇ?



生理的嫌悪を感じる感触が手に伝わった。


目の前に跪いていた彼の胸元に向けて振り下ろされていた私の手。


ひゅっ、と手の隙間から漏れ出す血の滴さえも次々と凍りついていく。たった今、彼を体の中から凍てつかせて、熱を奪っているのが知りたくもないのに感覚で分かってしまう。





全部は私の意志とは何一つ関係なしに、“私”は動く。


何が、起きてるの? それに今私を動かしている“私”は何? それにこのままじゃハインケル先生が……!


応えはない。彼女に私の問いに答える気はない。





“私”は僅かに痙攣する身体を放り出しす。


腕に付着した血痕を汚らわしいとばかりの腕の一振りで払い、血は氷結した後瞬く間に塵になって空中に消えた。



「あの大罪者を産み出した小人と同等に【厄災】は在ってはならぬ存在。よく私の前に姿を現せたものです」



「ぐっ、ごほっ……わ、私が……私があの神を殺したあの愚かな大罪人と同じだと、よりにもよって【厄災】などと、そうおっしゃられるのですか、聖上っ!?」



「……何を喚くかと思えば、当然。その黒く染まりかけた髪と瞳が何よりの証拠。【厄災】は世界の敵。死んで購うべし」



「そ、そんな……」



彼の顔が真っ白に染まる。それは血の気が引けて……本当に体の中の血が足りなくて顔を蒼白にさせているようでもあり、絶望に朽ちているようでもあった。


そんな彼に“私”はそれが慈悲とばかりにもう一度、今度こそとどめを刺すために手を振り上げる。



「わ、我が聖上」



「汚らわしい。その口で私を呼ぶな、その目で私を見るな、【厄災】」



――もう止めて……っ!



手を、振り下ろす――






「はひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ」






間際、“私”は振り返ると同時に手を頭上にかざした。たちまち形成される氷の楯。


外見上はアイスシールド――初級魔法と同じだったが、違う。実際それを作り出している私には果たしてコレが、一番の破壊力を持つ火の最上級魔法でも破壊できるかどうか分からないほどの硬度と精度を持っていた。




次いで、炎の雨が降り注いだ。


私の青い世界――周りの氷が次々と解かされていく中でも、私には怪我の一つもない。それどころか熱気すらも感じられはしない。



一体、何が――






「おーたーすーけぇぇぇぇええええ」






……なに、あれ?


“私”と同じ動作で空を見上げた私は一瞬で状況も恐怖心も、さっきまでの絶望も、全部を忘れていた。だって、そうでしょ? ヒトが、足から火を吹いて飛んでくるなんてそんな光景、本気であり得ると思う?




無慈悲にも助けを求める? 『彼女』を“私”はひょいと避ける。



直後。


どぉぉぉぉん、と耳を裂く轟音を響かせて空から飛んできた『彼女』は、果たして地面の熱烈な抱擁を受けた。……ぶっちゃけ、衝突した。


死んだわね、あれは。……と、こういう時に限り冷静などこかで思っていたのだけど、立ち上る煙の中から声が届く。






「ふぇ……痛い」






いえ、痛いじゃ済まないでしょ、絶対。




煙が晴れた時、かなり大きなクレーターの中央には全くの無傷の女の子が両手で頭を抱えて座り込んでいた。


本当に痛い、程度で済んでいるような……て、あれ? どこかで見覚えが……あるもないも、あの子ってたしか……?





隷属科の生徒の、ファイの姿がそこにはあった。



シリアスな空気はどこまでも続かない。それがレム君クオリティ。彼の奴隷にもその属性は受け継がれています。

多分もうそろそろスィリィ嬢も我を取り戻す?んじゃないのですかなぁ?そうだといいなぁ


お空から降ってきたファイさん。彼女の暴走はある意味でスィリィ嬢よりも酷いです。


スィリィ嬢、暴走中。

ファイさん、暴走?中。

ミミルッポ&ライカーレ、説教中。

スィーカット君、折檻中。

ラライさん、暴走中。

メイドさん、傍観中。

実はレム君、少しだけ暗躍中。



こうしてみるとやっぱり暴走中の人が多いなぁ。


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