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 REVERSAL-07

・・・思えばずいぶんと間が空いてしまった。

ので一番大事なことを再確認。


これ鉄則

レム君は活躍しない←これ鉄則

これ鉄則


視界を埋め尽くさんばかりの黒い獣たち――そして『視界を埋め尽くした漆黒の影さえも覆い尽くした紅蓮のカーテン』を背にしてその男は悠然と両腕を広げて、




「――さあ、存分に語り合おう!」


べきっ


「ッ、……ふっ、お前、中々にたいコブシを持ってりゅぶ!?」


べこ、どごっ


「ぐっ、う……おいおい、どこのシャイボーイだよ、お前。もっと落ち着こヴ!」


ガッッ、べしっ、げきっ、ずがっ、ドゥッ!!


「ッ、ッッ、……お、おいおいお前ら。ヒトの言葉を邪魔しちゃいけませんって母ちゃんにおぞわっっ!!」


どか、べき、ずご、べし……


「よぅし、わかった。お前たちの言いたいことは十分に俺に伝わった。だから次はお゛で!!!」


ぼこぼこぼこぼこぼこぼこぼこぼこぼこ






――フルボッコに遭っていた。






がっ、がっ、がっ、がっ、がっ、がっ、がっ


「ゃ、ぃゃ、ちょい待、」


べしべしべしべしべしべしべしべしべしべしべしべし


「――だぁぁぁぁぁぁぁぁ、ヒトの話は最後まで聞けええええええええ!!!!」


……


「よし。……よし。それでいいんだ。はじめからそうしときゃいいんだよ。というか、だ。話し合いってのはだな? 双方のキャッチボールが必要なわけであって、一方的なそ、」


ブンッッ!!!!!


「っと。アブね。いや、刃物は止めようぜ、刃物は。それ、さすがに肉体言語とかの領分越えてるからさ、っと」


シャッッッッッ!!!!!!


「次はナイフもどきかよ。いくら自分の肉体だからって、やっぱり刃物は遠慮したいなー、俺。切れるんだぞ? スパって、切れちゃうんだぞ?」


しゅっ、フィィィンッッ


「よ、っと。……ってかお前らちゃんと俺の話を聞いてる? や、聞いてないのか。ふっ、ここはやはり俺も肉体言語に訴えるべ、っっっっお~~~、」


シュインッッ!!!!!!!


「うん、今のは中々にヤバかった。……当たってればだけどなー。じゃ、なくて。だからまぁ待て。そんなに一方的に話しかけられても俺の方が一杯一杯だ。もうちょっと落ち着いて、腰をすえて話し合おうぜ?」


ピッ……ドッッッッッ!!!!!!!!!


「……えー、今のって、レーザー砲? それ何て生き物? つか流石に光線で焼き払われるとかは嫌だなー」


チッ――……


「――って、呪法!? おいそれは流石に……っっ!!」


――シ……




男が息を呑む。




瞬間。




シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシ――




全ての悪意・悪戯心・殺意・害意・嫉妬・羨望・孤独・絶望・虚無・悲哀・渇望・欲望、その他にもありとあらゆる“モノ”が世界に満ちた。


それは最早意思だけで物理現象を押しつぶすほどに劣悪な、怨嗟の声。


そんなモノはただの男一人だけに向けられるほど優しくはない。相手を選ばず、セカイに満ちた呪念は黒い獣たちさえも無作為に飲み込み、押し潰していく。






だがそれさえも。




≪Silent――黙れ≫




「よし、ストップ。少し待てテメェ等」




男が発しただたの一声、“ソレ”が唯々、圧倒的なだけの理不尽を以ってして更に怨嗟のセカイを押し潰す。


赤い世界が一瞬だけ煌いて、呪いを振り撒いていたセカイは実にあっけなく砕け散った。




◇◇◇




「……広範囲呪法とか何考えてんの、というか仲間巻き込んで殺してまで屠る価値が俺にあるとでも思うのかっ!!」


ぎゃ、ぎゃ、ぎゃ、ぎゃ、ぎゃっ!


「ゃ、そこで皆さん一斉に『言われてみればそうだよな? こんなのにそんな価値ねえか』的な雰囲気かもし出すのやめてくれませんっ!? いや、明らかに被害妄想なのはわかってるけど、ですけどッ!」


……


「いや、だから何でそこでてめぇら一斉に首を横に振る? まるで俺の言葉を理解してるみたいじゃねえか! あ、いや別に説明とか求めてないけどな?」


ちっ


「舌打ち!? 何でお前たちそういうどうでもいいところで無駄に見事な統率取れてんの!? ――いや、待て落ち着け俺。ああ、これは単なる偶然だ、そうだろ? ふんっ、第一獣風情に俺の高尚な存在感と言語が理解できて堪るかっての、そうだそうに決まってる!」


ぎゃはははははは


「何ゆえ笑い声!?」


ぷくくくくっ


「ぃ、異様にむかつくな、おい。笑い声に聞こえるってのは多分、俺の被害妄想的な何かなんだろうけどさ」


ソンナコトナイヨー、ナイヨー


「……ふぅ、俺も疲れてるのかな? 何故か畜生どもの雄叫び声が人語に聞こえだしたぞ」


ばーか、ばーか、ば~~~か


「よしやろう、今やろう、すぐやろう! おい、畜生共ッ、この俺が高尚な肉体言語を持って徹底した教育的調教を施してやるから存分に覚悟しやがれ、今更謝ったってもう遅いからなッ!!!」


GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!


「おっしゃ、テメェラ、……ぁっ、刃物はやめてっ、ちくちく痛いからっ、ビームとかも遠慮、いやだからって爪とか牙とか身体的有利を振りかざして大人気ないとは思わないのか、テメェラ!!!!」


ぎゃうっ!




◇◆◇




「ぜっ、ぜっ、ぜっ、……っは! ――ど、どうだこの畜生共、これに懲りたら、いや懲りたよな、もう懲りてるよな? っつーわけだから勘弁してやる!!」


『いや、ニィちゃん面白いな、ああ、オモシロイ』


「あん?」




振り返った先、そこには獣どもの死屍累々……と、言うことはなく。


絶賛、器用にも全力で後ろ走り中の男が目にしたのは大量の、というほどにもばかばかしい物量の黒い獣たちの群れ――それと“目前に迫った一振りの大鎌”。




「うおぉ!!??」




絶妙のタイミングで振り下ろされた刃を完全に避け切る。お約束とでもいうべき髪の毛数本すらも散らせないその避け様は見事という他……を、通り越してただ不気味なだけだった。


続けざまの神速の振り上げも『関節あるのか、こいつ?』的な別名『奇妙な踊り』で見事に避ける――それも全力で後ろ向き爆走を続けながら、である。




「き~ら~れ~るぅ~!!??」


『……へっ、今のをよけるか、避けるな、避けるんだな、ああ、やっぱりオモシロイぞ、ニィちゃんよぅ』




けたけたけた、と奇妙な金切音が鳴り響く。


聞きようによってはヒトの声にも似たその発信源は目の前……といっていいのかどうか微妙なところではあるのだが、中に浮いたままゆらゆらと左右に揺れていた、一振りの大鎌。


あまりに不自然にその大鎌の周りだけ黒い獣たちがいないため、異様に目立っていた。




「……鎌? 自我の在る――魔剣の類か?」


『へぇ、オレッチの姿を見ても驚かないのか』


「まぁ……似たようなのを何度か見たことあるからな、暴食の杖とか男好きの聖剣とか、脳みそ絶賛腐乱中の生きた死体とか――あ゛? 最後のはちょっと違う、か? まあどうでもいいけど」




世界樹ユグドラシル”とか、“聖剣クロニカ”とか痴女ンビデッド(?)とかのこと――ちなみに最後のは道具とかではなく『最強』の名を関する使徒さんなので仲間外れである。




『ほぅ、オレッチのお仲間ねぇ。そりゃいい、一度会ってみたいもンだねぇ』


「あー、そりゃ無理だわ」


『おう? そりゃどうしてだ? まさかオレッチはニィちゃんがここで今倒すからその先はない、とか格好いいこと言っちゃってくれたりするわけ? はー、引くわー』


「いや、そんな阿呆な台詞誰が好き好んで言うか。つかそんなベタな発想してる時点で俺の方が引くわー、ねえよ、お前。その発想はいくらないでもないよ」


『あ゛?』


「あ゛あ゛?」


『……くくっ、ククククッ、ニィちゃん、やっぱり面白いわ』


「ふっ、この俺に面白い要素など――むしろそれしかないねッ! ……あ、やっぱり今のなしで。自分で言ってて何か悲しくなってきた。俺に面白い要素など一片たりとも無いわ!!」


『おう、面白い面白い。このオレッチらを取り囲んでる実に嫌な感じの炎の壁もそうだけどよ、何が一番面白いってニィちゃん、よくそんな後ろ向きながら延々と走れるな』


「はっ、この程度、目を閉じてても楽勝だってーのっ。人、これを心眼という。肉体の目で見るんじゃない、心の目で見るんだ! そう、木々は俺のお友達! 信じていれば怖くない! と、いう感じだ、どうだ分かったか」


『いや、全く』


「ちっ、これだから頭の固いやつは。つか全身刃物じゃん、テメェ。そりゃ頭も固いわ、AHAHAHAHA-」


『おう、オレッチの頭は固いぞ? むしろ鋭い。何せこの世界に切れないものは無いからな』


「はっ、思い上がりもここまでくるといっそ哀れだな。切れないものは無い? そんな事言って切れないものが本当に無かったやつが今まで一人でも…………………………」


『言うねぇ。何なら証明してやってもいいんだぜぃ?』


「…………そう言えば一人、知り合いにいたなぁ~、本当に『斬れないものは無い』の存在する非常識の塊が――つか、アレは無しだ無し、あんな化け物何匹も居て、ゃあと二人ほどいたけどっ、それ以外で草々居て堪るかってのっ!!」


『何言ってやがるんでい、ニィちゃんよう。オレッチのこと忘れてないかい?』


「いいや? まあ魔剣、魔鎌? 如き、『切れないものは無い』ってのはホラだろうけどな。何なら俺が証明してやってもいいぞ? お前に切れないもの、用意してやろうか?」


『――言うねぇ、ニィちゃん』


「そんな殺気込めた雰囲気出されても。ゃ、事実だし? それに知ってるか、この世界には『切る』だけじゃ無駄な存在がいくつかいるんだぞ? 色んな意味で灰色のメイド、もとい超速再生の持ち主とか」


『……』


「あ、ちなみに俺は切られたらちゃんと痛いし死んじまうから、そこのところ間違えないようにヨロシク!」


『オレッチに切れないものを用意できる、と言ったな、ニィちゃんよぅ?』


「ああ、できるぞ。あ、ちなみに『俺の信念はテメェ如きに切れるもんじゃねえ!!』とかいうイタい台詞のを吐くつもりはないから」


『なら、用意してもらおうか』


「うん?」


『オレッチに“切れないもの”とやら、用意してもらおうじゃないか』


「お、俺の提案、乗るの?」


『本当に用意できるなら、だがな』


「ふっ、俺の提案に乗るってんなら、先ずは俺を追いかけてきてる畜生雑兵共を引いてもらおうか!!」


『――いいだろう。ただしソレが嘘だった場合――』


「よし、嘘ついたら俺のサインをやろう!」


『ニィちゃんの命をもらう』


「いや、俺のサイン……」


『殺す』


「い、いや俺、」


『切り殺す』


「……サイン」


『ニィちゃんの魂の契約書のサインならもらおうかね?』


「拒否します」


『――よし、交渉成立だ』


「ゃ、俺、ちゃんと拒否したよ?」


『それじゃあ、ニィちゃん』


「おうっ、さっさとこいつらどうにかして、」


『精々、生き残ったらさっきの戯言を信じてやるよ。じゃあがんばんな?』


「え、や、ちょ……?」


『――さ、お前ら、存分にこのニィちゃんを食い殺しな』


「……、……、……、――いーやー!!!???」


『くくくっ、さてどこまで耐え切れるのかねぇ、面白いニィちゃんは』



哂う大鎌、迫る黒い獣どもの大波。


男は。


一度だけ、深く息を吐いた。




◇◆◇




「――つか、そろそろこの茶番やめていいっスか?」




◇◆◇




それは軽い、実に軽い口調の一言だった。


ただそれだけで万を越していたはずの黒い獣どもが一匹残らず平伏――否、死すら生ぬるく己の恐怖を知らぬはずの黒い獣たちが恐怖し、膝を折った。


視界を埋め尽くしていたはずの黒い獣ども、その中で自然と頭を垂れなかったのは宙に浮いたままの漆黒の大鎌、それと全長10センチを軽く越す(?)漆黒の毛皮を持った熊――何故か木彫りの魚を大事そうに抱えていたがそれは気にしない方向でいくことにして――、たったそれだけだった。どこかの銀髪メイドにF級と称された固体二匹である。



『……ニィちゃん』


『くるるぅ……?』




恐れおののくような大鎌の思念と、何故か無駄に愛くるしい手乗り熊の鳴き声&つぶらな瞳。




「さ、それじゃ少しだけ真面目な話をしようか、“二代目”『魔王軍』の諸君。これからの世界侵略に関する方針と、諸君ら低脳の畜生どもの身の振り方についてだ。心して聞くよーにっ」




先ほど発したものと同様、実に緊張感のない声だった。だがそれに意を唱えるものは、身動ぎをするモノすらこの場には一匹もいない。




“彼ら”はそれを知っていた。知識としてではなく、生まれ持った本能として理解していた。懐かしさすら感じていた。


似ている、否“似過ぎて”いるのである。他でもない誰であろう、あるとき唐突にその姿と気配を隠されてしまった彼らが王、主、全ての最上たる御氏――『魔王』に。






『ニィちゃん、あんた、本当に何者だよ?』




おそらくはその場の黒い獣たちの総意であろうソレを、大鎌の思念が伝える。


――対して男は、これほどのものかと別の意味で戦慄しかねないほどに似合わないきめポーズをとって――意味不明である、当然黒い獣たちは一匹たりとも男の奇妙な格好の意味を理解していなかった、と言うか理解した方が負け……――堂々と宣言した。






「『大魔王』様だ!」










自称である。


げふっ。

ようやくネットつながったと思ったらリアルでお仕事忙しい。

ま、気楽にがんばりますが。というか自分は追い込まないと延々と怠けるので追い込むことは必須だと再確認した今日この頃。


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