ど-609.色とりどりな
のんびりなお昼寝たいむっス
・・・うん
「世界、おお、世界よ、静粛に問う」
「旦那様? 頭は駄目ですね」
「駄目じゃないっ! というかお前は俺の顔見るなりその台詞、いくら気心が知れてるからって失礼とは思わないのかっ!!」
「!! それは失礼いたしました、旦那様。私としたことが、」
「分かればいい、分かればいいんだよ、ああ」
「ですがどちらにしても余りの旦那様のみすぼらしさに軽く本音が漏れてしまうのですから取り繕うことに意味などありませんか。いえ、どちらかといえば取り繕うほうが旦那様に対して失礼というもの、私と旦那様の関係だからこそ、旦那様には常に真実を求めて頂かなくては……というような結論に達しました」
「達しました、じゃねえよ!? 今までと全く、微塵も、さっぱり変わってないじゃねえかっ!?」
「旦那様、真実を言い当てられて苛立ちを覚えるのは分かります。私も『この美女っ、性格良くてもう最高、もう文句の付け所もねえよっ』などといわれては流石に苛立ちを覚えますので」
「……いや、そこで俺の声真似をする意味が分からないんですが?」
「つまり常日頃より粉骨砕身身を粉にしては旦那様のために尽くしている私に対し、偶には旦那様にお褒めの言葉を頂きたいという私のささやかな願望の表れで御座いますね、と自己分析してみました」
「なんだそれは、新手の脅迫かっ!?」
「脅迫などといわず、いざとなれば実力行使をすればよいだけでございましょう?」
「お願いだからさらりと実力行使とか言わないで!?」
「私が旦那様に対してそのような酷い行いをするなどと、可能性すら論じる必要は御座いません」
「てめぇ、今までの自分の行い振り返って見やがれっ!!」
「一つ打っては旦那様のため、二つ打っては旦那様のため、三つ打っては旦那様の、」
「――って、違ぇ!?」
「百打っては私の楽し、おっと」
「言った! 今自分の楽しみの為とかそんなこと口滑らしやがったよな!!??」
「そこで私が敢えて指摘させていただきますが、ここまであからさまな誘いに乗っていただくのは切り出した私としても少々心を痛めるものが御座います。はっきり言いますと、傍目から見て旦那様はバカに見えます。そして傍目から見る必要もなく旦那様はバカで御座いましょう」
「え……あ、…………ああ、うん。誘い、誘いね。ああ当然分かってたさ、お前が口滑らせたとかじゃなくて、わざと言い間違えて俺のことを試したとか、――そんなのはじめから気づいているに決まっている!!」
「……」
「……えっと、」
「そうで御座いますね、旦那様」
「止めて!? お願いだからそんな目で俺を見るのは止めて!? いや御免なさい、今のはマジ素で気づいてませんでしたっ!! ああ、もう俺が悪かったよ、てかどうせ全部俺が悪いんだろうが、世界の果てで赤ん坊が転んで泣き出したのだって勇気振り絞って告白した男の子がものの見事に振られるのだって暴漢に襲われかかってた女の子を助けてなぜか俺が牢屋にぶち込まれるのだって全部どうせ俺が悪いんだよっ!!!!」
「? 今の話は初耳で御座いますね。どのようなことがあったのですか?」
「あ? 何が、つか何のことだ俺が悪いのか、そうかそうだよな、俺が全部悪いです御免なさいっした!!」
「パーセルゥ様からもシャルア様からもご報告は受けておりませんが……旦那様、またどこか女の子にちょっかいをかけてこられたのですか?」
「ちょっかい? アレをちょっかいというのか? ハンサムどもの宴を潰してきた後、こともあろうに気が立ってた俺の前に暴漢&わけありっぽい美少女が出現したんでもう人生やり直させる勢いでフルボッコ☆にしてやったら半泣きだった謎の美少女に何故か俺が逆にフルボッコ☆にされました、あははっ♪ ――って、全然笑えないんだよ、この野郎ッッ、……ってそのことを言ってるのか、だとしたら筋違いもいいところだぞ?」
「さすが旦那様で御座いますね。私がせわしなく業務に勤しんで、恐らく女性を一人浚ってご帰還なされるだろう旦那様の気苦労を少しでも減らそうとしていたときのそのような愉快なことをされておられたのですね?」
「愉快? いや愉快全然違うよ。もうなんつーの? 俺、ちょっと本気で人間不信になりそうなんだが?」
「何一つとして心配は御座いません。その際には私が甲斐甲斐しく、今まで以上に旦那様のお世話に勤しみましょう」
「やっぱりお前は俺をストレスで忙殺する算段かッッ」
「そのようなコトは御座いませんとも。私は旦那様のために、身を粉にして尽くすだけでありそれ以上では御座いません」
「はっきり言ってソレが一番、怪しいんだがな」
「それは大変失礼なことを仰られる旦那様で御座いますね。いくら私と旦那様の関係、一方的に遠慮は無用の関係だとは言いましても、それはあんまりでは御座いませんか?」
「全然だよ、ってか今『一方的に遠慮は無用の関係』とか言った!」
「はい、確かにそう申し上げましたがそれがどうかしたのですか?」
「お前は、もう少し俺に遠慮というか労わりというか世間一般に言われる慈悲の心というものを見せてもいいと思うんだ、割合本気で」
「既に十分見せておりますが、それでもなお旦那様が望まれるというのであれば、」
「いや、誰もお前なりの慈悲とか言ってるわけじゃなくて、あくまで世間一般に言われてる“慈悲の心”な? 具体的には優しさプリーズ」
「……では、本日も良い日和のようですし、少し先の丘までピクニックと参りますか? 当然丘の上でのご休憩は私の膝枕と甘い囁きつきということで如何でしょう?」
「甘い囁きは要らないから」
「然様で御座いますか」
「ああ。――ああ、でもピクニックの方は良いかもな?」
「そうですか。では参りましょう、旦那様」
「は、いや? 参りましょうって、それなりの準備とか必要じゃないのか?」
「既に済ませておりますのでご心配には及びません」
「それは手際がいいというか、お前は何処まで俺のことを先読みしてるんだというか……まあいいか、どうせ今更だし」
「そうですね、旦那様の性癖が館の皆様方のみならず世界中全てのモノたちに余すとこなく知られているというのも今更で御座いましょう」
「ちょ待、それ初耳――」
「では旦那様。参りましょう?」
「って、おぉい、俺の話を聞けよ!?」
振って来い、ネタ! 舞い降りよ、カミ!!
・・・あ、シャトゥとかその辺りのボケ神は遠慮の方向でお願いします。