OP-22
・・・だめだ、短っ
そして『私の為に争って! シャトゥ争奪戦』?
……それは違うと思います。
地面に倒れていたアルーシアに駆け寄っていくレムと、位置的にレムを待ち構える形になったシャトゥ&クゥワ。
二人には一切の注意を払わず、ただアルーシアに駆け寄って、レムが最初に行ったのは当然アルーシアの安否を確認する事だった。
「大丈夫か、アルーシ、」
「だめ、もう死んでるよ」
「そうか、それは残念だったな」
絶妙なタイミングで挟まれたシャトゥとクゥワの一声に、レムは初めて二人へと視線を一瞥させた。
「――次言ったら擂り潰す。二度目は無いと頭の中に刻み込め、テメェら」
「「――」」
空気が凍る。
クゥワは顔を引き攣らせたまま固まっていて、シャトゥは何故か頬を上気させていた――その光景をレムは即座に記憶から抹消した。
抱き起しながらすぐさま確認したアルーシアの身体には“何処にも異常は無く健康体そのもの”、気を失っているだけらしいと分かりほっと一息つく。
一瞬、それはほんの僅かな刹那だが確かに存在した瞬間――その時を見計らって“緑”は声高らかに宣言した。
「では主演も揃ったことだ。余興は終いにしよう」
レム、シャトゥ、クゥワ、その誰もが身構える暇もなく。チートクライが無造作に手を横に薙いだ、次の瞬間、在ったはずの街が消滅する。
跡地には何もない。街の瓦礫も、ヒトの死体も、レムとシャトゥとクゥワ、そしてアルーシア以外は生きとし生けるものの息吹の欠片さえもなく、ただ更地が広がっていくだけだった。
「――“ちーと、くらいっ”!」
シャトゥが頬を真っ赤に染めて睨みつける。次いで、シャトゥをかばう様にクゥワがシャトゥとチートクライの間に入った。
レムは抱きかかえていたアルーシアをゆっくりと地面に下ろし、改めてチートクライへと視線を向ける。
「もう一人のシャトゥルヌーメ、お前は怒っているのか?」
「当然です!」
「――俺のシャトゥルヌーメに手を出すのなら、俺が相手だ」
「……クゥワトロビェ、いや、『静鎮』と言うのだったか? ――今のお前に興味は無い。どうだ、すぐに失せれば命が助かるかもしれないぞ?」
「……誰かは分からんが、俺を舐めるのも大概にしろよ」
「舐めているのはお前の方だ、『静鎮』。俺に挑むのならばせめて俺の事を思い出してからにしろ。でなければ興に乗りもしない」
「――なんだと、」
半歩、踏み出したかけたクゥワに掛かったのは横手からの冷たい静止の声。
「止めておけ、クゥワド・チューエ。お前の敵う相手じゃねえよ、つか何で起きてるんだ、お前?」
「……何だ、もう一度言ってみろ、お前」
「あん? 何で二度も同じこと言わなきゃいけねえんだよ。負け犬の大将はさっさと引っこんでろ」
「――」
「何だ、もしかしてまた俺に“子守唄”でも歌って寝かしつけてほしいのか?」
「……言わせておけば」
「言われたくないってんなら黙らせてみろ、この色男」
「――貴様」
一瞬で、レムとクゥワの間にも険悪な雰囲気が広がった。
「おい、そこの二人。勝手に盛り上がられても詰まらん。面白そうな事には俺も混ぜるのが道理だろう」
「「――あ?」」
そうして。
男三人の間に最悪な雰囲気が出来上がった。
最後に残された――シャトゥ一人。
「これは……私の為に争って?」
――それは色々と違う。
んー、あと三回くらい?
めいどさんかつやくまで。