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「夏だ! 水着だ!! ――女体鑑賞だぁぁ!!!!」
「旦那様、最後の一つだけ、何かおかしく御座いませんでしたでしょうか? また異様な力強さを感じたのですが?」
「……いや、そんなことはないが?」
「左様で御座いますか。旦那様がそう仰られるのでしたら、間違いなくその通りなので御座いましょう」
「当たり前だっ!」
「そうですね。当たり前で御座いますね」
「ああ。と、言うわけで全員で演習に行くぞ。ビバ水着」
「……全員、と申しますと。やはりこの館に在住する“隷属の刻印”を刻まれた方々全員、一人残らず、ということですか?」
「ああ、そうだ。ビバ水着……やっぱり定番はワンピか? それとも攻めのビキニ?」
「……、流石に一人も残しておかないのは些かながらに警戒が足りないと具申致しますが?」
「そこは大丈夫だ。……ビバ水着、いやいや、ここは意外性をとって貝殻とか葉っぱとか、伝説の“ふんどし”とやらも捨てがたい」
「……、承知いたしました」
「って、なんで大丈夫なのか理由は聞かなくていいのかよ?」
「はい。旦那様が大丈夫と仰られるのでしたら、欠片の狂いもなく大丈夫なので御座いましょう。信じております」
「……ま、まぁ、せっかくの機会だし皆で一斉に遊ぼうとか、そう思い立ったわけだが、というより夏! と言ったら遊ぶしかないだろ、これっ」
「夏と言っても、この浮島が偶々夏季の地域に入っただけですが? むしろ旦那様が夏季地方を望まれたのでこちらに足を運んだだけで御座いましょう?」
「俺はそういう風情のない台詞を聞きたいんじゃないっ! 暑いといたら夏、夏といたら海、海と言ったら水着!! 水着といったらキャッキャと戯れる女の子と囲まれモテモテな俺!!! だろうがっ」
「途中までは旦那様のお言葉に賛同いたしますが……いえ、旦那様のお言葉とあらば全てにおいて無条件に賛同いたしましょうとも。――そーでございますね?」
「流石だなっ!」
「いえ、それほどでも御座いません。……それと旦那様?」
「あん?」
「先程から一つ気になっていたのですがお尋ねしてよろしいでしょうか?」
「気に? 何を?」
「……水着がそれほどまでに良いものですか?」
「――ハッ、これだからテメェは駄目なんだ」
「……なにやら今、非常に不愉快な気分になりました」
「お前は分かっていない、何も、何一つ分かっちゃいないっ」
「個人的な意見としては水浴びは衣服を何も身に着けない方が気持ちが良いと思うのですが……」
「――グフッ!!??」
「旦那様?」
「……ふっ、負けたぁぜ、とっつぁん」
「とっつぁんとはどちらのことでしょうか、旦那様」
「まさかここで全裸を推してくるとはなぁ、流石の俺の想像してなかったぜ」
「? 旦那様が何故そこまで震撼しておられるのか今一つ理解し難……いえ、不幸にも旦那様のお考えはすべて察することができてしまうので、できれば理解するのを拒絶したいのですが?」
「そうか? お前が分からないなんて珍しい」
「いえ、分からないとは申しておりません。理解したくないと申し上げているだけで……それに旦那様、私でも分からないことはごく稀に御座います」
「そこでごく稀に、ってのがお前らしくはあるけどなぁ。……なら想像してみるといい」
「想像で御座いますか? 拒否してよろしいですか?」
「否だ」
「はい、旦那様」
「ではっ……ああ。こう、湖の畔で皆が水浴びしてるんだ」
「……はい、ほほえましい光景で御座いますね」
「そうだろう? んで、そいつらの服装が全員全裸、当然お前もな?」
「……それは」
「どうだ、俺の言いたいことが少しは分かったか?」
「はい。理解いたしました。確かにこれほどの地獄絵図は草々ないでしょう」
「……は? 地獄絵図?」
「はい。旦那様が思い描いたものとは異なっているのですか?」
「というか、どうやったら地獄絵図なんて光景になるんだ? むしろパラダイスでしかないはずだが……ほら、考えてもみろよ、女の子達が水辺の畔できゃっきゃうふふと戯れてるんだぞ? ――しかも全裸でだ!!」
「そこは力説するような箇所ではないと思いますが……そうですね、それだけならば微笑ましいだけの光景では御座いますが」
「それが何処をどうしたら地獄絵図になると?」
「――一つ、私は旦那様以外の者に肌を晒す気は御座いません。それは同姓といえど人外といえど例外は御座いません」
「……あー、うん、まぁ?」
「一番軽いところで目潰し……文字通り『目を潰す』事で御座いますが。そして次に軽いところで両の目玉を抉り出すといったところでしょうか?」
「…………理解した。確かにコレは地獄絵図と言う他ないな」
「はい。旦那様にご理解いただけた様で何よりで御座います」
「というか、コレはないな。一番楽観的なので全員に問答無用の目つぶし……湖の畔で全裸の女の子たちが死屍累々とか、お前はもう少し自制心を覚えるべきだと俺は思う。肌の一つや二つ気にするなよ」
「旦那様の想像の中の私を語られても困りますが、おそらくおおよそ実際の私と相違ないはずですのでこの場は可能な限り、誠心誠意努力だけ致します、とお答えしておきましょう」
「……実に成果を期待できない答えだな」
「それほどでも御座います」
「つか、それを自分で認めるなっ!」
「旦那様、世の中には可能なことと、条件次第により可能なことが御座います。あくまで想像の中だけでの答えとなりますが、条件次第によっては死屍累々の光景も避けうるかもしれません」
「……ほぅ。んじゃ、その条件ってのは?」
「難しいことでは御座いません。つまりは旦那様が私を抑ええいてくださればよいだけで御座います」
「あ、なる……て無理無茶無駄なことってあるよね!?」
「例えば、衆人環視の目から旦那様自らが私の身体を隠してくださればよいかと。旦那様に理解できるよう一言で申し上げますと、ずっと抱きしめていてください」
「却下」
「……で、あるならば二つ目の案として、流石の私もこれは恥ずかしいのですが、」
「恥ずかしいなら止めようよ、別に言わなくていいよ!?」
「つまりは周囲の目など気にならないほど、旦那様が私をめろめろにしてくださればよろしいのです。具体的には――いえ、その程度は旦那様ご自身が考えてくださいますようお願い申し上げます」
「って、言うのかよ」
「めろめろ?」
「却下」
「……」
「目の前でメイドさんが期待に満ちた目を向けてきています。どうしますか? ――無・視!」
「左様で。……やはり旦那様はつれないお方で御座いますね」
「ってかさ、何より一番の問題は今お前が挙げた方法だと俺がお前にかかりきりになっちまうじゃないか」
「はい、そうで御座いますね。ありがとう御座います」
「いや、何故にそこで礼を? ゃ、そういうことじゃなくて、」
「はい」
「俺がお前一人にかかりきってたら他の女の子達を見て回れないじゃないか」
「旦那様、言葉は正しく用いてくださいませ。見て回る、ではなく視姦して回る、で御座います」
「違ぇよ!? と、いうか、女の子がお前一人だけとか、それじゃあ本末転倒だしな」
「……」
「ん?」
「あ、いえ。私のことも女の子扱いしてくださる旦那様に改めて見惚れなおしておりました」
「は? 当たり前のこと……ま、まさかお前、俺の知らない間に性転換を――!?」
「それはないです」
「……ほっ」
「ですが、理解いたしました。つまり旦那様は私一人だけでは飽き足らず、“隷属の刻印”を刻まれた方々全員を視姦して回りたいと、そう仰られるわけで御座いますね」
「いや、間違っちゃいないが、だから視姦じゃないつーの。俺は単に皆の輪の中に入って戯れたいだけだ!! 疚しい所など、全てといって過言じゃねえ!!」
「はい、旦那様」
「あ、いや待て。ちょい言い間違えた」
「どこも言い間違えてなどおられません」
「いや、言い間違えたんだよっ? 俺は疚しい所などひとつもない、と言いたかったわけであって」
「はい、承知しております。本音が漏れただけで御座いましょう?」
「違ぇよ!? だからちょっと、ああ、ほんのちょっとだけ言い間違えただけだっつーの!」
「旦那様の仰られることは全てにおいて正しいです」
「お前って絶対俺のこと信じてないよな!?」
「いいえ、そのようなことは断じて御座いませんとも」
「いいやっ、信じてないねっ!」
「……今の意固地になられた旦那様に何を言っても無駄でしょうから話を戻しますが、では旦那様は私のお相手が嫌ということでは決してなく、ただ皆様方に半殺しにされたいと、そう仰られているので御座いますね?」
「誰も半殺しにされたいとか言ってないと思うが……まあ、一応言っておくけど確かに別にお前の相手が嫌ってわけじゃないぞ?」
「はい、承知しております。ですから態々言葉で申し上げてください、もっと言ってください」
「――と、とにかくっ。全裸だとさぁ、ほら、やっぱりお前と違ってうぶな女の子も中にはいちゃうわけで?」
「それは私は初心ではないと仰られているのですね?」
「当然だ、じゃなくて。ほら、そうするときゃっきゃと戯れるというよりは恥ずかしがってもじもじしちゃったりして、気まずくなっちゃうだろ?」
「なるほど、それも良い、と」
「まあ、……いや、違くて。じゃ、なくて、そんなちょっと雰囲気が悪くなったりしたらやっぱり困りものだろ?」
「旦那様の存在とその呆れる他ないご意見ほどではないと、少々辛らつ気味に真実を申し上げてみます」
「いや、少々も何もお前はいつも辛辣……というか、だ。だから、そういうわけで全裸は却下だな。口惜しいが。非常に口惜しいがっ!」
「……」
「と、言うわけでやっぱりここは水着だな、水着だよな、いや、そもそも夏と言えばやっぱり水着しかないよなっ! 水着だよ、水着っ!! ひゃっほぉぉ~」
「……」
「……そんなに見つめてきても俺は何も言わないからな?」
「……ふぅ、本当に仕方のない旦那様で御座います」
「まぁ、な」
「それで旦那様?」
「ん?」
「――本気で御座いますか?」
「当然だ。皆の水着は、」
「はい。ご用意しております、が私の見立てでは18名ほど、用意しておいた水着が着られなくなっているものと愚察致します」
「……ほぅ。で、それは誰だ?」
「黙秘いたします」
「なんだよぅ、それくらいけちけちせずに教えろよぅ」
「お断りいたします。水着を新調なされる皆様方も旦那様に知られるのは恥ずかしいでしょうし、それに何より」
「何より?」
「旦那様ご自身が直に見て発見、実感なされた方が旦那様としても喜ばしさ・感動・情動が倍増されるのではないかと、私はそう判断しております」
「……成程。それは確かにそうだな。安易に教えてもらうよりは自分で見抜いたほうが嬉しさも一入か……うん、確かにその通りだ」
「旦那様にもご賛同いただけた様で何よりで御座います。あと、そのようなことを理由にとってつけてやはり皆様を視姦なされるのですね、流石は旦那様」
「いやっ、これそもそもお前が言い出したことだしっ?」
「ご心配なされずとも、私は旦那様の心の中を吐露して見せたに過ぎません」
「吐露してないよ! ぜんぜん吐き出したりなんてしちゃってないよ!?」
「はい、旦那様。全て、分かっておりますとも」
「……」
「何か?」
「いや、もういいや」
「左様で御座いますか」
「ああ。……で、だ」
「承知しております」
「――と、言うわけで次に俺が言いたいことは、分かってるな?」
「この位置からですと……ミシェイル湖などが丁度いい規模ではないかと思いますが如何で御座いましょうか?」
「ミシェイル……あぁ、あの水精霊族の一種、つか亜種が棲みついてる所か」
「はい。あそこならば大きさもそれなりに御座いますし、なによりヒトに見られる心配がほぼ御座いません」
「だ、なぁ。確かあそこって近隣からは聖域とかに扱われてるんじゃなかったっけ? まあそのお陰で小人族はほとんど足踏み入れないはずだし、」
「はい、旦那様」
「それにお前がいれば五月蠅いのは一言で黙らせられるしな?」
「ご冗談を」
「いや、冗談じゃないし。つかもしもお前抜きで行ったりなんかしたら大変なことになるぞ?」
「皆様方の、ああ当然旦那様は除きますが、皆様方の力量であれば平穏に浸り切っているウィンディーネ達など相手にもなりません」
「いや、相手になるならない以前に相手にしちゃ駄目だろ」
「旦那様は私がそのような生ぬるい鍛え方をしているとお疑いなのですか?」
「だから、鍛えてる鍛えてないとかじゃなくてだな。正体不明の小人族数百人が突然現れて、問答無用で自分達の住処を蹂躙・占拠ってそれどうよ、と俺は言いたいわけだ。まるきり俺らのほうが悪党じゃねえか」
「はい、その通りで御座いますね。まったく、どのような心根をしていれば旦那様はそのように鬼畜の所業を何の良心の呵責もなく行なわれるので御座いましょうか」
「いやしないし? と言うかそれをしようとしてたのはお前の方だ、お前の」
「私はそのようなことは決して望みませんでした。ですが旦那様に命じられ、仕方なく――」
「って、お前ナニ言っちゃってるの!?」
「いえ、後々のことを考えて予習は必要ではないかと思い……私は優秀かつ真面目でございます故、予習も欠かさないので御座います、旦那様」
「それ、予習と違ぇ。と言うか、俺はさっきからそうならないように、お前にウィンディーネたちの説得を頼みたいと言ってるわけだが?」
「旦那様、申し訳御座いませんが私などが説得したからといってウィンディーネたちが聞き入れるなど、ほぼ間違いなく十全に素直に隷属すること請け合いでは御座いましょう」
「だろう? だからお前に頼んでるわけだ」
「えー」
「嫌そうな声を出すな、首を横に振るな、胡乱気な半眼でこっち見んな。つか……そんなに嫌か?」
「旦那様に命令されるのがなんとなく反抗心を生みます」
「生むなよっ、そこは反抗せずに素直に従っとけよ!?」
「では旦那様は私を使う見返りに私のどのようなことをしていただけるのですか?」
「――あん? なんだと」
「だんなさまぁ、わ・た・しぃ、ごほーびが、ほしぃなぁ~?」
「うわ、キショッ」
「失礼な」
「止めとけ。お前にそういう媚びるみたいな真似は似合わないから」
「……旦那様にそういわれると悪戯心が心の底より湧き上がって参ります」
「って、おい……」
「――旦那様、勝負!」
「いや、勝負って言われて」
「ね~、旦那さまぁ~♪」
「何だよ、つか距離がちょっと近くな――」
「ふ~」
「ぅ」
「ふふっ、旦那さまぁ、真っ赤になっちゃって、可愛い♪ ちょっと耳に息をこうして吹きかけた、だ・け♪ なのに。ふっ~」
「おまっ、ちょ、止め――」
「止めないよー、だ。それと言うのも旦那様が私のことをバカにするから悪いのっ」
「馬鹿にしたつもりは……つかそういうのは気色悪いだけだからさっさと止め、」
「そんなこと、言うんだ? 旦那様にはぁ、まだゆーわくが足りてない、かな?」
「誘惑言うなっ、てかおいこら、身体くっつけんな、胸押し付け、-―あああ゛、服の中に手ぇ入れてくんじゃねえ!!??」
「そういう割には、抵抗が少ないみたいだけどぉ……?」
「だっ、だからそういう、耳元で声を上げるのは反則っ、」
「反則? ナニが反則なんですか? ……ねぇ、だ・ん・な・さ・ま♪」
「ぁ、――……」
「……? 旦那さ、」
「……おい」
「はい、旦那様」
「分かってるよな? 俺にも、我慢の限界ってものがあるんだぞ?」
「――、はい。多少は“その気”になられたようで……どうやら私の勝利のようで御座いますね、旦那様」
「――」
「如何で御座いましたか、旦那様。少し本気を出せば私もこの通り、媚びる・強請る・甘えるの三宝を行なうことなど児戯にも等しいとご理解いただけたでしょう」
「――」
「? 旦那様?」
「……ふ、ふふふっ、ふははははっ!!」
「……えぇと、旦那、様?」
「オマエ、ワカってんだろうな?」
「……旦那様、如何致しましたか? いつもよりもも目が血走っているように伺えますが……?」
「それはね、きっと頭まで血が上っているからさ」
「然様で御座いますか。ですが旦那様、なにやら何時もよりも、浮かべておられる笑みに野性味と言うか、その、なにやらやる気が満ち溢れておられる気がするのですが……?」
「まあ間違ってないな」
「何故でしょうか? 旦那様のなさることであれば全てを受け入れる覚悟は御座いますが、今は逃げるのが是であると私の本能が申し上げております。これは何故なのでしょうか?」
「ははっ――ニゲラレルトオモウナヨ?」
「……」
「……」
「旦那様は何故、じわじわと間合いをつめてこられているのでしょうか?」
「なに、そうした方が雰囲気と言うものが出るだろう?」
「何の雰囲気でしょう、と聞くのは野暮と言うものでしょうか、旦那様」
「ああ、そうだな。野暮だな」
「……、そういえば私、急用が御座いました」
「そんなのは聞いてないなぁ……?」
「いえ、旦那様が海、いえ湖に行きたいと仰られるので、では準備をしなければと思いまして」
「ああ、そういえばそうだったな」
「はい、旦那様」
「ま、そういうことはまた後で良くてだな、――むしろ後に回せ」
「いえ……良くは御座いません。皆様方への連絡や様々な準備等、やらねばならぬことは様々に御座います。ですので――」
「よし、そういうことなら俺が、」
「謹んで遠慮いたします」
「まだ何も言ってねぇ」
「何やら遠慮せよと私の本能が申し上げております。では旦那様、失礼致します」
「まぁ、待てよ」
「……私に対して回り込むなど、いつになく素早い行動で御座いますね、旦那様」
「そうかぁ?」
「はい。私が言うのですから間違いなく」
「お前が言うんだから間違いなく、か」
「はい、旦那様」
「成程」
「……」
「……」
「……」
「と、言うわけだから、脱げ」
「……」
「脱げ」
「申し訳御座いません、旦那様。私としたことが旦那様のお言葉を聞き逃してしまったようで御座います。なにやら旦那様が仰られるお言葉の文脈が理解できなかった、いえ欠けているように思えるのですが?」
「よし、俺がお前が水着に着替える手伝いをしてやろう」
「……」
「と、言うわけで、脱げ」
「……説明が圧倒的に足りていないのは変わりありませんが、しかしそれが旦那様のお望みとあらば受け入れましょう」
「よし、じゃあ」
「……ですが、その手の動きは止めませんか?」
「……ふむ?」
「なんとなくですがその“わきわき”とした感じの手つきが嫌な感じが致します」
「そうか。なら仕方ない」
「ご理解いただけたようで、ありがとうございます、旦那様」
「いや、俺としてもお前の嫌がることを無理やりしたいってわけじゃないからな」
「はい」
「と、言うわけだから――」
「……ええ。では、ただ今より着替えますので旦那様は思う存分視姦なさってくださいませ」
「ふっ、甘いな。つか、待ちやがれ、おい、こら。俺が着替えさせるんだからテメェは何もすんじゃねぇ」
「…………それが旦那様のお望みとあらば、如何様なりともそれが私の願いそのもの、全てに御座います」
「よし、それじゃあ、じっとしてろよ?」
「はい、旦那様」
「それ、じゃ――」
『わくわく、どきどき、わくわく、どきどき……』
「……――いえ、旦那様、申し訳御座いませんが少々お待ちいただいても?」
「駄目、待ったなし」
「左様で御座いますか。では、致し方ありませんが――」
「……ぅん?」
「失礼、旦那様」
「ぇ、ヴぁ!?」
「申し訳御座いません、旦那様。“その機会”はまた今度、ごゆるりと。そんなことより、今は――」
『っっ、』
「さ、散開ッッッ!!!!」
『ハッ!』
「私も旦那様に気を取られすぎて気づくのが遅れてしまいましたが、……折角の機会を、……ふふ、ふふふっ、よい、度胸です。皆様方?」
◇◆◇
せいしんてきに、しぼうちゅう。