OP-10
レムに戻る。
・・・・・そして相も変わらず夫婦?漫才。
――冷静に、沈着に。
“彼”は何一つ怒りに身を任せてはおらず。例えそう見えたとしても冷静で、冷酷で。そして何処まで言っても自らの感情の赴くまま行動している。それは今も昔も変わりはしない――
「……ん?」
不意に。
世界に浮かび上がった紅蓮の魔法陣に“彼”は動きを止めた。紅蓮の魔法陣自体は、浮かび上がって一瞬で消えていた。
「――灼眼か?」
「……ほぅ、これは灼眼の魔術か。見事なものだな」
「……相手は――冥了あたりか?」
「さて、な。そうかもしれないが違うかもしれないぞ?」
「……ふん」
「――まあ他の事などどうでもいいではないか。今は俺の相手をしてくれるのだろう?」
「ああ、それもそうだな。テメェ如き、さっさと片づけて向こうに行くか」
「そうか。では俺の事は早々に片付けてもらおうか?」
「言われなくても」
≪Striker――撃ち貫け≫
紅蓮の一閃が、男に“突き刺さっていた”。
「――?」
「さっさとテメェを潰しておくさ」
≪我、此処在≫
続けざま、紅蓮の一閃――そうとしか表しようのない、赤の一筋が男に突き刺さっていく。
同時、蒼の法陣が周囲に渦巻いて。既に針山状態の男に、更に“蒼い法陣から出現した”紅蓮の一閃が突き刺さっていった。
それはほんの一瞬の出来事である。
真っ赤に染まった男がそこにあった。
「――ほぅ、これはこれは……」
「この程度でテメェを黙らせられるなんて思っちゃいねえよ」
「は――」
真っ赤に染まったままの男に“彼”は紫の魔法陣が浮き上がった手を向けて更に追撃の、
≪Vanis――
「見つけたー!!!!」
「……は?」
直前で、動きを止めた。
――世界が蒼に染まる。
◇◆◇
目の前は蒼の少女――スィリィ・エレファンが凄い形相で詰め寄ってきていた。
「レムっ、行くわよっ!」
「は? いや、ちょい待、というかスィリィ?」
「つべこべ言うなッ!!」
「ゃ、つべこべも何も、」
「良いから来なさいよ、それとも何!? 私と一緒に来るのが嫌なの!?」
「ゃ、嫌というか、え、何?」
「何って何よ!?」
「いや待て。待て冷静に……と言うか、え、何?」
「あぁ、もう面倒くさいっ!! ――と言うより、貴方、レムよね? ……何で髪が赤い訳?」
「ああ、コレ? コレはちょいと色々と……じゃなくて」
「そうよね、そんなこと、今はどうでもいいのよっ」
「確かに」
「さっ、そんな事よりも早く行くわよッ!」
「いや……何処に?」
「タイプー山に放って行っちゃったアイネに会いに、よ!」
「え、今更……?」
「今更よ、そうよ今の今まで忘れてたのよ悪い!?」
「悪いか悪くないかで言えば、まあ悪いな」
「……そ、そうよね。流石に私もあんな所にアイネ(と、その他一名)を放っておいてきちゃったのはいくらなんでも拙いわよね~、って思ってるわよ、うん」
「つか、よりにもよってあの山? ――死んでないか?」
「死んでないわよッ! ……な、ないわよね?」
「俺に聞かれてもなぁ……」
「……ぅ」
「あ、いや、うん! 大丈夫、きっと生きてるって!」
「……嘘付いたら許さないから」
「俺にどうしろと!?」
「…………一緒に謝ってくれない?」
「――はい?」
「アイネ、きっと怒ってると思うのよねぇ」
「ま、あんな所に放って置かれたなら、まあ生きてりゃ怒ってるだろうなぁ」
「と、言う訳だから一緒に来なさい」
「あ、成程。そゆこと?」
「そうよ、だからつべこべ言わずに来なさい。……それとも私なんかと一緒じゃ来たくないの、レム?」
「そんな涙目になられても……」
「な、泣いてないわよ。こんなことで泣く訳ないじゃないっ」
「そうね、……というかさ、スィリィ?」
「何よっ、……い、一緒に来てくれるわよね?」
「――まあ、待て、スィリィ。冷静になって、少し落ち着け」
「私は落ち着いてるわ」
「ならちょいと周りを見てみよう」
「……周り?」
不思議そうに、スィリィは周りを見回して。
「――で、漫才パート2はこれで終いか?」
クククッ、と嫌味っぽく笑いの表情を“作って”、こちらを見ている男の姿がそこにあった。
……少しは真剣になろうぜぃ?