IR-1
いんたーるーど。
ちょっと小話。今回は護衛部部長のサカラさんと副部長のアレクセさんのお話。
「そこっ、身が入ってないっ! 怪我をしたいのかっ!!」
「……はふぅ」
「あぁ、もうっ、あなたまでっ!? 皆本当にたるんでますよ!?」
「……もう、サカラたいちょーは真面目だねぇ」
「隊長じゃなくて部長です」
「どっちも同じじゃない」
「違う。私たちはご主人様の楯であって兵隊じゃない」
「まー、それはそうだけど」
「大体、アレクセ? あなたは一応副部長なのよ? あなたまでだらけてると他の子に示しがつかないじゃないの」
「示しって言っても……ねぇ?」
「ねぇ、て」
「私の言いたいこと、分からない?」
「……まあ、分かるわよ? 分かりはします、でもそれとこれとは話が別!」
「ホント、サカラぶちょーはそういうトコ、真面目だよぅ」
「そういうあなたの方がだらしなさすぎなだけじゃないの?」
「レム様よりはましだから良いのー」
「……まあ、それもそうね」
「そうそう」
「――いや待ちなさい、アレクセ! マスターじゃ比較にならないじゃないの、やっぱり違うわっ」
「ちっ、気づいたか」
「気づくわよっ!」
「……気づかなくてもいいのに」
「アレクセ! 御託はもう良いから訓練真面目にやってもらいますからね!!」
「うー、訓練は嫌いじゃないけど。レム様とお姉様――違った。“お姉様とレム様”が居ないと何か身が入らない。サカラはそういうこと、ない?」
「それは……私も同じ、だけど……」
「でしょ?」
「だからってそれが訓練を怠けて良い理由にはなりません!」
「ま、それはその通りだね。うん、仕方ないから真面目にやろう」
「仕方ないじゃなくて……いえ、ちゃんとしてくれるって言ってるんだから文句は言わなくて良いのよね、ええ」
「それじゃ、サカラ。ちょっとお相手お願いできるかな?」
「あら、珍しい。あなたの方から私に勝負を挑んでくるなんて」
「まあ、サカラの戦い方って苦手だし。……まあだからこそ、お姉様たちの目がない今のうちに苦手を克服しておこうかなーと思って」
「それはいいことね、アレクセ。――加減はしないわよ?」
「えー、ちょっとやる気見せてるんだから手心をくれてもいいじゃないの~」
「馬鹿ね。それじゃ訓練にならないでしょ? 大体、あなたが私のことを苦手なのだって、獲物が槍の癖に動きが無駄に大雑把だからであって、槍っていうのはそもそも素早さと手数が、」
「ああ、もう分かったよぅ! ここにいるのはサカラのお説教を聞くためじゃないんだからっ。サカラの方こそ、ちゃんと真面目に訓練やる気があるの? それとも私に説教したいだけ?」
「――なっ!? ……いいですよ、アレクセ。あなたがそこまで真剣に訓練をしてくれる気になっていたとは思いませんでした」
「……ミスった?」
「いいえ? これで“正解”ですよ――?」
「っ!?」
「……チッ」
「舌打った! というより今本気で殺りにきてなかった、部長!?」
「そうじゃないと訓練にならないでしょう?」
「でもそこまで本気になるようなことでも、」
「そうさせたのはあなたです、アレクセ――」
「ちゃわ!?」
「相変わらず逃げが大雑把過ぎ、だから」
「――の゛!?」
「こうして軽々と一撃を喰らう。いつもお姉様に言われているでしょう?」
「げほっ、ごほっ、ごほっ!! ぞ、ぞう言うのはお姉様とスヘミア様、ラライ様くらいで……」
「つまりはまだ甘い、ということですね? ――いい機会です、アレクセ。お姉様の手を煩わせるまでもありません、私があなたの悪癖を徹底的に矯正してあげます」
「余計な世話、」
「っと」
「避けた!?」
「その程度の不意打ち、まだまだ甘……」
「なんちゃ――ていっ!!!!」
「っ!!!!」
「あ、ははっ、甘いのはどっちだって、」
「――そっちでしょう、アレクセ?」
「ふんっ、なんの。――いつまでも“部長”だからって一番だと思ってちゃ痛い目見るんだからっ! 今日こそ引きずり落としてあげるっ!」
「まだまだ――あなたには負けませんっ!!」
◇◆◇
「……はー、あいつらがんばってるなぁ」
「私たちの目がなくとも鍛錬を怠らない。よいことです」
「……ちなみに俺らがこうして覗き見してるのとかは断じていいことじゃないと感じるのは俺だけか?」
「悪いのは全て旦那様でございます」
「館に帰る前にちょっと様子見しようって言い出したのはお前の方だよね!?」
はー