ど-612.いつものこと
へたれちゃん(=魔王様)は可愛い狼の女の子です♪
……いや、獣人とかじゃないですけどね?
「……なあ、何かさぁ」
「はい、どうかしましたか旦那様。と、随分と汚れておられますね」
「お前、分かってて聞いてるだろ?」
「さて、と空惚けるコトにいたします」
「その時点で分かってるって白状してるようなものだ」
「そうですね。旦那様がそう思われるのでしたらそうなのでしょう」
「あくまで認めないつもりか?」
「はい、あくまで認めないという立場に甘んじようと思います」
「……ちっ、まあいい。お前が分かってようと分かっていつつ惚けてようと、どっちでも同じことだ」
「ちなみにただ今旦那様が仰ったのは本当に同じ意味のことでございます」
「ふん、分かりきったことを態々確認する必要もないってコトだよ」
「はい。仰ることだけは、あぁ、時折との条件付ではありますが、その通りで御座いますね、旦那様」
「で、だ」
「はい、旦那様」
「――あの犬助、俺の事舐め腐ってね?」
「その様なことはないと思いますが?」
「いいや、違うね。絶対あの犬、俺の事を自分より下に見てる。見下してる、俺の事を下僕か何かだと勘違いしている」
「それは勘違いなのですか?」
「いや、勘違いだろ、明らかに!?」
「そうで御座いますね。旦那様が白と仰られれば黒いものでも白である……ええ、いえ、決して今の言葉に深い意味など御座いませんが、旦那様の仰られるとおりかと」
「……いや、それ確実に俺の言葉認めてないだろ」
「いいえ、旦那様。そのようなことは御座いません」
「……」
「そのような胡乱気な視線で見つめられましても……照れればよろしいですか?」
「照れるトコ違うから」
「然様で御座いますか」
「ああ」
「それで旦那様? へたれちゃんが旦那様に何をしでかしたのでしょうか。時と場合と旦那様の事情は一切関係なく私の機嫌に応じて少しばかりのお仕置きをしなければいけないかもしれません」
「いや、明らかにそこ違うだろ?」
「そうなのですか? やはり旦那様はお優しいのですね。では仕置きの方はなしという事で」
「そっちじゃなくて、」
「そちらではない?」
「ああ……というか明らかに分かってるやつ相手に何で態々説明しなきゃいけないんだよ」
「分かっているとはどのような意味でしょうか、旦那様。まあ旦那様が仰りたいお言葉に対して分かっているかいないかと問われれば当然、十全に理解していると胸を張ってお答えしましょう」
「……で、態々俺の説明が必要なわけ?」
「せっかくの旦那様のお言葉を遮るのも申し訳が御座いませんので、旦那様が何を仰りたいのか私には良く分かりません、ということにしておきます」
「いや、全然申し訳なくとかないけどな?」
「それで旦那様、へたれちゃんはどのような失礼極まりないことを旦那様にしでかしてしまったのですか?」
「失礼極まりないというか……さっき言ったとおりだよ。何かあいつの内側の序列じゃ俺の事を下にしてるみたいでさ」
「具体的にはどのようなことでしょうか?」
「いや、俺の姿を見た瞬間、襲い掛かってきて」
「……襲い?」
「あ、いや、襲い掛かるってほどでもないんだけど、まぁ全身で俺に飛び掛ってくるわけよ。んでマウントポジション」
「それはなんとも羨ましいですね。あ、いえ申し訳御座いません。つい本音が漏れてしまいました」
「本音て……いや、まぁ今更か」
「……そこはもう少しリアクションをお願いいたします」
「リアクションて、どんな……いや、そんなもの俺に期待するなよ」
「それもそうですね。所詮は旦那様で御座いますから」
「……それはそれでむかつくなぁ、おい」
「それで旦那様、へたれちゃんはへたれちゃんの癖に旦那様にマウントポジションを取った上でどのような羨ましいことをしでかしてしまったのですか? ――まぁ旦那様に対してマウントポジションを取るなどという行為をした時点で再調教決定では御座いますが」
「あ? いや、まあ顔中舐め回されたり、その後で俺が苦労して立ち上がっても何か俺の両肩にぶら下がって俺の行動邪魔してきやがっただけで……それ以上の害がないって言えばないんだが」
「……旦那様」
「あん?」
「それは立場の上下云々ではなく、単純にへたれちゃんが旦那様に懐いているというだけでは御座いませんか?」
「いや、違うね。俺がいくら邪魔だ、退け、とか言っても全然聞きやがらないし、あの反抗的な目……お前も見れば絶対分かると思うけど、あれは俺の事を舐めてかかってるに決まってる」
「――ふむ、理解いたしました」
「そうかそうか」
「やはり旦那様は旦那様なのですね」
「……は? それってどういう、」
「そういう事情ではへたれちゃんを責めるわけにも参りませんか。全ての現況はやはり旦那様にありますので」
「はい? いや、何でそうなる――!?」
「ちなみに旦那様、理解しているとは思いますが改めて申し上げておきましょうか。へたれちゃんは外見はあのような犬畜生では御座いますが、その本質は『魔王』で御座います」
「あ? それくらい分かってるって」
「……つまり、私たちの言葉を理解できるだけの頭は持ち合わせている、ということです。スヘミア様が飼われている大蛇よりも遥かに頭は良いのですよ?」
「それくらい分かってるって。だからこそ俺を見つめるあの反抗的な――」
「ちなみにお聞きいたしますが、旦那様はへたれちゃんがそのような目で旦那様を見つめる直前にどのような事を仰られたか、覚えておられますか?」
「は? いきなり何を……」
「覚えておられないので?」
「いや。確か……『ああ、もう重いんだよ、そこ退け』だったか? そんな感じだったと思うけど……それがどうかしたのか?」
「旦那様♪」
「あ――?」
「ちょっと反省してきてくださいませ」
「は、ぃゃ――なんっ……!!」
「少々原始的では御座いますが、掘ってみました」
「――ってぇ、落とし穴かよおおぉぉぉぉぉぉ…………!!!???」
「ちなみに浮上しているこの大地を貫いて地上にまで通じておりますので、どうか着地の際はお気をつけくださいませ、旦那様。……と、最早聞こえてはおりませんか。しかしながら旦那様も女性に対して『重い』などという言葉を使うから、いくらへたれちゃんといえども不機嫌になるのです。抱きつく等のあれらはあくまでへたれちゃんの愛情表現でしかないというのに……、おや? そういえば、此度の魔王は女性、この場合はメスでしょうか? ということを旦那様にお伝えしていなかったような……まぁ過ぎたことは良しとしましょうか」
・・・夏は本気で体力がもちません。書く時間とかじゃなくて、書く体力がない。
休日は休日で、ぐて~と体力回復してたら過ぎていくし。…いや、まぁこれはサボリかもですが。
一度怠け癖がつくと問題ですな。
まぁ、メイドさんと旦那様はいつもどおりの二人ということで。内容的にはのんびりまったり。
魔王とか勇者とか?
いや、そんなの全然関係ないですが何か?