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未来探偵ゼノンと七つの事件  作者: 八海宵一
「03 複製人間の罠」
18/47

#01

     *


 私が署内のデスクで「よちよち歩き渋滞事件」の報告書をまとめていると、胸ポケットのカードフォンが鳴り出した。

「もしもし?」

 応答ボタンを押して電話に出ると、すぐに聞きなれた声が自己紹介をしてきた。

「私です。マクレガーです」

 もちろん、悪魔上司の電話番号は登録してあり、かかってきた相手が誰だかわかっていたが、私はあえて大袈裟に答えた。

「やー、警部。お疲れさまです。まさか電話をくださるなんて。大きな声で呼んでくだされば、すぐお部屋までおうかがいいたしましたのに」

 目の前にある部長室を眺めながら、私はそういった。なぜ、この距離で電話をしてくるのか、正直、よくわからなかった。顔をあわせたくないのだろうか。嫌われるようなことをした覚えはないのだが……。

 私が首をかしげていると、マクレガー警部は咳払いを一つし、用件を告げてきた。

「きみ、ちょっと月面第二基地まで行って来てください」

「は?」

 我が耳を疑った。ちょっと月面第二基地?

 地球から月までは、約39万キロあり、ちょっと、という気軽な気持ちで行けるところではなかった。とはいえ、いまは軌道エレベータや月との定期連絡船もあり、絶対にいけない、というところでもないのだが……。

「なにか事件ですか?」

 私が尋ねると、めずらしくマクレガーが唸り声をあげた。

「うーむ。事件といえば事件ですが、そうでないといえば、そうでない案件です」

「どういうことですか?」

「行けばわかります」

 いつもの即答に頭がクラクラしたが、ここで眩暈を起こしていても仕方がない。私は書きかけの報告書を保存し、立ち上がった。

「了解いたしました。ステファン・シュナイダー、直ちに月面第二基地に向かいます」

「ああ、シュナイダーさん、ちょっと」

 電話を切ろうとすると、マクレガーが呼び止めた。

「なんですか?」

「今回は、ぜひ、あの専門家と一緒に行ってください」

「あの専門家? クリノさんのことですか?」

「そうです。必ず、同行してもらってください」

 それだけいうと、マクレガーは電話を切った。

 私は常識では解決できない「何か」があることを悟り、その場でゼノンに連絡をとった。

「あー、もしもし、クリノさんですか? 私です。ステファン・シュナイダーです。すいませんが、月面第二基地まで、つきあってもらえませんか?」

 すると、すぐにカードフォンからゼノンのうれしそうな声が聞こえてきた。

「月面第二基地か……いいですね。あやしい事件ですか?」

「たぶん、あやしい事件、です……」

 そんなことがないことを願うばかりだか、おそらく、そうはいかないだろう。

 私はゼノンに聞こえないよう、小さく嘆息した。

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