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harem!〜カオス煮、いっちょ上がり!〜  作者: nyao
それはさておき、
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REVERSAL-04

「先ずは軽く講義といくか」


「はい、師匠」


「よし、それじゃあ軽くスクワットを一万回、俺が飯の準備してる間に済ませておけ」


「って、え、講義……は?」


「いいから黙ってスクワットしておけ。ちなみに俺が準備済ませるまで一万回できてなかったら飯は無しだ」


「そ、そんなっ……」


「文句はきかねぇ。文句言う体力あったらさっさと始めろ」


「……はい」




◇◇◇




と、いう会話があって。


いったいいつ、どこから出したのか老人が人参のような物(?)を切り刻んで鍋の中に入れたり、見たこともないような魚を(以外にも)華麗に捌いては鍋に放り込んだり、肉? をミンチにした上で丸めて鍋に放り込んだりと、意外にも慣れた手つきで料理の準備を整えていっていた。


その傍らで、ユウはスクワットを続けていた。




「四十五回、四十六回……四十、七回、よん、じゅ……はち……か、い!」




流石にそろそろ辛くなり勢いも衰え始めたころ、それでもユウとしては五十回近くも頑張ったのだから十分凄いことと思っていたのだが、いくらなんでも一万回は無理だった。


もしかしなくてもはじめからご飯を食べさせる気がないのではと、ユウが老人へと視線を向けようとしたまさにそのタイミングで、




「――?」




不意にユウは身体が軽くなるのを感じた。誰かが外から見れば、その身体が淡い光を放っていることに気づくだろうがユウはそれに気づかない。




「どうした、さっさと続けないといつまでたっても終わらないぞ」


「あ、はい。……四十九、五十、五十一――」




ユウには目もくれず調理をし続ける老人の声を聞いて、あわててスクワットを再開する。それは若干、先ほどまでと比べて早いペースだった。




……




そしてまたしばらくしてスクワットを続けるのが辛くなり始めた瞬間、ユウはまた身体が軽くなるのを感じた。不思議に思いつつも今度はそのままスクワットを続ける。――やはり少しだけ、先ほどよりもペースアップした速度で。




それを数度、あるいは数十、数百度と無心のまま繰り返し続け、その集中が途切れたのは老人の一言が原因だった。




「9.996、9,997、9,998、9,999、いち――」


「よし準備終わったそれまでうんまだ一万回終わってないなということで飯抜きだ」


「――まん、……回。……」


「よし、われながらなかなかいいできに仕上がったな、うん」


「……」


「何だ、言いたいことがあるならさっさと吐け、弟子」


「……師匠、聞いてもいいですか」


「んな前置きはいらねえからさっさといいたいことを言え、つってるだろうが」


「……今、狙いませんでしたか?」


「あん? 何をだ?」


「わたしの、タイミングと……」


「おう、よくわかったな」


「――」




よし、殺そう。


――などということは思いはしても実行する素振りを見せなかっただけ立派だったはずだった。




何とか、ギリギリでユウは沈黙を守った。




「よし、これで講義は終いだ。理解したな?」


「……えっ?」


「何だ、理解できてないとでも言うきかぁ?」


「こ、講義なんて受けてませんっ……けど」


「よぅ、弟子。賢くなることを一つ教えてやる。お前の世界にはなかったかもしれないがこの世界には肉体言語っつーのがあるんだよ。覚えとけ」


「……」


「何だ、肉体言語も説明しなくちゃ理解できねぇか?」


「……ぃぇ」


「そうか、そうか。――んで、取り敢えずは基本的な肉体の書き換えは終わったんだが調子の方はどうだ?」


「……え!?」


「……もしかして本当に何にも気づいてないとでも言う気かよ、弟子」


「に、肉体の書き換えとか、何ですか、それっ……?」


「――チッ、マジで理解してなかったのか。随分と頭の足りない弟子だな、おい」


「……むっ」


「おぉ、なんだぁ、もしかして一丁前に機嫌悪くでもしてンのか、弟子の分際で」


「……」


「今度はダンマリか。かぁぁ、弟子の癖にいい身分だな、あぁ?」


「……、――すみません、わかりません、くわしくおしえてくださいおねがいします」


「おうよ、つか初めからそう言え、分からないなら分からないで初めから自分の無知をさらせっつーの」




ユウは日ごろ――とはいってもこの世界に来る前のことだが、どちらかといえばあまり怒ることのない性格だったのだが。


何故か不思議とこの老人の前では、違った。




ウマが合わないのか、それとも老人の人徳故か。老人が偉そうにするだけで心の底から苛立ちが湧き上がってくるのだ。


特に老人に見下されるようなことを言われたときなどは、酷い。苛立ちというよりも既に殺意に近いのだから。




「何だ、随分と生意気な視線だな、弟子」


「……いえ」


「だがまあ、それくらい意気が良くないとこれから先、詰まらないだろうしな。くくくっ」


「……」


「ゃ、まあいい。話がそれたな、この馬鹿弟子め」


「――」


「で、だ。詳しくだったな。よし、教えてやろう。この世界には魔法という便利なものがあってな、疲労回復、滋養強壮、勢力倍増、魔力が続く限り強制労働させることができるんだ」


「……きょ、強制労働、ですか?」


「ああ。壊れたところから即座に直し、肉体的増強を図ると同時にひたすら精神的地獄を見せることができる。……落ち込んだ!」


「はい?」


「――いや、なんでもない」


「……でも、随分と便利なものがあるんですね」


「まぁ、今俺が言った馬鹿みたいな使い方すると即力尽きて逆にぶっ倒れるがな」


「……――師匠は、」


「と、いうわけだから弟子、お前にはこれから30日で、俺のすべてを詰め込んでやる。――睡眠時間は保障しないがな」


「……」


「と、いうわけだから飯にするかぁ。……ああ、ちなみに飯抜きってのはうそだ。おらよ、食いな」


「あ、ありがとうござ、……師匠?」


「あん?」


「それ、なんですか?」


「見て分からねぇのか?」


「……木の皮?」


「俺の飯だ。何か文句あるか、あぁ?」


「……これ、食べないんですか?」


「調子に乗るな、おい」


「ご、ごめんなさい」


「俺の飯はこれだ。つべこべぬかすな」


「……」


「哀れんだ目でも見るな」


「……」


「……さぁ、飯の時間だ」


「は、はい……」


「……………………まじぃ」


「その……食べます?」


「うるせぇ、同情してんじゃねえよ!!」


「ひゃ、ひゃい!?」


「……チッ」


「な、何で怒られてるんだろ、わたし……」




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