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harem!〜カオス煮、いっちょ上がり!〜  作者: nyao
それはさておき、
1059/1098

 ど-613.メイドは悲しみに打ち震えている

『悲しみ』の意味がたぶん、一般とは違う。



「……しくしくしく」



「……」



「しくしく――?」



「……」



「――お待ちくださいませ、旦那様」



「……何だ、と聞きたくもないが、ここは甘んじて聞いてやろう。何か用か?」



「大した用事というわけでは御座いませんが、旦那様はいつの間に泣いている私をそのまま素通りしてしまうほどに非情なお方に成り果ててしまわれたのですか」



「何だ、お前泣いてたのか。それは気づかなかった」



「しくしくと悲しそうな啜り泣きをしていたでは御座いませんか。旦那様のお耳はそのような音も聞き取れぬほどに悪くなってしまわれたのですか?」



「いや、『しくしく』ってお前が言ってるのは聞こえてたけど。まさか泣き声だとは思わなかった。新手の腹芸の練習か何かだと思ったぞ」



「腹芸で御座いますか? それは旦那様が最近寝る前に行っている――」



「って、ちょっと待てテメェ!!」



「はい。如何なされたのでしょう、旦那様?」



「……お前、まさかアレに気づいてたのか?」



「アレとはどちらのアレのことでしょう? 旦那様に関する『他人に秘密にしたい秘め事百選』ならばしっかり百、ご用意しておりますが。さて、どれを暴露いたしましょうか」



「暴露言うなっ」



「失礼いたしました。では密告といいなおしましょう」



「どっちもろくな意味じゃねぇ……」



「まあ所詮旦那様が秘密にしたいことなど、『くすっ』と微笑ましく小笑いされてスルーされるようなものばかりで御座いましょう。最近行っているどなたかの物真似などは『くすり』というよりは呆れた苦笑いになってしまうでしょうが、それは致し方ありません」



「っっ」



「ああ、その件で一言旦那様に進言したいことが御座いますが、どなたの物まねかは存じ上げませんが旦那様にはその才は微塵もないとお見受けいたしましたので、早々に諦められることをお勧めいたします」



「おま、おま……!」



「まあ旦那様ご自身が、『お、俺って結構いけてるんじゃね?』などと勘違いなさっておられる様は、確かにブサマとしか言いようのない微笑ましさを感じ取ることは叶いましたが」



「お前なんでそれ知ってるんだよ――!!??」



「なんでも何も旦那様の行動は四六時中監視……いえ、それはそうと旦那様の考えていることなど、旦那様のお顔を一度拝見すれば十分に事足ります」



「監視言った! 今間違いなく俺の事監視してるってお前言った!!」



「監視で御座いますか? しておりますがそれが何か?」



「開き直りやがったっ!!」



「冗談で御座いますよ?」



「全く冗談に聞こえてねえよ!!」



「ご心配には及びません。気配を殺して旦那様の寝顔を拝見するのは名残惜しいですが三日に一度と決めております。そして額に『神』などと落書きをするのは九日に一度で御座います」



「お前かっ! やっぱりあれはお前のいたずらかッ!!」



「ご心配なされずとも私は常々学んでおりますので、最近は旦那様にのみ見えない魔法の羽ペンなどという超便利アイテムを創造してしまいました。最近など、私は私の才能が恐ろしく感じることが御座います」



「俺はお前の存在そのものが恐ろしいよッ!!」



「そんな、恐ろしいなどと……私が旦那様に危害を加えるなど、そのようなことは可能性を論じる必要もない、ありえないことなのは旦那様も百も承知であると信じておりましたものを」



「いや、まあ、ある意味ではお前が俺に危害を加えることなんてないだろうなーと漠然と分かってはいるつもりだが、」



「ありがとうございます」



「だが、だ! それはあくまで事態の一面を見た場合の事であって、回りまわって俺が酷い目にあう確立は」



「百パーセント」



「そう、百パーセントだ……――って、俺は必ず酷い目見るのかよ、思いっきり作為的かよっ!?」



「旦那様は愉快ですから」



「愉快じゃないっ! 俺は愉快じゃないっ、あとそういうのは『愉快なことが好き』とか『愉快なお方』とかそういう遣い方をするのであって、絶対に『愉快ですから』って感じにそこだけで完結してる使い方をするのはおかしい、絶対に可笑しいっ!!」



「ふふ」



「笑うんじゃねー!!」



「流石は旦那様で御座いますね。泣いた私がたちまちのうちに笑い出しました。このようなこと、旦那様以外に出来るお方は存在しないでしょう」



「……いや、そもそもお前泣いてなかったし?」



「しくしくしく」



「それは泣いているうちに入らないと覚えておけ」



「そうなのですか?」



「全くの無表情で、ただ立ち尽くして『しくしくしく』とか呟いてるだけで何処をどう取ったら泣いてると思えるんだ? つか、それは何処のホラーだ。不気味なだけだろうが」



「そうなのですかっ」



「いや、何でそこで『はじめて気づいた、驚きだ』みたいに声を張り上げる?」



「そのような分かりきっていたこと旦那様に言われるまでも御座いませんが?」



「……、だよなっ!」



「はい。全く、旦那様はそのようなことも分からないほどの“お間抜けさん”なのですね。ふふふふふ」



「……あとさ、その『ふふふふふ』とかも表情変えずに言うの止め? それも少し怖いから」



「旦那様は私にあれは駄目、これは駄目と駄目尽くしをして私の行動を雁字搦がんじがらめに封じてどのような卑猥なことをさせるおつもりなのですか、というよりも態々そのようなことをされずとも旦那様が仰ってくだされば私はどのようなことでも言い従いますが?」



「いや、特に何も?」



「左様で御座いますか。それは残念」



「ああ。……と、言うかおまえさぁ」



「はい」



「そもそもの話、アレ何のつもりだ? 『しくしくしく』とか、泣き真似? いや全然出来てなかったけどよ」



「悲しみに打ち震える私を旦那様に慰めていただこうと思いました」



「あー、はいはい、りょーかい、よぉくわかりました。……誰が何を悲しみに打ち震えていると?」



「今朝方、私が旦那様を起こしに旦那様の寝室へ密入しましたところ、旦那様は既にご起床なされておりました!」



「あ? ああ、まあ今日は何か自然と爽やかな感じに目が覚めてな。うん、誰にも邪魔されないいい朝だった。……で、それがなにか?」



「これは悲しまずして何を私に悲しめと旦那様は仰られるつもりで御座いましょうか」



「……いや、まぁ。…………がんばれ?」



「はい。旦那様にそう言っていただけると頑張り甲斐が出てきます。――具体的に旦那様をどのようにして楽しませ……いえ、“愉しむか”と言うことが」



「止めて!? それは間違いなく俺は愉快じゃないから!! というか、あれ、俺もしかしなくても墓穴掘った!?」



「本日もやる気が湧き上がってまいりました。――頑張りましょう」



「頑張るなっ!!!!」




平和、平和。


のんびりまったり、です。・・・15分ほど遅れましたが。


やっぱり愛は世界を救うそうですよ?

まあ、実際に救われたかどうかなんて、おそらく分かりませんが。





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