#04
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「一体、いつになったら宝石は見つかるのかしら?」
書斎を訪れるなり、マーカム夫人の手厳しい言葉が飛んできた。
夫人はシルクの真っ白なドレスに身を包み、妖艶な肢体を長椅子に横たえさせたまま、警察の無能さについて、さんざん愚痴ったあと、面倒くさそうに、ゼノンとぽち丸を指差した。
「で、なんなの? この人たち?」
「こちらは未来探偵のゼノン・クリノさんとそのパートナー、探偵犬ぽち丸です。迅速な事件解決のために協力を依頼しました」
「未来探偵? 探偵犬?」
夫人が胡散臭そうな目で見てきた。
いささか、視線が痛い。
「あんまり変な人間にウロウロされると困るんだけど?」
「もちろん、承知しております。ですが、クリノさんは常識では解決できないような事件をいくつも解決している難事件の専門家でして……今回の件についても、きっと奥さまのご期待に応えられるかと思うのですが……」
「ふうん」
夫人は値踏みするかのように、ゼノンとぽち丸を見た。
見られたゼノンは眠そうな目のまま、片頬をあげて笑い、ぽち丸はしっぽをパタパタと元気よく振ってみせた。
耐えがたい沈黙が二分。
なんとも言えない微妙な空気が書斎中に行きわたったころ、夫人は口を開いた。
「ま、なんでもいいわ。さっさと解決してちょうだい」
それだけ言うと、夫人は呼び鈴を鳴らした。
「お呼びでございますか?」
瞬間移動でもしたのかという速さでフナンがあらわれた。慣れていないと心臓に悪い速さだった。
「この人たちを宝物庫のある部屋まで案内してあげてちょうだい。未来探偵さんとやらが調査してくださるそうだから。あと、協力できることは協力してあげて」
「承知いたしました」
フナンは静かにうなずき、私たちを書斎から連れ出した。