ACT X. ??? -それは気泡が如く-
スィリィ嬢は、あと少しお休み。
――ねえ、貴女は何がしたい?
私の役目は私の使命。それ以外何がある?
――あのねぇ、そう言う事じゃなくて…
違う?ならどういう事なんだ?
――ん〜、そうね、私の真似でもしてみれば、貴女ならきっと判るわ
それは市井に出て、ヒトとして暮らしてみれば、と言う事か?
――そう言うわけじゃ、ないんだけど
お前の言い方はよく分からない。もっとはっきりと言ってくれ
――……まあ、恋する乙女みたいな?
恋などと、市井で生活するうちにヒトに毒されたか?
――毒す、だなんてひどい事言うわね
言い方が悪かったか?私たちの中では珍しく、お前は人を気に入っているからな。気分を害したなら謝る
――いえ、そんな謝ってもらうほどの事でもないけど。
しかし、どうして今になって急にそんな事を言い出す?
――それは…あの方が、最近とても楽しそうだから、かな?
なるほど。それでお前も、と言うわけか
――いや、そう言われると、やはー、何か申し訳ないんだけど
いや、問題はない。……私のしたい事、か
――まあ、そんなに焦らなくてもいいけどね。私たちには時間だけはいっぱいあるんだから
そうだな、なら、ゆっくり考えてみることにするさ
――うんうん、それがいいって
そう言うお前自身は何がしたいんだ?
――え゛、私?
そうだ。わざわざ聞いてくるくらいだからお前にはしたい事があるのだろう、それは何だ?
――あー、ナンデショウね?
一体どれだけの付き合いだと思っている。私が誤魔化されるとは思うなよ
――あ、うぅ……
まさか、ない、とは言わないな?
――…言わない、けど。だって今更こんな事、恥ずかしいじゃない
…やはり、良くも悪くもヒトに毒されているな、お前は
――別にいいじゃない。そうだとしてもそれは私が望んだ事よ
いや、それもそうだ。で、お前の望みとは一体何だ?
――……私の願いはね、いつだって同じ事なんだよ。あの方の望む事、笑っていられる事、幸せでいられる事、その為にできる事、したい事が私のするべき事で、したい事
なんだ。それでは元々の存在意義と変わらないではないか
――違うよ、違うんだよ。自分から望むのと、与えられるのとじゃ全然違う。貴女も、望む事が見つかればきっと判るよ
そんな事…
言われるまでもない。きっと私の願いと望みはずっと前から決まっている。
あの方がいて、お前が楽しそうに笑っている。それだけで十分で、それ以上は望むべくもない事なんだ。願わくば、この刻が永遠に続いてくれる事を――
――お?その顔は何かしたい事があるんだね、うん、よかったよかった
いや、そう言うわけではなく、だな
――照れなくってもいいって。大丈夫、貴女がしたいと思う事ならそれはとても素敵な事で、私も微力ながら手伝うし、ね?
私たちの中でも最強のお前に微力、などと言われては私たちは形無しじゃないか
――そんな事ないって。とにかくよかったよ、貴女に、私たちの女神様の加護がありますように…
お前と言うやつは…
――大丈夫だよ、何も心配いらないよ
「…ダメ、待って、止めて」
胸の内側からあふれてくるものを止められない。こんな事、誰も望んじゃいないのに。
それは、あの時はそう思っていたのかもしれない。でも今は違うでしょう?
力が欲しい、もっと自分に力があれば、なんて。今の貴女には分かっているはずだよ?
私がいる、他にも未熟な、でも力を持った子達がいっぱいいる。『冰頂』を持った子にも少し前に会ってしまった。
ここで貴女が望む事をしてしまったら、取り返しのつかない事になる。あの時と同じ、きっと悔やんでも悔やみきれない。
「お願い、だから…っ」
――因果の意図、展開
「ああああああああああああああああああああああああああ」
ぷつん、と頭の中で何かが切れた気がした。
「さあ、皆が笑って過ごせる世界を――『燎原』、貴女が笑っていられる世界を作りに行こう?」
――貴女の望む事なら、それはきっと意味のある事。ね――『灼眼』
済みません!
この一回だけまたスィリィ嬢お休みです。でも次回からはちゃんと?スィリィ嬢主役??のお話になる予定ですので、お付き合いしていただければ幸いです。
…そんな、付き合うだなんて(べたですね、はいすみません)
まあ、???にしてはありますが誰かは言うまでもありませんね。
レム君、ただいま軟禁中。
…あ、もちろんリッパー様じゃないですよ?
『ど-46,7』『ACT XX. いん、スフィア』あたりのアルゼルイの学長にとっ捕まってる最中です。