OP-14-リーゼロッテ……?
真面目な雰囲気とか、それなんですか?
周囲に人の気配はない。ただその周りに二人、紅蓮の剣士と緑の魔女が転がっているだけ。周囲は街中だと言うにもかかわらず、異様なまでの静けさを保っていた。
緑の妖精と緑の人形は見つめ合ったまま動かない。
互いに何の表情も浮かべず、周りで何があろうとただ佇み見つめ合っているだけ。もうどれほどの時間そうしていたか。
「――おや?」
緑の妖精は、不意に見つめ合っていた視線を逸らして、彼方を眺めた。
緑の人形は動かず、視線を逸らさないまま。
赤い雪が空からぱらぱらと降り注ぐ――
「所でいつまで見つめ合っているつもりでしょうか、冥了」
「……」
「私もいつまでもこうしていても暇なんですが?」
「――何を考えている、記外」
「今日のアルちゃんはちょっとご機嫌。考えているのはそんな事ですけど?」
「……」
「別に大したことなんて考えてませんよ? それに私を許さないのではないのですか、冥了?」
「――それもそうだな。何を企んでいるかは知らないが、早々に片づければ済むことか」
「いや、別に企むなんて大層な事はしてないですけどね?」
「……」
「所で本当にいつまで見つめ合ってるつもりです? 私、もう飽きてきました」
「……」
「私を片づけるのではないのですか、冥了?」
「……そうだ」
「では点睛や灼眼、冰頂の様に早く私を片づけに掛かってはどうなんですか?」
「……」
「まただんまりですか? ウンザリなんですが……」
「……」
「では。来ないのならもう私から往きますね、“冥了の涙”――貴女の方こそ、使徒の出来そこないではないですか」
「戯ご、」
緑の世界が全てを覆う。
ついで、緑の人形が“解けた”。後に残ったのは緑の妖精ただ一人。
「――まあ、もう少し自分の立場を分かってはどうですか、冥了?」
それに応える声は無い。
ころんっ、と緑の妖精の足元に翡翠色の玉が転がっただけ。
「本来『使徒』の力は『最強』を除いて皆同じではありますが、それでも私は自分の領域で戦って他の子に負けるつもりは微塵もないですよ?」
――緑の世界がひび割れ、壊れる。
“元の”世界に戻ってきたが、そこにもやはり人の気配は、全くない。
本来ならば人であふれているだろう時間帯、街中で、やはり誰もいない。
緑の妖精は、詰まらなそうに足元に転がった翡翠色の玉を軽く蹴り飛ばして。それから屈み込むと“誰か”に話しかけるように、語りかけた。
「貴女の役目はまだ色々とあるのでしょう? しばらくそこで頭を冷やして置いて下さい」
その言葉に応える元は当然おらず、元より緑の妖精はその答えを期待してはいなかった。
そうして。
――空気が一変した。……ぴんくいろ的な何かに。
「では、私は……――アルちゃんと戯れてましょう!!」
キランッ、と緑の妖精の瞳がある意味で不気味な輝きを放ち、周囲の獲物(?)を求めて視線が彷徨う。そこに先程までの雰囲気は欠片も残ってはいない。
「ふふふふふふ、同志ラライはお眠りの最中。元同志レムは我が主の相手の最中、他の邪魔者は何処かに消えたり気絶中だったり……くふふふふっ! ――さ・あ・て、アルちゃんはどこですかね~?」
そうして、女豹(?)は放たれた。