11. どれいと兵隊さん
レアリア・・・奴隷になった哀れな子。ツンデレのツン100%
アル・・・口のきけない奴隷の女の子
ミリアレム・・・スフィア王国、アルゼルイ教育機関の講師でそこの長の奥さん
「…で、どうしてこうなってるのか――街で優雅に遊んでたはずの貴方達が街外れの森の中で賊達にぐるぐる巻きに縛られて捕まってる理由を説明してもらいましょうか?」
「うむ、話せば長くなるのだが…」
「……(ふるふる)」
「一言で言え」
「んな無茶な。…まあ、アルについて行ったらこのお方たちと鉢合わせして、今に至る」
「………頭痛いわ」
「……(こくん)」
「大丈夫か?」
「貴方が心配するなっ!!」
「そりゃ悪かった」
「……(こくん)」
「…で、漫才染みた挨拶はそろそろいいか?」
「漫才じゃないわよ!」
「ああ、そっちの叫んでるのは放っておくとして、もういいぞ。と、言うよりも態々待ってくれるなんてお前いい奴だなぁ」
「四十対三の人数差だしな。今生の別れをさせるくらいの器量はあるつもりだ」
「そりゃまた、大層な事で」
「そうでもない」
「ま、そりゃそうか。大層な奴だったらこんな事はしないからな。賊かぶれか、傭兵か、どっちにしろこんな事、幾らで頼まれた?」
「――貴様、何者だ?」
「何者も何も、俺は極真っ当なただの一般人だよ。本当にそれ以上でも以下でもないぜ?ただちょっと、親切なおねーさんが俺に耳打ちしてくれただけだ」
「……」
「レム、どういう事?」
「まあ端的に説明するとこいつらは先遣隊ってところか。どっちの方かと思ったが、やっぱりカトゥメの方か。アルカッタだったら多分馬鹿正直に正面突破してきてるだろうしな」
「カトゥメ聖国!?ど、どういう事よレム!?」
「祖国の事だからってそう目の色変えるな、レアリア」
「な、何の事よ…?」
「白々しいぞー?…まあ、それは今はいいとして、だ。この街はカトゥメとアルカッタの間にある街だからな。もうじき戦争が始まる今となっちゃ進軍上制圧しておくに越した事はない場所なんだよ。だからこいつらみたいな一部が先遣隊として派遣されて、街を制圧しておく、とそう言うわけだ。判ったか、レアリア?」
「で、でもこいつらはただの賊じゃないの?ギルドの方で数十人単位の賊がいるって言われて、だから私が討伐に来たのよ?」
「へぇ、ギルドの方でもこいつらの所在を見つけてたってのは驚きだけど、向こうの方が一枚上手だったみたいだな。発見されたから『どこにでもいるただの賊』に見せかけたってわけだ。お前、結構優秀だなぁ?」
「で、でも…っ」
「――貴様、本当に何者だ?」
「だから、俺はただの一般人だって言っただろ?ただマデューカスって名前の親切なおねーさんに諸事情を教えてもらっただけだよ」
「マデューカス?……まさか、あの『情報屋』マデューカスの事かっ!?」
「多分それじゃない?俺の知ってるおねーさんがどれほど有名かは知らないけどな」
「…成程、それなら俺達の事を必要以上に知っている事にも納得はいく」
「……で、納得したならどうしていきなり剣を抜いていらっしゃるのでしょうか?」
「知られた、知っている以上は生かしておくメリットはない」
「きゃーお助け―」
「うっさいあんたが騒ぐなっ!」
「ちょっとボケただけじゃないか。そう褒めるなよ、レアリア。照れるじゃないか」
「照れるな褒めてない!そもそもこんな所でボケるじゃないわよっ!!」
「漫才をしたまま逝け――!」
「うおっ!?って、俺の命ピンチで紙一重!!レアリア、助けろぉ〜」
「ちっ、気の抜けた声で呼ぶんじゃないわよっ。ちょっと堪えてなさい、今すぐ助けに…」
『……』
「くっ、うざったいわねっ。――レム!アルに傷一つでも付けたら許さないわよ!!」
「それは、よっ、俺じゃなく、とっ、このお方に、とわっ!?言ってくれぇ〜」
「ちょこまかちょこまかとしぶといっ!」
「逃げるの、はっ、得意、よっと、だからなっ!!」
「…あまり威張って言える事じゃないと思うわよ、それ。っと」
「……(こくん)」
ガキンッ
「ああもう邪魔っ!!――平伏せ縛炎、フィリム・ブレイア!!」
『ぐああああああああ』
「女、魔法使いか!?」
「違うわよ。私は魔法使いじゃないわ。呼ぶなら魔法剣士、よ!――射て貫け数多の閃光、ファイア・アロー」
『っ!っ!!っ!!!』
「ふんっ、油断してなきゃざっとこんなものよ」
「うわっ、えげつね。つかそれ既にファイアアローじゃないだろ。まるっきり光線じゃね?魔力バカ高いなぁ」
「外野は黙ってて!」
「外野って、俺今も必死に逃げて……てか、全身縛られかつアルを足で挟んでなおこの華麗な体捌きを少しは褒めてくれてもよろしいのではー!?!?」
「ちっ、確かに逃げるのは上手いが、その状態でどこまで――」
「って、いきなり行き止まりですか。後ろは木、横と前には兵隊さん。俺ってばピンチ?」
「ふっ、ようやくか。しかし自分の置かれている状況の割には余裕があるみたいだな?」
「そ、そんなことありませんよー?」
「レム!あんたは死んでもいいから絶対アルを護りなさい!」
「…ご主人さまに対して酷い言い分だ。て言うよりもこの世の奴隷ってもしかして主人に対して反抗的なのがデフォなのか?…断固として是正を求める!!」
「貴様も苦労しているようだな」
「いや、そんな事はあるが。貴様“も”って事はお前もか?」
「それなりに、な。だが、だからと言って情けをかける気はない。今度こそ大人しく死ね!!」
「誰がっ。うぉ、って今度こそ逃げ場ねぇぇぇ!?!?!」
「レム!!くっ、こいつらいい加減に、し――」
「奏でなさい灼熱の暴風、ストーム・ブリッツ」
『!!!!』
「おう?」
「な、何が…?」
「――助力は必要ですか?」
「いや、助かった。しかしたった一発で見事に一掃するとは、しかも打ち洩らしも無し、流石だな。また腕が上がったか?」
「ありがとうございます」
「ま、でも随分とタイミングよく表れたよな、つかどうしてこんなところにいるんだ、お前?」
「少しばかり知人に会いに来ただけですけど、私もまさか貴方がいるとは思ってもみませんでしたよ」
「知人、知人……そう言えばお前とサーシャって知り合いだったっけ」
「はい、そうですよ?」
「なるほど。で、とするとギルド経由の助っ人ってところで正解か?」
「はい、そうです。先行していたレアリア・ルーフェンス単身での数十人相手は辛いだろうという事で偶々街にいた私にお鉢が回ってきたみたいですね」
「で、今に至ると」
「そういう事になります。あと、タイミングが良かったのは偶々ですよ?」
「まあお前はあいつみたいに態とタイミング図ったりはしないだろうから、その点は信用してるけどな」
「そう言えば『お姉様』はお元気ですか?」
「あいつが元気じゃないと思うか?」
「…いえ」
「って、ちょとレム!一体どういう事よどうなってるのよ!?」
「……(こくこく)」
「ん、ああ。こいつ、レアリア。んで今は俺の愛の奴隷ね」
「まぁ」
「愛の、じゃないわよ!!唯の、よ。あくまで唯の奴隷よ!!!」
「で、こっちはアル。以下同文な」
「……(ふるふる)」
「否定されていますよ?」
「照れてるだけだ………そう思わせておいてくれ」
「はい、分かりました」
「それで…」
「ちょっと、レム!それよりもこの人は…」
「ああ、結構有名らしいからな。ギルドランクBのお前なら知ってるだろ?」
「知ってるも何も、そのアルゼルイの校章に深蒼の瞳、それにさっきの魔法の威力って言ったら一人しかいないじゃない!」
「よかったな、人気者だぞ?」
「まぁまぁ、照れますね」
「と、言うわけで知ってるみたいだが改めて紹介だ。こちら、アルゼルイ教育機関でも鞭を揮ってらっしゃる俺の知人のミリアレムね」
「ミリアレムと言います。よろしくお願いしますね、レアリアさん、アル…ちゃん?」
そして日々は移ってく。
ちなみに読みにくかったりしたら物申して下さい。
今回のお話はさすがに会話文だけじゃ無理がある気がするので・・・。