ど-619.限界
なにかちょっと、まじめ?
「おや?」
「……」
「旦那様、少々よろしいでしょうか」
「……」
「旦那様?」
「……」
「おい、ニート」
「――ぅん?」
「あ、いえ間違えました。少々よろしいでしょうか、旦那様」
「……何か今、ものすっっっげぇ暴言を聞いた気がするんだが?」
「私は暴言など申しておりません」
「……、そこまで断言する度胸にもすごいものがあるけどな、」
「お褒めいただくほどのことではございません。この程度私にとっては常備、いわばできて当たり前のことでございます。ですがだんな様にお褒め頂けて悪い気はしませんね。ありがとうございます、旦那様」
「いや、今のどこが褒めてた?」
「私を弄んだのですね、旦那様酷いですっ!」
「……ああ、もう褒めたでも弄んだでも、どっちでもいいや」
「そうですね。今はそのようなこと、些細なことに過ぎません」
「……ああ、そう言えばお前、何か言いたそうにしてたなぁ」
「はい」
「あ、それはそれとしてさー」
「旦那様、私の用件は比較的急ぎのものと考えられるのですが?」
「俺も結構緊急なんだ」
「……では致し方ありません。如何なされたのですか、旦那様」
「あぁ、うん。南下さ、俺幻覚とか見え始めたみたいなんだ。そろそろやばいかもしれない」
「幻覚、で御座いますか?」
「ああ。何か焦げ付くような臭いと、何かはるか彼方に煙が見えるんだ。何だろ、俺ってそんなに人恋しがってたってことなのかな?」
「いえ、旦那様。あの?」
「煙といえば、ほらあれだ。食事の準備? いや、それとも野宿? まあまだ野宿始める時間じゃないけど。だがしかし、そうすると、飯? 飯なのか? ご飯か、ご飯なんだな、あそこまでいけばご飯にありつけるんだなっ!」
「失礼ながら旦那様、少々落ち着いてくださいませ」
「俺は落ち着いている! そしてそれ以上に腹が減った!!」
「……端的に申し上げますと、旦那様が見ているものは幻影では御座いません」
「何!? と、言うことはあそこに――!」
「はい。ここから旦那様の歩行速度でおよそ一日ほどの距離に人里が御座いました」
「ござい、……ました?」
「はい」
「――結論を言え」
「小人族の集落が【厄災】……いえ、この場合は『魔族』と呼ぶべきでしょうか。に襲撃されております」
「ッッ、それを早く言え馬鹿ヤロウ!!」
「私は申し上げようとはしました。ですがそれを止めたのは他ならぬ旦那様……と、もういませんか。……では、私たちも――全ては旦那様の御心のままに」
つづ・・・く?