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未来探偵ゼノンと七つの事件  作者: 八海宵一
「01 宇宙船殺人事件」
5/47

#05

    *


「ガ、ガス星人?」

 あまりにぶっ飛んだ推理に、私は愕然とした。

「そ、そんなものいるんですか?」

「理論上、います」

「理論上って、あんた……」

 あまりのことに言葉が続かない。

「シリウス星系には、未知の生命体が多数存在していて、そのうちの一つにアンモニアを主成分にしたガス状生命体、アンモニールがいるとされています。科学的な証明はまだされていませんが、この事件の犯人は彼らですよ」

 そんなもん、わかるか!

 腹のそこから叫びたくなったが、なんとかこらえた。

「ま、まあ……なかなか面白い仮説ではありますが、でも、どうやって、あなたはそれを証明するんです?」

「証明か……いまの地球の技術だと、それが難しいんだよねー。名乗り出てくれれば、一番、手っ取り早いんだけどな」

 そういいながら、ゼノンは操作卓の通信ボタンをプッシュした。

「あー、あー、てすてす。本日は晴天なり。あー、あー、聞こえますか、聞こえますか。密航中のみなさん。残念ですが、みなさんの正体は完全にバレています。おとなしく名乗り出て来てください。今なら穏便に強制送還ですませましょう」

 しーん。

 きっかり一分、静寂が続いた。

 しーん。

 もう一分、待ってみた。

「あ、あのー。クリノさん?」

「はい?」

「誰もいないみたいですが……」

「シュナイダーさん、返事がないからといって、誰もいないと決めつけるのはよくないですよ」

「いや、しかし……」

「彼らにとっても、ここが踏ん張りどころですから、ぎりぎりまで、隠れようとするでしょう」

 ゼノンは唇に指を当て、少し考えこんだ。

「とはいえ、このまま待っていても仕方がないんで、少し強引な手を使いましょうか……。あー、あー。ガス星人の諸君に告ぐ、五、数えるまでに名乗り出なければ、その船を爆破する。五……四……」

 ゼノンは操作卓をすばやく動かし、船の遠隔操作を始めた。宇宙船ユパニテ号は、またたく間にナミハヤ港から離れ始め、自爆プログラムのカウントが始まった。安全な距離まで移動させて爆破する気だ。

 管制室にいる全員が凍りついた。

「ちょ、ちょっと、クリノさん!」

「三……なんですか?」

「なにやってるんですか! そんな勝手なこと許されるわけないでしょう!」

「いや、でも、真実を知りたいのなら、このくらいのことはしないと……二……」

 なにを言ってるんだ、この男は!

 しかし、動きを止めようにも、なにをどうすればいいのか、とっさのことで頭が働かない。今更、この男の身柄を拘束しても、もう手遅れだ。

 私は後悔した。この男を信用したばかりに、重要なすべてを失おうとしている。

 証拠も、事件現場もなにもかも。

「一……」

 万事休す。

 そう思ったときだった。

「マ、マッテ、クダサイ!」

 ユパニテ号から懇願する声が聞こえてきた。

 ガス星人の声だった。

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