ど-603.異世界ってスバラシィ!!
夢も希望もありゃしない
「俺、すっげぇこと思いついた!!」
「それはそれは。旦那様の頭の具合がおめでとうございます」
「はははっ」
「それでどの様な事を妄想されているのですか?」
「いや、な。並行世界の概念……ってのはお前分かるよな?」
「はい。実際に観測に成功したこともありますし、存じ上げております」
「あるのかっ!?」
「はい」
「……お前、……ぃゃ」
「ですが旦那様、それが何か?」
「いや、俺は思った訳だ。無限の並行世界、そのどこかには俺がハーレムを築き上げている世界もあるんじゃな――」
「御座いません」
「――いか、って。いや、それを否定されたらそれまでなんだけどさ。きっとどこかにそんな世界があるんだよ!!」
「御座いません」
「あるんだよ!! それならそういう世界に俺が行けば、俺ハーレム! って完璧な計画じゃね?」
「旦那様の頭の中が非常に残念なことに前提条件が間違っております」
「……って、お前さっきから俺がハーレム実現してる世界がないとか、一体どんな根拠でそう言ってるんだよ?」
「僭越ながら……――旦那様が居られるならば絶対、私が傍にいます」
「……」
「つまりはそういう事です」
「ぃ、いやっ。もしかすると俺の傍にお前が居ない、」
「それは無いです。私は必ず、たとえどのような条件下の世界においても旦那様のお傍に御座います」
「え、偉く自信満々だな」
「自信? いえ、純然たる事実です」
「……」
「それに旦那様も強く反論なされないと言う事は、つまりは想像できないのでしょう? そういう世界を」
「……」
「仮に存在したとしても。間違いなく様々な“私たち”が干渉してすぐさま旦那様のお傍に参ります」
「……おわた」
「旦那様、そう気を落とされないで下さいませ」
「――て言うかっ、お前がそれを言うなよ!?」
「ふふっ」
「くっ、夢はやはり夢だから夢なのかっ!」
「旦那様、そう落ち込まないでくださいませ。旦那様には私がおります」
「それがそもそもの元凶かっっ」
「元凶などと仰らないでくださいませ、悲しくなってしまいます」
「全然っ、悲しがってるように見えねえよ!!」
「ほろり?」
「せめてその疑問系を外せ!!」
「しかし旦那様、異世界など――“他のご自身”を頼りになさるなど、ついに末期で御座いますね?」
「末期言うな!」
「ご自身の独力で切り開いてこそ、己の夢と言うわけではないのですか?」
「それは……確かにその通りだが、だがっ!」
「己の力で切り開いて、そして掴み取ってこそその喜びも何倍にも跳ね上がると言うものでは御座いませんか?」
「い、一理ある……いや、まさにその通り、なわけだが。くっ、確かに既に出来てるものよりも自分で作り上げたものの方が何倍も魅力的なのは確か、確かなんだが……!」
「旦那様、ここで決断せず何が男でしょう、殿方でしょう?」
「!!!」
「さあ、旦那様、ご決断を」
「……そう、だな」
「はい」
「――つか、そもそもテメェに言われたくねぇんだよっ!!??」
「それは残念」
ざんねん