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OP-26-落胆

あるいみすべてがおわた。

「……これ以上争いを続ける気ならあなた達にはオネンネしてもらう!」




力強く杖……っぽい何かを差し向ける『魔法少女プリティ・リューン』に対して、それを見つめる男二人の視線は実に冷ややかなモノだった。




「おねんねって……」


「と言うよりこの茶番は何だ? またお前の差し金か?」


「いや、違う。つかテメェの方が何かトチ狂ったんじゃねえのかよ?」


「少なくとも俺の知る範囲ではないな。本当にお前の差し金ではないのか?」


「しつこいぞ。あんなの、俺は知らん」


「……と、言う事は――」


「残るのは――」




男二人の視線が同時に……何やら興奮中っぽいシャトゥルヌーメへと向けられる。




「くっ、我も負けられないのッ。だが、ぷりてぃ・りゅーん! 今の“登場シーン”と“キメゼリフ”は見事と言っておこう!」


「あ♪ ありがとうございます、シャトゥルヌーメ様!」


「それにっ、それにそのふりふりの服にリボンは羨ましいのっ、我もっ、我もそんな装備が欲しいのですっ」


「あ、はい。シャトゥルヌーメ様の望みとあらば……――ヴァーミュ?」




――Yea, my mum, ......Ignition!≪はい、かあさま・・・着火!≫




何処からともなく鳴り響く、何処か機械的な声――それと同時にプリティ・リューンの手の中の杖が白光を放ち出す。




「シャトゥルヌーメ様、私に続けてセリフを言って下さい」


「台詞?」


「……“――右手に燃えるは紅き炎”」


「み、右手に燃えるは紅き炎?」


「“左手に萌えるは情熱の朱”」


「左手に萌えるは情熱の朱っ」


「“真っ赤な闘志をこの胸に”」


「真っ赤な闘志をこの胸にッ!」


「“爆誕”」


「――爆誕ッ!」




――瞬間、シャトゥルヌーメの身体が目も開けられない程に強い紅の輝きを放った。


同時に天高く舞い上がる炎の濁流。幾重にも重なり合い、猛々しいソレは正に天上の業火と呼ぶに相応しいものであり。


その炎の濁流の中から腕が……まだ小さな腕が一本、生えた。




「真っ赤なお胸に正義を抱き……」




次いでもう一本の腕、そして両足が炎の中から現れる。


残る炎――身体に残るだけとなったソレは、まるで縮こまっていくかのように収束していき、それが最終的にヒトの形になろうかという間際、爆発した。




「――我、今正に新生せり!」




そこにいたのは真っ赤なワンピースに身を包んだシャトゥルヌーメの姿。……まあ全く変化がなかった。




「……うむ?」


「ヴァーミュ? ……え、失敗した? そもそもわたし以外に“変身”は無理?」


「そんな御無体なのですっ!?」


「……ごめんなさい」


「うぅぅぅぅ、憎さ余って喜び一入です!」






「「――やっぱり女神アレの知り合いか」」




眺めていた男二人は、やはり同時に嘆息し……それから何も見なかった事にして互いに視線を戻した。




「さて、と。何か変な邪魔は入ったみたいだが、気にせずこっちは再開といこうか」


「そうだな。折角お前が本気でいるこの機会、存分に堪能させてもらうとしよう」


「別に堪能は必要ねえよ。テメェが速攻で黙れば、それで全部が解決だ」


「俺がいなければ全てが解決? それは本気で言っているのか?」


「――少なくとも、余計な手間はなくなる。それで十分だ」


「……そうか。お前がそういうのなら、恐らくそうなのだろうな」


「ああ。つーわけで、今度こそ――完膚なきまでに潰してやるよ」


「先程は危うく王手チェックメイトを喰らいそうになっていなかったか?」


「テメェを罠にはめるためのワザとだよ。まあ、直前で邪魔が入ったけどな」


「ほぅ、そうかそうか。お前の言動が確かなら救われたのは俺の方と言うことかな?」


「そういうことだ」


「まあ、それも今のセリフがブラフでなければの話だがな」


「――そういうのはもう一度テメェの事を叩き潰す事で証明してやるよ」


「それは楽しみなことだ」


「ああ、じゃあ――」




互いが互いに、構えとも言えない構えを取って今まさに一触即発な間際。




「――浄化の魔法その一、ホーリーブレス!」




何処かで聞き覚えがある筈がどうしても思い出せない――プリティ・リューンの一声に二人は動きを止められた。




雪の様な、小さな白光の塊が空から舞い降りてくる。その光景は別段神々しい訳ではない、ただ――不思議な光景だった。


『雪を降らせる』ただそれだけの事象ならば魔法であれ魔術であれ、簡単なこと。だからこそ魔法でない――一切魔力を使っていない眼前の光景は、一瞬とは言え目を奪われるのには十分すぎる程不思議な光景だったに違いない。




その一瞬の隙が二人――レムとチートクライにとっては致命的な……とはいっても命に別条は無いのだが、決定的なモノとなる。


二人の身体に触れた白光は溶けるようにその体内へと消えて行き、白光が触れた部分がほのかに光を放つ。




「――な、クッ!?」


「これは……何だ?」




最初に苦悩の声を上げたのはレムの方。




「チッ、何だこの……あ~、何だか力抜けるぅぅ~~」




途中から脱力した――“いつもの”レムの様な声と表情に変わっていき、本人はそのまま地面に座り込んでしまった。




続けて――チートクライにも変化が訪れる。





「魔法――いや、そもそも【この世界の力】ではないのか、これは? ……それにしても何だ、この心が落ち着く感じは――いや、違う、俺の知識欲が収まってきているのか、これは?」




難しい事を言っているようだが、その表情からは張り詰めたモノが消えて行き、やはりレムと同様に力なく、地面へと座り込んでいた。





「……あー、つかもうどうでもいいや。そもそも何で俺がこんな面倒くさいことしなきゃいけないんだよ。俺はただ単に女の子たちに囲まれてきゃっきゃうふふしていられればそれで良いんだよ。はー、さっきまでの俺、一体何をそんなに頑張ってたんだろうなー? ばっかじゃねえの」


「久し振りに、実に久し振りに穏やかな気分だ。満足とも違う、物足りないとも違う……ふふ、中々心地よい気分だな、この無気力感は。世界の真理や未だ俺の知らぬこと――その全てがいまではどうでもいい事の様に思える。今考えれば俺は何をそんなに知りたがっていたのか。……直前の俺は理解できない程に愚かだな」






――Purification, compleate.≪浄化、完了≫




何処からともなく鳴り響く機械的な声とともに、雪のように降り注いでいた白光が振り止んだ。






「――悪い子達には天罰ですっ♪」




左右の腕をクロスさせて、片手でビシッと相手を指さす――何か良く分からない決めポーズをして、プリティ・リューンは満足そうに微笑みを浮かべる。


シャトゥルヌーメは若干羨ましそうな表情を浮かべながらも、その目に輝くのは好奇と尊敬の光。




何か、色々なモノが終わってしまった瞬間である。




シャトゥに魔法少女の適正なし。


……と言うかシリアスな流れのはずの話が何故にここまで暴走しているのだろうか?

ふしっぎー。



あと、そろそろメイドさん出します。

……この状況でメイドさんをどうしろと? と言う感じは否めませんが。

あ、ちなみに魔法少女メイド? とかは断じてないので。

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