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 REVERSAL-10.5

そして姉妹の間にあったこと

『これはこれは……愉快な格好だねぇ、お二人さん?』


「「……」」




半透明のナニか――残念思念体ルーロンが見下ろす先、ぴくぴくと四肢を痙攣させながら地面に突っ伏す女性の姿が二人。


どちらも無表情のまま、同時に地面に拳を叩きつけた。




ドゴッ――




轟音と共に僅かに地面が揺れて、けれど“たったそれだけ”しか起きなかった。




『ふぅん、一応それなりに鍛えてはいるようだねぇ。力のほうを完全に封じられてそれだけ出来れば大したものだ』


「「あ……の、ばかぁぁぁぁ、ひゅんっ!?」」


『ところでさっきから二人とも、何をそんなに発情してるのかな?』


「「誰が発情――っっ!!」」


『やれやれ、目に毒な格好だねぇ……いや、それとも目に福な格好、なのかな?』


「「……」」


『うーん? 今すぐ誰かを引き連れてきて金を取るべきか、食べ物を強請るべきか、……悩みどころね!』


「「悩むな!! ――ゃぁ!?」」


『よぉしっ! 今すぐカモ連れて来るからしっかり発情して待ってなさい、二人とも!!』


「「――コロす、このクソババア」」


『くふふふふっ、心地よい負け惜しみよな! ――あとババア言うな、このクソガキども』


「「……ばばあ」」


『じゃあ待っておれ、金蔓かねづるども、ふはははははっ!!』




高笑いを残してルーロンが光の速度で飛んで消えていく。


憎々しげにその残像を見送る二人は、小鹿のように膝を震わせながらも漸く立ち上がり――かけてはやはり同時に膝を崩してて無様に倒れこんだ。




「……姉様」


「……なんだ、愚妹」


「私、絶対にアレを消滅します」


「奇遇だなぁ、愚妹。だがアレは私が滅する、私の獲物だ」


「つまりは早い者勝ちということですね、姉様」


「そうなるな」


「ふふふふふ――ふきゅ!?」


「く、くくくっ――くふっ!?」


「「……」」


「……まずはコレを何とかするのが先ですね、姉様」


「そのようだな、愚妹」


「ホント……あのヒトのイタズラ心にも困ったものです」


「今度会ったら殴り飛ばす」


「程々にお願いしますね、姉様?」


「断る」


「駄目です。ちゃんと私の分も残して置いてください、殴ります」


「……考えておこう」


「はい」


「ただし私の仕置きに耐えられたら、だがな」


「むしろ姉様如きの仕置きに耐えられないヒトとは到底思いませんが?」


「むしろ耐え切ってもらわなくては困るがな。わた、私の婿になる相手だ」


「殺しますよ、姉様?」


「愚妹如きに私が殺せるか?」


「第一姉様はバカですか、ああ、バカでしたね、すみません。あの方は私の旦那様であって姉様のつがいじゃありませんよ?」


「死ぬか、愚妹」


「姉様如きに私は殺せません」


「……」


「……」


「「殺――ひゃふ!?」」


「……」


「……」


「姉様、まずはコレが優先です」


「だな、愚妹」


「「……」」






――“選定”、完了しました。【代理戦争】を提案します。同意しますか? はい






「……姉様、聞こえましたか?」


「……愚妹も聞こえたか?」


「聞こえました。“刻印”のシステム音が【代理戦争】が何とか言ってますね」


「というより同意しますかの後に『はい』の一択しかないぞ。何かのバグか?」


「あのヒトなら素で一択しか用意してない可能性もありますが……」


「むしろそれが正解だな、多分」


「ですね」


「「……、はっ!?」」


「愚妹如きが私の真似をするなっ!」


「姉様如きと一緒とは激しく落ち込みますね、むしろ消えて下さい姉様」


「……駄目だ」


「……駄目ですね」


「何だ、コレは。まるで私と愚妹が実は仲が良いようじゃないか」


「正気の沙汰を疑いますね、姉様。姉様と仲がいい? ――死ねばいいのに」


「……我ながら怖気のする想像だった。確かに愚妹と仲が良いなどと……殺すぞ、愚妹」


「自分から言い出しておいて死にますか? 死ぬんですか、姉様?」


「もういい、いや…考えてみれば力が使えないのはむしろ好都合だ」


「そう言えば……姉様の癖にいいところに気がつきますね」


「まったくだ、これなら愚妹を――」


「これなら姉様を――」






「「殺し切れる」」




言い切ると同時に二人は動く。




立ち上がろうとして、同時にこけた。


地面に頭ぶつけた。


めげずに立ち上がろうとして、やっぱりこけた。




立ち上がることを諦めた二人は這って互いに近づこうとして、それすら叶わず手を滑らせた。


やっぱり地面に頭をぶつけた。


めげずに這おうと腕に力を込めて、やっぱり滑らせて額を地面に強打した。






「「……」」


「愚妹」


「はい、姉様」


「惨めだな」


「姉様こそ」


「「……」」


「くそっ、惨めだ」


「惨めです」


「あのばか、私をこんな目に合わせて、次ぎ会ったら覚えてろ」


「それは私の台詞ですよ、姉様。今回ばかりは……いいえ、今回もあのヒトも少しおふざけが過ぎます。やはりお仕置きが必要ですねぇ」


「あのバカは私の獲物だ、愚妹」


「いいえ、私の獲物です、姉様」


「「……」」






――あー、ちなみにお前ら? “選定”に同意しないとずっとこのままだからな?






どこかから、聞き覚えのある男の音が響き渡る。


その言葉のないように二人はやはり同時に表情を消して、舌打ちした。




「……【代理戦争】、同意します」


「……【代理戦争】、同意しよう」






――【代理戦争】、双方受諾の意思を確認。次シーケンスに移ります。……検索完了、現在抗争中の以下組織より、代行者を決定してください。




――魔王軍?


――勇者軍?


――孤立奮闘 (お勧めしません)


――レムの味方(負け組みです)


――女神の味方(勝ち組です)


――男神の味方 (お勧めしません)


――魔法少女? の味方(中立です、勝ちはしませんが負けもしません)


――反乱軍?(現在構成中、しばらくお待ちください)


――軍勢、白面(休止中)


――軍勢、夜天(休止中)


――レムの愉快な仲間たち(笑)(後ろの味方に気をつけてください、刺されます)










「勇者軍で」


「魔王軍で」






――受諾



黒いヒトが魔王軍(+レム)の元に、白いヒトがユウ(勇者?)の元に向かった経緯のようなもの。



うーむ、気を抜くとつい怠ける癖ができてしまっているなぁ。



反省。

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