表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来探偵ゼノンと七つの事件  作者: 八海宵一
「02 双子サファイア盗難事件」
10/47

#03

    *


 マーカム財閥の会長であるエリザベス・ヤマダ・マーカムの屋敷は、ネオ・トーキョーシティ、シロガネ区域にあった。

 広大な敷地に立てられた真っ白な立方体の建物は風変わりで、一目見たら忘れられないほど強烈な印象を放っており、周囲にはこれ見よがしの監視カメラが設置されていた。ご丁寧なことに、庭にはドーベルマンが放し飼いにされている。

 がるるるるぅ。

 ドーベルマンが威嚇すると、ぽち丸は「ふん」と鼻を鳴らした。

「すごい犬ですね」

「まあ、陸(地球)に三匹しかいない探偵犬ですからね」

 ゼノンが当然のように答えた。

 飼い主も変わっているが、飼い犬も変わっている、としかいいようがない……。

 私は気を取り直し、玄関先の見張りに片手をあげて挨拶をすますと、屋敷のなかに入った。とりあえず、ここは主であるエリザベス・ヤマダ・マーカム夫人に一人と一匹の説明をしておいたほうがいいだろう。

 大広間に行くと、ちょうど二階から執事のフナンが下りてきたので、彼を呼び止め、たずねた。

「すいません、フナンさん。奥様は、いまどちらに?」

「書斎でございます」やたら姿勢のいい初老の男性は、静かに答えた。

「興奮が続いているようでしたので、ホットミルクをお出ししてきたところです」

 手にした純銀製のトレイに、青磁のポットとカップが乗っている。見るからに高そうなポットとカップだ。おそらくネオ・ウエッジウッド・カキエモーンだろう。できれば近寄りたくない。

「紹介したい人と犬を連れてきたんですが、いま、お会いできますかね?」

「ええ、問題ないかと存じます」

 フナンは事務的な口調でそれだけいうと、厨房に入っていった。

「いまのは?」

「執事長のフナンさんです。この屋敷に勤めて、三十年だそうです」

「へー、三十年かぁ。それは随分長いですね」

「ええ。でも、おかげで、大抵のことはあの人に聞けばわかるので、正直、助かっています。一見、無表情ですが、捜査にも協力的ですし」

「なるほど。それは素晴らしいですね」

 ゼノンはフナンの消えた厨房を眺めながら言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ