第1話
第1話目です。
神の悪戯
第1章 新しい世界へ
第1話
青年、エル=ユークリッドは今日で18の誕生日を迎えた。この村での18歳というのは、成人、というだけでなくもう一つ大きな意味を持つ。18になると、男は村で本格的に働くか、外の世界に旅に出るかどちらかを選ぶ。ほとんどは村で働くが、エルは外の世界に旅に出る方を選んだ希少なケースだった。因みに女性は18になると結婚する人を決める。
エルの門出は、朝早くから親族、親しい者だけで行われていた。
「エル、絶対戻ってくるのよ!」
「帰ってきたら色んな話聞かせてね!」
「帰ってきたら酒を奢れよ!」
など、騒がしいなかでエルは
(あぁ、ついにこの時が来たか。)
と、寂しいような楽しみなような複雑な思いを抱えて
「皆、ありがとう!絶対帰ってくるから!」
と言って村を出た。
エルの旅の目的は、王都に行って冒険者になることだ。この王国、オルドラドはこの大陸、エルスラン大陸の中で三強と呼ばれる国の一つだ。他の2つは、ギルガ帝国、メルクリア聖王国だ。3国はニールス山脈を国境線としている。
エルは、王都の近くの村に住んでいたため、王都への憧れは特別強かった。エルが王都で冒険者をやりたい、と思うようになるのは当然といえよう。
そしてエルは今、野営をしていた。朝から何回か休憩を挟み、1日歩いてもまだ王都は見えない。まだ魔物と遭遇しないだけマシかな。などと考えていると、眠くなったので、おもむろに寝袋を出し、目を瞑った。
(今日から俺の新しい人生だな…)
そんなことを思いながらエルの意識は闇へ沈んでいった。
朝方のエルの覚醒は早い。寝袋を引っぺがし、近くの川で顔を洗う。ここら辺からエルは普段の状態に戻っていた。
「よし。」
そう言って荷物を纏め、再び歩き始めた。しばらく歩いていると、森に入った。森は人間の世界ではなく、魔物の世界だ。こう聞かされて育ったため、エルの顔は自然と引き締まっていた。警戒しつつ進んでしばらくすると犬か狼かは分からないが遠吠えらしきものが聞こえてきた。
「魔獣、か…気をつけないとな。」
そう呟きつつ森を抜けるために進むと、少し前にある大きな茂みが
「ガサガサッ」
と音を立てた。警戒を全開にし、村で修行をしていた頃から使っている愛剣を強く握った。茂みを睨んでいると、突然殺気を感じた。殺気といっても肉食獣のそれだった。
(何匹だ…?4…5、まだいるか?)
冷静に気配を察知していると、前の茂みから一匹の狼が姿を現した。狼といっても、皆が想像する大きさではない。そう、でかい。少なくとも体長は俺よりあるな。そんなことを思いながらエルはどこか楽しそうな笑みを浮かべていた。
(村では相手になるやつがいなかったからな。どれくらい通じるのか試させてもらおう!)
そんな魔物との初遭遇を果たした18歳とは思えない思考の下、エルは油断なく大狼の動きを見ていた。大狼の方も、しばらくは様子を見ていたが、堪えきれなかったのかその猛々しい足を蹴ってエルに突進してきた。そこに誰かいたのならば、その人外の速さを持った突進によりエルが為す術もなく弾かれ、殺されるのを想像しただろう。だが、エルは残念ながらそんな「常識」という枠では収まらない程の実力を持っていた。エルはその突進を右に少し移動しつつ躱し、その流れで愛剣を大狼の首に斬りつけた。その動きはまるで舞踊のそれ。人外の速度を持った大狼の突進も、エルの前では牛歩の様だった。斬りつけられた大狼は首を落とされ絶命していた。今の攻防を知ってか知らずか、隠れていた他の大狼もエルに飛びかかってきた。
(5か…さすがに多いな…。)
そんなことを思いつつもエルの頭の中はここからどうあの大狼を仕留めるか、それだけを考えていた。
「よっしゃこいやぁぁぁぁ!!!!」
己を奮い立たせるために雄叫びをあげ、エルは五匹の大狼に飛びかかっていった。
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エルが戦闘を行った場所は幸いもうすぐ森から出られる所で、森が開けた場所から返り血を浴びたエルが出てきた。
「全く、俺は森でもそこそこ強いのかな?」エルのその疑問も当然である。エルは森にこそ自分の本気と渡り合える魔物がいる、そう思っていたにも関わらず、よくよく探索してみるとさっきの大狼がナワバリのボスで、しかも一番最初に飛びかかってきた奴が森の主のようだった。あいつを殺してから森が騒がしくなった事から伺える。
(まぁ、良いか。)
だが、この男、良くも悪くも悩まない男であった。いや、それよりも目の前に広がる王都の広大さにそんなことは小さい事だ、と思ったからなのかは分からないが、とりあえずエルは目の前に広がる新しい世界への第一歩を踏み出した。
エルの初戦闘は狼でした。
もっと文才を磨かないと自分の思っている事を上手く表現できない…
次の話はエルの初王都ですね