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After-1. ・・・締まらない最後

レム君ふるぼっこ……は、当然の帰結として。

さらさらと、さらさらと。


立理の男神チートクライの身体だった男の姿が淡く輝く翡翠の砂となって消えていく。




「……あるじ、様?」




呆然と立ち尽くすのは一人の少女。


地面まで届く長い髪を垂らしたその翡翠色の少女は信じられないものを見るように、目の前の男の姿が消えた空間を見つめていた。




その少女の後方では、何だか一人の男が複数の少女達(美女・幼女含む)にもみくちゃにされていたがそれも気になりはしなかった。


『おまっ、ちょ、やめっ、ぶげ!? ふごっ!? っっっ!!!!』とか言う悲鳴めいたものが聞こえた気もするが、それはむしろ何処か清々しい気分になれたので敢えて無視した。




「我が主が、負け……?」


「そうですよ、【冥了みょうりょう】」


「――っっ!!」




少女、冥了は眼を見開いて背後を振りかえる。


そこには良く見知った、だがこれでまだ二度目の出会いとなる緑色の妖精エルフの姿があった。




「――【記外きがい】」


「……良い表情をする様になりましたね、冥了。それと私の事はリーゼロッテと呼んで下さい。まあ、記外でも間違いではないのですが、私個人の感傷の問題です」


「何の用だ、この裏切り者がっ」


「裏切り? 私としてはそんなつもりは全然ないんですが……どちらかと言えば完全な裏切り者は【点睛てんせい】の方でしょう?」


「お前も点睛も、どちらも変わりない。この裏切り者の恥さらしめ」


「酷い言われようです。ですが同時に嬉しくもありますね?」


「嬉しい? 何が嬉しいだと?」


「あなたのその怒り様がですよ、冥了。人形としてではなく、一つの存在としてあなたが今感じている“怒り”、かつての――そして今もなお同じ同胞としてそれが嬉しいと言っているんです」


「お前と同胞? ふざけるな、反吐が出る。それに、私は人形――あのお方の人形だだ。“怒り”などという感情は持ち合わせていない」


「ふふっ」


「――何が可笑しい」


「今のあなたを見て今の言葉に同意するモノは誰もいないと思っただけですよ」


「……戯言を」


「認めなさい。そういうあなた自身が一番理解しているでしょう?」


「――」


「睨んでも駄目ですよ?」




「そうだね、私もそう思うよ? それとリーゼロッテ、酷くない?」




更にもう一人、何処かすっきりとした様子の緑の少女――幼女にも見えるが単に成長して無いだけである――がにこやかに二人へと話しかける。




「――【点睛てんせい】」


「酷くないでしょう、スヘミア? 私たちの主に対して、あなたが裏切り者と言うのは間違いないでしょう?」


「べー、だっ。私のご主人……だっ、旦那様はレム様だけだもーんっ」




べー、と文字通り舌を出して拗ねたような表情を浮かべるスヘミア。若干、頬に赤味が差しているのは愛嬌と言うものだろう。


それを受けたリーゼロッテは、『あら、まあ』と言う感じに微笑むだけ。笑顔のまま――リーゼロッテの漏らした『あんなロリコンの何処が良いんですか?』と言う呟きは黙殺された。




ただ、一人だけ。




「……点睛、それに記外も。お前たち、良くものうのうと私の前に現れる事が出来たな」




殺意が場に拡散する。


地の底に響き渡るように、深く重い声だった。




「ふぅん、冥了。チートクライはあんな素直に消えたっていうのに、あなたはその後を濁すような真似をする気なんだ」


「点睛ッ――の器如きが、」


「そう言って『如き』に私たち使徒は一度全員殺されてるのを忘れたの、冥了?」


「……だとしても。点睛の器に後れを取る程私は落ちぶれていない。第一あの男は例外中の例外だ」




「なら。記外わたし点睛スヘミアの二人掛かりならどうでしょう」




「リーゼロッテっ」


「……記外」


「無意味な抵抗は止めて置きなさい、冥了」


「――……無意味はどうかは私が決める」




冥了の姿が大気へと霞んで消えていく……かに見えた一瞬ののち、冥了の姿は再びはっきりと浮き上がった。




「何度繰り返そうとも先程と同じことです、冥了。空間そのものを隔離できる記外わたしと空間へと拡散する事が出来る冥了あなた、私たちは相性が飛びきりに悪いことなど、初めから分かっている事でしょう」


「記外、お前何処までも……」


「それと。私の事はリーゼロッテと呼んで下さい、冥了。その方が何となくですが馴染みます」


「……ああ、その通りだな。裏切り者のお前たちなど、最早【記外】と【点睛】などではない。ただの妖精と小人に過ぎないっ」


「まあ、私はそれでもいいですけどね?」


「うん、わたしも、まあ使徒とか別に興味ないし」




リーゼロッテの困ったような苦笑に、スヘミアも便乗してそう答えた。




「――お前たちは殺す。我が主に代わって、絶対にだ」


「何を言うかと思えば。それにどちらかと言えば絶対に許さないのは私の方だよ、冥了。あなたはサジリカお姉ちゃんの仇だって、忘れてないんだから」


「まあ、スヘミア。少し落ち着いて下さい。それに冥了、何をしても無駄ですよ。既に捕まっているのが分かりませんか?」


「分かっているさ、記外。“この私”は諦めよう」


「ッ、まさ――」




瞬間。


冥了が翡翠色の輝きを放ち、そのまま爆発、






「――鎮静の魔法その一、クリアランス!」




するかに見えたほぼ同時に声が響き渡った。そして――“何も起きない”。


翡翠の輝きを放った冥了の姿は、無念とばかりに薄らいでいき、後には何も残らなかった。




「魔法少女プリティ・リューン。いけない子は許しませんっ!」


「プ・リ・ティ! プ・リ・ティ! きゃー、プリティ・リューン、恰好良いのですっ!!!!!」


「……照れ照れ」




そしてポーズを決める魔法少女プリティ・リューンと、野次馬な紅い幼女一名。




―― compleate.≪完了≫




最後に。


どこか機械的な音が鳴り響いて、そうして周りは何事もなかったように静寂を取り戻した。




……この幼女誰か止めろと言いたいところだが、残念なことにレムとくすんだ銀髪のメイドが身動きが取れない――レムは何故か周囲に集まった女性たちにぼこられて気絶中で、メイドはそのレムに膝枕をしている最中――現在、最強はこの二人の幼女で間違いないので誰も止める者はいなかった。





◇◆◇






「……もう危険はなさそうですね」




何処か遠い目をしてリーゼロッテは呟きを漏らし――『最後の最後で何と言うか、冥了も可哀想に……』なんて同情心は誰にも聞かれることはなく。


指を一度、パチンと鳴らした。






――街が、そしてそこに住んでいた人々が何事もなかったように出現する。


だが何と言う事は無い。使徒【記外】の力を使って街自体と彼ら住民を一時的に異空間に隔離していただけなのだから。本当に本当に、リーゼロッテにとってこの程度は大した苦労もない事で。




何とか無事に事が終わりを告げたことに、リーゼロッテは安堵の息を深く吐いた。




後、1,2回くらいで神狩り編は終わると思います。

あとは、まあちょっとしたオチ付けと、レム君を酷い目にあわせてお終い、かな?

あ、いや、別にレムを酷い目に会わせる必要はない……のかな?


終われば元通りのんびり更新していきたいと思ってます。

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