8/47
#01
*
双子サファイアと呼ばれる宝石がある。
それは火星のオリンポス山で採れた二つのブルーサファイアのことで、大きさや色かたちがそっくりなことから、大蒼玉ポルックスと大青玉カストルと呼ばれ、世界最大の双子石として知られていた。どちらも光にかざすと星状の筋が浮かび上がるスターサファイアで、大きさは人の拳ほどあった。
二つで一つのその宝石は当然のことながら非常に貴重で、太陽系の秘宝の一つとされていた。
所有者は火星開発で大きくなったマーカム財閥の現会長エリザベス・ヤマダ・マーカムで、彼女はセキュリティの行き届いた屋敷の特殊宝物庫に秘宝を保管していた。
それなのに、である。
突然、ポルックスとカストルは消えてしまった。