#07
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【追記】
宇宙船ごと隔離していたアンモニールの処分は、地球とシリウス星系の宇宙外務省間で揉めに揉めた結果、九十日後に結論がでた。
結論は、宇宙船ユパニテ号ごとシリウス星系に送り返すというものだった(シリウス星系側は密航した場所がわからないと最後まで受け入れを拒否していたが、事細かにトイレ臭を嘆いていた航海日誌から、おおよその場所が特定された)。
私と事件協力者であるゼノンは、密航者の強制送還を見届けるため、再びナミハヤ港の管制室にいた。
結論がでる九十日の間、彼らは相も変わらず繁殖していたらしく、密閉されたユパニテ号はパンパンに膨らんでいた。
「まるで、賞味期限切れで放置していた缶詰みたいだな」
思ったことを口にするゼノンがいった。
確かにその通りだった。
だが、亡くなった乗組員たちのことを思うと、素直にうなずけない。
深宇宙の航海という偉業に挑んだ彼らの遺体は、アンモニールの逃亡を防ぐため、回収することが許されなかった。
彼らは、家族の元に戻ることなく、また深宇宙へと旅立つのだ。
「そんな顔しないでやってください。彼らはきっと本望ですよ」
ゼノンは言葉とは裏腹に、悲しそうな顔をしていた。
「宇宙航海士は未知なるものと常に戦っているんです。家族と未来の子供たちのために。だから、本人たちは覚悟のうえです。きっと、後悔なんてしてませんよ」
「そんなものですかね」
「そんなものですよ」
ゼノンは強くうなずいた。
こうして、遠隔操作によってコースセットされたユパニテ号は、再び、長い航海の途についた。
密航者の殺人犯と、その被害者たちを乗せて。
〈了〉