ど-81. 真っ暗闇の中で
視界も何もない世界。
そこにはニ何かが潜んでいる。
「おーい、誰かいないのか?」
「……」
「真っ暗で全く何も見えないのだが…誰かいる、よな?」
「……」
「おい、どうせお前のいらずらか何かだろ?何とか言ったらどうなんだ?」
「……」
「お、おいっ。いるのは解ってるんだから、いい加減何か言えよ?俺を驚かそうったってそうはいかないんだからな」
「……」
「いや、黙ってても気配でいる事くらいは分かるから。あといるなら居るで息を殺して…け、気配まで消すのは止めてほしいのだが」
「……」
「な、何か自信がなくなってきたな。ほ、本当にいるんだよな?な??」
「……」
「まさか実は誰もいませんでした、これは俺の独り言でした、なんてオチだったりしたら恥ずかしすぎるぞ」
「……」
「いい加減、頼むから何か言ってくれっ!!」
「……」
「ほ、本当に誰もいない?………、うわっ、俺ってばそうすると無茶苦茶恥ずかしい奴じゃないか。誰もいないのに独り言喋って寂しさを紛らわせてる虚しい奴みたいじゃないか」
「……」
「…おかしいな?あいつならここで絶対に何か突っ込んでくると踏んでたんだけど。まさか――本当に?」
「……」
「いや待てよ。よく考えろ俺。これはつまり、ほら、あいつの手のうちって事だ。決して俺が真っ暗で怖いとか、不安とかそう言うのじゃないからな?なっ!!」
「……」
「えー、ではここで一つ秘密を暴露してみるとするか。実はあいつの胸元、ギリギリの際どい辺りに――」
「……」
「――て、まぶし。…お、やっと電気がついたか」
「……」
「…で、だ。何か用ですか?」
「…御機嫌はいかがでしょうか、旦那様?」
「つか、やっぱりいやがったな。いるなら居るでちゃんと返事をしろよな」
「いえ、旦那様の慌てよう、大変愉快で御座いました。…ございましたよ?」
「最後に何故疑問形?いやそれはいいとして、だ。光も都合いいタイミングでついたし、お前図ってやがったな?」
「何の事でしょう?と恍けておきましょう」
「とぼけておく、と言っている時点でお前の思惑は割れてるからな」
「いえ、此度の件は事実として全くの偶然なのですが、まあ良いでしょう。細事で御座いますれば。それで旦那様、ご機嫌はいかがでしょうか?」
「うん、いや、まぁ……明るいっていいな」
「はい、そうでございますね」
本日の一口メモ〜
メイドさんが潜んでおりました。タイミングの良しあしに他意は御座いません。
本当に、偶然ですよ?
旦那様の今日の格言
「女の胸にはロマンがいっぱい詰まっている」
メイドさんの今日の戯言
「月のない夜にお気を付け下さい」