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OP-23-三つ巴-

……久し振りっす


険悪な睨みあい――もとい、野郎三人の間に沈黙が降りたのはほんの一時の事だった。




「……そうだな。先ずはチートクライ、テメェを黙らせる。俺の邪魔をするっていうのならクゥワド・チューエ、お前もだ」


「邪魔? 邪魔なのは貴様たちの方だ。目障りを通り越して不快だ。俺の――いや、シャトゥルヌーメの前から永遠に消えろ」


「おい、お前達。共倒れになるのは結構だが、精々俺に有益な倒れ方をしてくれないか?」


「有益? 何ほざいてるんだ? 倒れるのはお前であって俺じゃない」


「ふん、そんな分かり切った事を口にしなければ駄目な程に怯えていると見える。レム――と言ったな? 俺のシャトゥルヌーメに多少懐かれているからと言って余り調子になるな、貴様程度、底が知れる」


「そんな事を言っていていいのか? ヒトの心配をする暇があったら自分の心配をしたらどうだ、『静鎮』。この中で一番弱いのは間違いなくお前だぞ?」


「そういうテメェの方こそ他人の心配してるひまがあるとでも思ってるのか、チートクライ。今すぐその澄ました顔をぶち抜いてやろうか?」


「どいつもこいつも、弱い犬ほどよく吠えるとはまさにこのことだな」


「ああ、それは全くの同意見だ、『静鎮』」


「そうだな、弱い犬ほど良く吠える。テメェら二人ともさっきからキャンキャンとうるさいしな」


「何を勘違いしているのか知らないが先程から一番吠えているのは貴様だ、レムとやら。己の程度を知れ。そしてシャトゥルヌーメに永遠に関わるな」


「コレは忠告だが、程度を知れ、と言うのはそのまま自分に当てはめた方が賢明と思うぞ、『静鎮』」


「そっくりそのまま、その言葉をテメェにも当てはめてやるよ、チートクライ」


「雑魚同志の言い合いは醜いな、聞くに堪えん」


「……それもそうだな。この様な言い合いなど無意味、時間の浪費か」


「――宣言しといてやる。テメェら……特にチートクライ、テメェの存在自体が存在の浪費だ」


「存在の浪費か、面白い事を言う。害虫如きが自分たちの事を言っていて楽しいのか? 俺には到底理解できんモノだな、それは」


「ああ、それは俺も同意見だな。この男がどう言う理由で以てハーレムなどと言う夢物語を掲げているのか、流石の俺にも到底理解できそうにない」


「――お前ら、男じゃないな? ハーレムって言ったら全世界共通の男の夢だろうがッ、それを掲げているのが理解できない? ハッ、テメェら如きへたれには理解できないかっ」


「「――!!??」」


「可哀想になッ!」


「……何だ、今のは途方もない殺意を覚えたぞ?」


「面白い。実に面白いな。今の言葉の何処に俺がこれだけ苛立つ理由があった? 不思議だ、実に不思議だが、だからこそ興味深いッ、くくくっ」


「俺の夢を小馬鹿にしていいのは、――俺の女達だけなんだよ」






「――れむっ、浮気は許すのっ!!」




……取り敢えず今のは完全スルーで。






レム、クゥワ、チートクライの順に。互いが互いを睨みあう三つ巴の関係――。


シャトゥはと言えば最早観戦気分なのか、瞳をキラキラさせながら三人……主にレムの事を見つめていた。『レムが遂に私の為に――っ!』とか何とかほざいているが、引き続いて当然無視である。




「てか、いつまでもこうしてても時間の無駄だしな。取り合えず一番目障りな――逝っとけ、チートクライ」




三人の中で最初に動いたのはレム。ため息交じりに伸ばした腕をチートクライへと向けて、手慣れた様子で陣を描いた。


紅で描かれた魔法陣が一秒もせずに完成し、それより早く残りの二人も動きを見せていた。




【――蒼宮にとざせ、蒼ノ世界】


不出来な空を見上げ、殺意を零すクゥワド・チューエ。




してならえ】


チートクライが囁いた一言で世界が停まった。


紅の輝きと蒼の世界、その双方を飲み尽くす。




「確かに。それは俺も同意見だ。ただ座すなど時間の無駄でしかない。ならばそろそろ始めようか」




赤の輝きを飲み干した緑が紫へと染まる。


蒼の世界を奪い尽くした緑がより深く、深緑へと落ちる。




三色は互いに混じり合い、飲み干し飲み尽くされ――そしてソレは原色、【混沌】へと還る。




「――チッ」


「な、」


「ちょうどいい、お前達、存分に力を使ってもらおうか」


「チートクライ、テメェ……!」


「な、何だコレは……力が引き出さ、っっ」




一時、輝きを失いかけた紅の魔法陣は再び命を取り戻したように真っ赤に染まる。だが染まった傍からその輝きは緑へと喰われて消えていった。


世界が蒼く、それでもなお蒼く染まる。蒼は世界の法となし秩序を作り、それ以外を排そうと鮮やかに輝きを放ち――ことごとくを緑が喰い尽くす。




赤も青も、世界の全てを喰い尽くして緑が蹂躙する。


その中でチートクライは悠然と、暇つぶしとばかりに語りを始めた。




「ここで一つ、無知なモノに講釈をしよう。無知とは罪だ、故に知ると良い」


「ちっ、く……」


「な、――ぎ、」


「混沌から生まれたソレは自らを切り分けて世界を作った。コレは俺が実際に見てきた事実だ。ならば世界から作った混沌はどのようなものになるか、それを俺は知りたくなった。だから試してみよう、そう考えるのは当然の事だろう?」


「ぅ、ぐ……」


「がっ、ぁ……!」


「混沌から生まれるのが世界ならば世界から生まれる混沌は一体何だ? それは元の混沌と同じであり世界を滅ぼす災厄か? それとも元の混とんとは全く別の世界の“子”とも言うべきモノになるのか? お前たちはどちらだと思う?」


「――チートクライ、テメェ……」




苦悶の表情を浮かべながらレムがチートクライを睨みつけ――その瞬間、横手からの絶叫が響き渡った。




「あ、が、あああああああああああああ!!??」




両目を大きく見開いて、蒼い空に向けて絶叫を上げたクゥワは直後に力なく地面へと崩れ落ち、それと同時に蒼に染まっていた世界は完全に緑に喰い尽くされて呆気なく潰えた。


倒れたクゥワへと詰まらなそうに一瞥を向けるチートクライ。




「……何だ、『静鎮』はもう限界か? 想像よりもはるかに情けないな。――それとは別にお前の方はそんな演技で俺が隙を見せるとでも思っているのか?」


「――一応期待はしてみたが無駄みたいだな」


「全くだ。その程度で俺を騙そうなど何千周期経とうと無理な話だ」


「そうかよ、そいつは悪かったな」




レムの目の前で紅の法陣が完全に緑に侵され、崩壊する。“代わり”に浮かんできたのは全く同じ、翡翠の輝きを放つ魔法陣。




「テメェが何企んでるかなんて、初めから知る気は無いが――」


「思考の放棄は愚か者のすることだぞ?」


「放棄、いや違うな。テメェの実験たくらみは全て俺が潰す――そこに一々考える余地は無いって言ってるんだよ、俺は」


「――そうか。やはり最大のイレギュラーは常に俺の障害として立ちはだかると言うことか。その通りだ、思い通りにならない、だからこそ面白いっ」


「勝手に面白がってろ。――テメェは今ここで、誰も邪魔も入らないうちに確実に潰しておく。もうさっきみたいな加減は無しだ」


「そうかっ、ようやく本気を見せるか。……ならば俺も本気を出さない訳にはいかないのだろうな」


「いや? テメェは本気を出す必要はないぜ? その間に俺がきれいに片してやる、安心しとけ」


「それは遠慮しておこうか。なに、今が最も楽しい時なのだ、それをみすみす逃すなど、俺の探究心が許すはずがないだろう。――さあ、世界を掛けた潰し合いとやらでもやってみるか?」


「――無い。最初に言った通り、潰れるのはテメェ一人だ、チートクライ」


「面白いっ、それに先程得られた【混沌】から取り戻した俺の力、試して請わぬ相手にはちょうどいい。いいだろう、では相手になろう」


「勝手に、もう一度俺に殺されるまでそうほざいてろ」


「それが叶うかどうかはお前次第だ。では、再び神殺しを試みるとよい――【異界の堕とし子】」




だめですね、これ。真面目なレムとか、レムじゃない、断じてない!


あと……未だ三回、かなぁ? 予想以上に話が進まなかったので、メイドさん、可能な限り早くカムバック、です。

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