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OP-13-シャトゥルヌーメ-

シャトゥ、ノリノリです。

そして今回、シャトゥのターン。


先ずは、空に大きく片手を掲げて第一声。




「――必勝、一撃必堕!」




続けて、相手チートクライを指さし不敵に笑う。




「この一撃が、全てを決まるっ」




指で首を斬る仕草、その後で親指を下に向ける。




「……なんだ、それは?」


「世界の子等、我に力を! 我に祈りを、我に勝利の渇望を! 今こそ燃え上がれ、我のバーニング! 我の想い、魂の全てを今、この一撃に掛けるっ!!」


「長い口上だな」




目の前で手を握りしめ、何かを溜めるように、大きく片腕を後ろに引いた。




「超――――――――――――……」


「未だか? 来ないなら此方から行くぞ?」




腰に構えた拳を、強く握り締める。


――取り敢えずチートクライの言葉は全部無視の方向である。




その瞬間。


“赤”が“しゃとぅるぬーめ”の拳、その一点に集まる。




アカ”から“アカ”へ。


アカ”から“アカ”へ。


アカ”から“アカ”へ。


アカ”から“アカ”へ。




手の平の中に集められたその輝きは、拳の中に在ってなお、周囲へ漏れる余波、それだけで世界の全てを輝かせていく。




シャトゥの赤い瞳が、赫光が手の平の“赫”に呼応するように爛々と鈍色の輝きを放つ。


その表情は何処か、獲物を狙う狩人の様に鋭く細められ――




「……必堕ひつだ




僅かに俯いたシャトゥが小さく、祈り声を漏らす。


その瞬間になって、ようやくチートクライがソレに気付くが、余りに遅い。




「――む、」




動こうと、その身体はピクリとも動かない。――『技の途中に邪魔は入らない』


彼女が彼女足る所以であり、その事実に逆らう事は例え神と言う存在であろうと変わる事は無い。




「『ぶろうぃんっ/エクゼ』」




初動は。


滑るような、その動きがはっきりと分かる程のゆっくりとした『神速』でシャトゥがチートクライに接近。




“赫”の輝きを放つ右手拳を握りしめたまま、そっとチートクライの下腹部に触れ、


――ちなみにコレは身長差の都合上、単にシャトゥの手がそこまでしか届かなかったという理由であるが……まあどうでもいい。




「――世界に還るといいのです、“ちーとくらい”」




“赫”を握りしめた握り拳を――そのまま握り潰す。






瞬間。




「――がっ!?」




チートクライが地面に沈んだ。


シャトゥは普段は見せないような整然とした笑みを浮かべて、その姿を掻き消した。正確に言えば、次の瞬間シャトゥの目視が不可能になった。






沈んだままのチートクライの身体が、今度は逆に浮き上がる、かと思えた次の瞬間には、その身体は横に回転していた。


遅れて、ようやく二人の声が追いつく。




「っぐ、」


「ひとつ」




一つはチートクライの呻き声。そしてもう一つはシャトゥの、普段のシャトゥでは考えられない程に淡々とした数え声。




真横に側転の様に回転していたチートクライの身体が“く”の字に折れ曲がる。




「ふごっ!?」


「ふたつ」




“く”の字に折れ曲がったはずの身体は、また次の瞬間にはそのまま“ノ”の字に反っていた。




「!!?」


「みっつ」




大きく反ったまま、チートクライの足が払われるのと同時、頭部がそのまま地面へと叩きつけられる。




「――!!」


「よっつ」




既にチートクライに声は無く。ただシャトゥの声だけが“遅れて”聞こえてくるだけ。




地面に叩きつけられたチートクライの身体が、更にそのまま地面へと沈む。大地を割って、なおその勢いは止まらない。


そのままどこまで沈むのかと思われた、だが時間にすればほんの一瞬も掛かっていない間の出来事の中――チートクライの身体が回転した。頭を中心に、周りの地面を薙ぎ払う様に。ソレはそれこそ無茶苦茶な力による暴力だった。



「いつつ」




高速で回転させられたまま、僅かにチートクライの身体が地面を離れ――瞬間、“何か”に押し潰されるように、チートクライの身体が腹部を中心にして大きく“く”の字に折れ曲がる。




「むっつ」




だが身体が“く”の字になった――なれたのはその瞬間だけで。地面に磔にされるように四肢が打ち抜かれてその身体は再び大地へと沈む。




「ななつ」




かと思った瞬間、チートクライの身体は高く、遥か空の彼方まで投げ飛ばされていた。




「やっつ」




その時、ようやくシャトゥの姿が現れる――正確には、動きを止めたおかげで目に見えるようになった。


シャトゥは空に放り投げたチートクライを見上げ、何か言葉を発する――が、その言葉が追いつくにはまだ時間がかかる。




半身にした身体を、拳一つを大きく引いて、それを腰だめに構えて、重く、ただ思く息を吐いていく。




「ここのつ」




シャトゥの瞳が空へと登り、未だに上昇を続けているチートクライへと真っすぐに向けられる。





「私は、怒ってるの。プンすかムカムカです!」




大きく片手を引いて半身の体勢で――次に世界が認識できた時にはシャトゥは既にその拳を“振り終わって”いた。


爆発的な“赫”の光柱が空に向かって立ち上がる。




それはいつかの、くすんだ銀髪のメイドが見せた“創滅の光”に勝るとも及ぶものであり、




「――おつ




今だ収まらぬ“赫”の光柱に背を向けて、片手を大きく天に振り抜いた決めポーズ(?)のままのシャトゥに。


ようやく最後の声が追いついた。




同時に“赫”の柱が粉々に散って、その欠片が天から世界へと降り注いでいく。それはさながら赤い雪の様な光景で。




「……ぅみゅ?」




不思議そうに、少しだけ首を傾げたシャトゥはそのまま力尽き地面に倒れ込み、同時に気絶していた。




『ぶろうぃんっ/エクゼ』

シャトゥ、108の必堕(ひつだ)技の一つ。必ずオチる技、と書いて必堕技。

正式な発音は『Brilliant / Exe』。輝ける執行者。

至宝の御業みわざ。シャトゥの駄力だぢから全てを賭した一撃必堕技である。

でも十発殴るとか言う技なので、実は一撃違う。……詐欺じゃん。

ちなみにシャトゥにはまだ当分無理な最上級の必堕技なので、今回使用したのは完全バージョンじゃなかったり。


遅れてますなぁ。





むぅ

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