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ACT3

次の日、神殿にやってきた俺は地上を覗いてみた。

 

 「おお、増えてるわ。」

 

 神殿の周りには道ができ、道の横には藁葺き屋根の家が幾つか出来上がっていた。レベルを確認するとLV2と表示されMPも少し増えていた。

 

 「んじゃ地上に降りてみますか。」 

 

 追加要素その2『人間として地上に降りる事ができる』だ。ある程度人口が増加する事が条件だが、現地に旅人として降りる事ができる。そして、色々な技術を伝授する事ができるのだ。これでいきなり水耕農業もできるぜ。・・・信じてくれればだが。

 

 地上に降りた俺は、大地を広げすぎたかなと、少し後悔した。


 『初源の地』は、神殿を中心に平野が広がりほど近い所に川が流れている。少し離れた所に、森があり(ここに最初のボスがいた)さらに奥へ行くと山がある。


 一言で表すと、満遍なく色々あると言う事だ。


 VR化にあたって立体的に広さを表さなくてはならず、俺が定めた範囲は東京都と同じくらいの面積だ。ちょっと考えて欲しい、人口100人が東京都と同じ面積に居るということを。しかも、増えるといっても最大で5万人以下になるであろうことを。

 

 「もう少し小さくても良かったかな。」

 

 ブツブツ言いながら、神殿の前の道を北に向かって進む。北に向かうと山脈があり、南に向かうと海に出る。東は森と山で西に向かうと、隣の地へと行くことができる。・・・隣は未だ魔物の大地だが。

 

 「マスタぁぁぁ。」

 

 天使が空から降りてきて、春が過ぎてるのにムカつく笑顔をくれた。

 

 「魔物討伐ご苦労。」

 

 俺は一応労いの言葉をかけて、天使と向き合う。

 

 「マスター。レベルアップおめでとうございます。LV2になりましたので『革鎧』と『炎の魔法』が解放されました。」

 

 「ん?『炎の魔法』はこの地の人間が回収したものではないのか?」

 

 魔法に関しては原作通り、人間が回収し神に献上する事で使用できるようにしたはずだが。

 

 「それは、私が落ちていた魔法を拾ったからです。」

 

 ・・・なるほど。盲点だったな。普通、同じフィールドにいるならば干渉出来るか。

 

 「そうか、ご苦労。それで『革鎧』とは。」

 

 「はい。革鎧が装備できるようになります。地上なら天に向かって剣を掲げ[革鎧装備]と唱えれば革鎧が装備できます。天空の神殿なら思念だけで着脱可能です。」

 

 俺は早速「革鎧装備」と叫んだ。

 

 一瞬、服が光ると黄土色の革鎧が衣服の上に現れた。

 

 「その鎧は防御力を少し上げてくれます。動きも阻害する事がないので、激しいステージやこういった散策には革鎧を装備しての行動をお勧めします。」


 「なるほど。神とバレないようにする為でもあるのだな。」

 

 周囲が麻で編んだ服を着ている人間が多い中で、シャツとジーパンは目立ちすぎる。

 

 「いいえ。いくらボスを倒しても魔物は出てきます。マスターがザコ敵に殺されるとか信仰に関わりますので。」

 

 天使は冷ややかな視線を向けながら、バカだなとつぶやいた。ムカつく。

 

 「そういえばお前、魔物退治はどうした。こんなところで話している場合じゃないだろう。」

 

 「部下に任せてあります。」

 

 「はぁ。部下。なんだそれ。お前が天使の矢で倒すんじゃないのか。」

 

 「魔法陣が4つもあるのに、私一人では無理ですよ(失笑)。今はツーマンセル(二人組)で各魔法陣上空に待機、魔物が出現次第撃破を命令してあります。」

 

 また天使が増えてる。これ、クリエイションモードの楽しみを削ってないか。

 

 「それよりも、早く天界にお戻りください。マスターが地上に居ると時間経過が遅くなりますので。それと、さっさと地上を焼き払ってください。文化レベルが上がりませんから。」

 

 文化レベルとは文字通り文明の発展度だ。時間の経過とともに上がっていくものだが、なぜか地上を破壊しても上がっていくという不思議仕様となっている。

 

 俺が地上にいると、時間の経過が地上に合わせて進むようになる。天界にいると大体1分で地上が1時間経過する。もちろん調整の可能だが、天界の方が早い。

 

 「そうだな。とりあえずさっさと全ての魔法陣を封印するように、人間達を導こう。その後で、文明が進んだらもう一度来るとしよう。」

 

 「そうしてください。文明が進んだほうが美人が増えますよ。」

 

 俺は地上散策を止めて天界に戻ると、地上を覗く。東西南北に一個ずつ計4つの魔法陣が見える。この地は北、東、南、の3つがナッパーバット、西の1つがブルードラゴンという構成だ。

 

 俺はまず北にあるナッパーバットの魔法陣封印を指示する。ナッパーバットとは文字通りコウモリの魔物で、最弱の魔物だ。が、近くで見ると家4軒分の大きさが有り空を舞う、人間での討伐はなんとか可能というところだ。


 しばらくすると封印作業がはじまり、カンカンカンと金属を叩く音がして白い何かの塊が上空へ散っていった。

 

 「マスター。人間たちは魔物の巣を自らの力で見事に封印しました。魔物の巣から何かが見つかったみたいですよ。祭壇を覗いてみてください。」

 

 祭壇を覗くといつもの二人組が膝をついていた。

 

 「おお神よ。不思議な彫像が見つかったのでご報告いたします。これは捧げものとして献上しますので、どうぞお納めください。」

 

 そう言って祭壇に『輝きの玉』と表示される、少女が祈りを捧げている姿の像、が置かれる。

 

 「これは、かざす事で天空を舞う魔物を消滅させる、と言われている品物です。」

 

 俺は手でその象を掴むと手元に引き寄せた。自分で作っておきながら中々の出来だと思ってしまう。

 

 「今年の捧げものはこれで全てです。受け取って下さりありがとうございました。」

 

 俺はインベントリを開くと、そこに像を仕舞う。原作にはインベントリは無かったが、VRゲームにはインベントリは必須だろう。と、思ったので追加した。

 

 しばらく見ていると、家々から火の手が上がる。火事が発生したようだ。祭壇に人間が現れて声を張り上げた。

 

 「おお神よ。火事が発生しました。雨を降らせてください!」

 

 俺は火の手が上がっている家に向かって・・・落雷を起こした。

 

 雷は家を木っ端微塵にして、火が沈下する。天使が現れて、目を細め苦言を呈した。

 

 「マスター。随分強引に火を沈下させましたね。もう少し良い案があったような。」

 

 これは原作の通りだ。回答は一つじゃ無いと言う事だな。

 

 「でも、人間達が自分で消化しないほうがもっといけませんね。マスターに尻拭いを頼むとは・・・。」

 

 やはりAIが入っていると考えるから面白い。俺はそうだな、と返して経過を見る。

 

 暫くすると、西以外の魔法陣は全て封印されて、あと一息という所までくる。

 

 西にあるブルードラゴンの魔法陣。ブルードラゴン、竜である。蒼い西洋竜と考えてもらうのが早いだろう。口から雷を吐き、空を舞い、耐久値もナッパーバットの4倍と言う強い敵だ。

 

 当然、魔法陣も一筋縄ではいかない。まず、魔法陣に到達する為に川を渡らなくてはならず、川を渡るには橋を掛ける技術を得なくてはならない。文化レベルがある程度上昇した上で、川に対する問題提起が必要なのだ。

 

 さらに、川を渡れても今度はブルードラゴンが魔法陣を守っている。原作では、魔物は自分の魔法陣を守るようなことはしない。しかし、このゲームの魔物達は当然の様に魔法陣を守っている。


 人間がドラゴンを倒す事など不可能なので、この場合俺や天使との共同作業をする事になるのだ。


 待つこと数十分、橋の技術が開発された様で祭壇に人が現れる。

 

 「おお神よ!。ここ初源の地に、素晴らしい技術が生まれました。我々は、川に橋を架ける事ができるようになったのです。この素晴らしい『橋の技術』を捧げます。どうぞ他の地にてお役立てください」

 

 これで、ドラゴン退治のお膳立ては整った。と、そこに天使がやってくる。

 

 「マスター。レベルアップおめ!。総人口200人突破です。」

 

 「おお、上がったのか。能力の開放とかはないのか。」

 

 「今回は特にありません。MPが60になったくらいですね。っと、祭壇で人間が呼んでいますよ。まだ何か伝えたいことがあるみたいです。」

 

 俺は祭壇にもう一度目を向けた。

 

 「神様。ここ初源の地では漁業が始まりました。先日、漁師が船の手入れをしている時に巻物を発見しました。これは捧げものとして献上しますので、どうぞお納めください。」

 

 俺は祭壇の上にあった『橋の技術』『巻物』を手に取る。巻物は俺の最大MPを増やすための物だ。当然さっさと使用する。

 

 「さて、竜退治だな。天使よ。竜の巣退治はどうするんだ。」 

 

 「はい。すでに現地民を50名ほど向かわせてあります。マスターが落雷により龍を全滅させた瞬間、人間達に封印作業をさせる予定です。その際、何名かの下位天使を護衛として派遣します。」

 

 「なるほど、妥当だな。けど、落雷程度で龍が死ぬのか。」

 

 「問題ありません。マスターの落雷は『神の裁き』と呼ばれる神聖なものです。邪悪な魔物にはこの上なく効く事でしょう。」

 

 俺が地上を眺めると、竜の魔法陣からある程度離れた位置に人間が固まっていた。

 

 俺が早速雷を落とすと、人間達は急いで封印作業を開始した。封印の最中、竜が1匹出現したが天使軍団によって滅殺されていた。

 

 「これで、この地の魔法陣は全て封印できましたね。人間達が何か伝えたいようですよ。」

 

 祭壇に目を向けると、女が一人天に向かって声を掛けていた。

 

 「おお神よ!最後の魔法陣が封印されてから、私は毎晩同じ悪夢を見るようになりました。夢には南東の大穴より、ミノタウロスという魔物が現れ人々を殺戮して回るという恐ろしいものです。私には予知能力が有り、既にこの体が魔物の呪いにより蝕まれている気がするのです。神様、事が起こらぬうちに地上へとおもむき、ミノタウロスを消し去ってください!。」

 

 「予知能力とか、俺よりすげえじゃん。」

 

 「全くですね。」

 

 天使がうんうん頷いていた。

 

 「そんな事より、この地を支配する魔物の出現です。マスター、ミノタウロスを倒せばこの地域は今後、邪悪な者の影に怯えることはないでしょう。戦いに赴く準備を。」

 

 ついに初源の地ACT2だ。

 

 「行き先は洞窟だったよな。注意点はあるか。」

 

 「はい。足場が悪く、暗い上に敵の数も多いです。その上、内部は入り組んでいて罠も散見されます。」

 

 「そうか・・・。う~ん、武器は何が向いている。」

 

 「ここでしたらば、遠距離攻撃が可能な槍や弓、銃に魔法杖等がいいかと思われます。『炎の魔法』を取得されてますので、MPを消費しての魔法行使が可能です。武器に纏わせて使ったり、そんまま撃ったりできますよ。」

 

 「魔法杖を使うと炎の他に何ができるんだ。」

 

 「MP未消費ですと、炎、氷、雷の魔法が使用でき、消費ですと星屑、火炎の魔法が使えます。」

 

 「洞窟の中で星屑の魔法が使えるのか。」

 

 「可能です。もっとも、狭い通路では意味を成しません。広範囲攻撃ですので。」 


 「わかった。今回は魔法杖で行く。」

 

 天使は、畏まりましたと言って中空から一本の長い杖を取り出す。それは俺の身長ほどもある木の杖で、先端に赤い宝石が取り付けてあった。

 

 「この杖からでしたら、どこからでも魔法が放てます。マスターのMPは60ですから、星屑の魔法は3発、火炎は2発打てます。射程距離等は、ご自分でお確かめください。尚、MPは自然回復します。が、満タンまで一時間は掛かると思ってください。」

 

 「小盾とかは装備できないのか。」

 

 「不可能です。魔法杖を持つ場合は、これのみとなります。」

 

 殆ど遠距離攻撃のみか。とりあえず実地で調べていく他ないだろう。

 

 俺は戦いの為、地上へと降りるエレベーターへと進む。

 

 「今回はどれで降りますか。」

 

 天使がムカつく笑顔で俺に問う。

 

 「即地だ。」

 

 俺は即地のエレベーターへ向かうと中に入る。すると・・・。

 

 「あれ。」

 

 目の前は洞窟の中だった。

ゲーム内容に関する事は一切お答えできません。ご自分でプレイをお願いします。

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