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OP-20-燎原-

……だめだ、戦いとかその辺りが思いつきません!?


「≪全てを欺くモノ≫」


――理の第一則




「≪全てを断ずるモノ≫」


――法の第零案




「≪そしてわたしたちの起源≫」


――世界に愛蒔く女神の祝福




世界を構成する要素の全てがその直前に存在した。




「汝ら、全ての絶望を捨てよ」


――わたしの手に在る始原の炎を扱う事を許したまえ






炎が、真っ赤な炎がアルーシアの指先に小さく、ぽつりと灯った。


その瞬間、アルーシアの顔が苦痛に歪む。




「っ、」


『さ、流石に【燎原わたし】の身体じゃないと、アルーシアにコレはキツ』


「だ、大丈夫だよ、リョーンさん。この位、わたし――」


『――アルーシア、信じますよ?』


「ぅ、ぅん、信じて」


『はい。では……――いきますっ』


「っ、は――」






『≪素は燎原の火の如し総てを滅ぼし尽くす終焉の業火、祖は私の名を呼べ。私は須らく塗り替えるモノ――Wildfire≫』


――全てはあのヒトの願うがままに






アルーシアの手から離れた小さな赤い灯火がゆらりゆらりと宙を舞いながら、微風に流されるように漂い……ちょい、とステイルサイトの身体に触れた。




――ゴウ、と灯火が一瞬でステイルサイトの全身に燃え広がる。


それはステイルサイトが驚きの声を上げる間もない程に一瞬のコトだった。




「ゃあ!?」




苦痛の声を上げるのは全身が燃え盛るステイルサイトではなく、そうしたはずのアルーシアの方。


膝をついて身体を両腕で抱き込んで、その時のアルーシアは今まで以上に苦痛に顔を歪ませたうえ両目に涙を溜めた酷いモノだったが、――それでもその赤い瞳だけは輝きを失わず、ただ真っ直ぐと前を――ステイルサイトを見抜いていた。




「っ、ゃ、くっ――」


「――」




一方でステイルサイトは――自分が燃えていると言うにも関わらず一切表情を変えず、アルーシアの事を見つめ返していた。


いや、正確には『唖然とした様子で惚けていた』と表すのが正しい。焦点の合わない瞳でアルーシアのいる方角を眺めていたのだから。



『――命じる、焼け』


「ぁ、あああああああああああああああああああ!!!!???」




絶叫としか言いようのない声で、アルーシアは叫ぶ。


力の発露――その能力が発現したのは刹那の間にも満たないほんの一瞬の出来事だったが、本人(アルーシアにして見ればそれは酷く酷く長い時間だった。






そうして。彼女りょうげんの願いは世界に届く。






ステイルサイトが力なく地面へと倒れ込み――だが彼の身体が在ったその部分、まるで人型にくりぬいたその空間だけが尚も激しく燃え続けていた。




同様にしてアルーシアも力尽き、地面へと伏した。


眼の光だけは依然として真っ直ぐにステイルサイトへと向けられたままだったが、それ以外の部分は僅かに痙攣を繰り返しながら全く、彼女の身体は見た目は無傷のまま中で完全に“壊れ切って”いた。




「りょ、りょーんさん、うごか……な、ぃ」


『これがあのヒトの感じていた、痛み……』


「ぅ、ぅん」


『アルーシア、無理はしないで下さい。今は無理せず動かずに』


「ぃ……、ぅ」


『大丈夫。彼女ならばこの程度の傷、治せるはずですからそれまで頑張って、』


「おに、いちゃ……は、?」


『無事です。上手く行きましたから。だから安心して下さい』


「そ、か……ならよかっ」




アルーシアの瞳から意志と言う名の光が消え薄れて行く。


焦点の合っていない瞳が倒れ込んだまま動かないステイルサイトへと向けられていて、




『……だからこそ、少し拙いんですけどね』






◇◆◇




――だからお前たちは甘いというのだ




地面に倒れ込んだ二人に、未だ燃え続けている人型の空間。その空間が声を発したとしか言いようのない、それは奇妙な光景だった。




――冥了、俺の肉体を用意しろ




『はい、我が主』




翡翠の少女が両腕で何かを抱きかかえるような姿で出現する。次いで、彼女の腕の中で一人の青年が抱きかかえられていた。




それは緑の髪と緑の瞳をした、身体を【使徒】で構成した人ならざるヒトの姿。




「その男ごと俺を焼き払えばよかったモノを。それをこんな事に力を使うからこうなる、燎原」




男の言葉に応えるものは誰もいない。ステイルサイト、そしてアルーシアも焦点の合わない瞳をして力なく地面に伏しているだけだった。




「まあ、その程度は見越していた訳だが――コレはこれで想定内過ぎて詰まらん。余り俺を退屈させるなよ?」




男は自分を抱きかかえていた少女を無造作に薙ぎ払った。と、ほぼ同時に地面に倒れ込んだ翡翠の少女を蹴り飛ばす。


地面を転がっていく少女は、一度、二度、三度と地面を跳ね上がり、四度目――と言う所で追いついて来た男に頭を踏みつけられて、ようやくその場に止まった。




――何の感慨もなく、男が翡翠の少女の頭を踏み砕く。


少女から飛び散るのは赤い肉片、血ではなく。翡翠色の粒子の輝き。頭を失くした少女の身体は、頭同様にさらさらと翡翠の霧となって霧散した。




「……悪くは無い身体だな」


『ありがとうございます、我が主』


「だが、予想値を上回る事は無いか。――我ながら詰まらん身体だ」


『申し訳御座、』


「黙れ。お前に何かを言っているわけではない、冥了」


『――ハッ』


「次――……ではそろそろあの男の相手でもするとしよう」








◇◆◇




一方その頃――




「ここ、どこなのです?」




紅い幼女が迷子になっていた。



基本的に自爆が多いなぁ、今回。

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