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天使さんが妹とかマジウケるんですけどww

天使界にある宮殿の中には、現在はもう一切使われていない『堕とし鏡』と呼ばれる天使界と人間界や冥界との間を繋ぐ唯一のゲートが存在する。その『堕とし鏡』が安置されているのは宮殿の地下奥深くにある一室で、常時立ち入り禁止とされているが数十年に一度だけその封印が解かれる時がある。

それは、神と『冥界の王ハ・デス』が謁見する時である。

基本的にはそれ以外でこの『堕とし鏡』が設置されている部屋が公式に開かれる事は無い。

「つまり、今回が超イレギュラーな例外って訳…か。………それにしてもおかしいわね、彼女、フィリー・アクィナは全然囚われている様子じゃ無いじゃん。あのアホの兵士長は『罠に嵌められて身動きすらとれない最悪の状態だぁ~』……とか言ってたんだけど……。」

天使界にある七つの天空を守護する騎士団の一つである第七天騎士団の団長シャルロットは首を傾げた。

何故なら『覗き鏡』に写る救出対象であるハズの天使が人間と普通に楽しそうに会話しているのだ。

「なによ…せっかく人間界に降りたっていうのに。ただ連れ戻すだけなんてつまんないじゃない……。」

とあるアホな兵士長から天使救出作戦の命令を受けてはるばる天使界から人間界にやって来たのにこれでは骨折り損である。

彼女は騎士団団長でありながら全騎士団の中でも相当腕の立つ剣士でもある。

そんな彼女に天使救出作戦なんていかにも物騒な作戦が任せられたとなれば血湧き肉躍る白熱バトル展開が用意されているものだとばかり思っていたのだ。

「……なんか萎えるわね。」

しかし天使界では階級での上下関係が厳しく、絶対的な戒めとして天使は自分より上級の天使には逆らう事は出来ないようになっている。

もし、その戒めを破れば制裁として無条件で強制的に堕天使になってしまうのだ。

「堕天使だけには絶対なりたく無いし頑張るしかない……か。…はぁ………作戦の実行は明日にして、暇つぶしにコンビニとか言うお店にでも行ってみようかな……。」

シャルロットは不貞腐れながらも気晴らしに夜の街を歩き出した。


[][][][][][][][][][][][][][][][][][][]


そして次の日。

「……………、」

僕の意識がなんとか復帰を果たしたのは、あくる日の朝早くである。

どういう訳か目覚めた時はリビングのソファの上に寝かされた状態だった。

「(……確か昨日……、僕は風呂場で失神したんだったっけ。)」

そうだ、天使さんだ。

おそらく彼女が風呂場で倒れた僕をここまで介抱して

れたのだろう。

「………おーい天使さん。」

するとキッチンの入口から天使さんが顔だけひょこっと覗かせた。

「あ、やっと起きた!…ちょっと待っててね、丁度今朝ごはん作ってるから。」

「あ、朝ごはん?」

ソファから立ち上がり台所を覗くと、エプロンをした天使さんがせっせとフライパンの上に広げられた二人分のホットケーキを裏返していた。

「………………………わぉ、」

なんかこう、感無量。

なんだこの感覚。どうやら初めての経験であろう、朝起きたら女の子が僕の朝ごはんを作ってくれているなんて………。

「天使さんでも料理出来るんだな。」

「まあね、だって天使だもん( *`ω´) 私達天使はこの人間界が戦争とか災害に見舞われた時に人間に紛れて救護活動とかにも参加してるんだよ?」

天使さんは得意げに出来上がったホットケーキを小皿に乗せた。

「…へえ……、ご苦労なこった。」

案外天使と人間はお互い近い存在なのかもしれないな。僕ら人間は天使さん達の存在を知らないから一方通行な訳ではあるが。

「さぁ食べてみて下さい!これなら人間さんのお口にも合う事間違い無しです!」

「…い、いただきます。」

まずは一口目、フォークで小さくちぎって口元に運ぶ。

「(………見た目は問題無し…か。匂いも悪くない、………………さて、そのお味のほどだな………。)」

健気に朝ごはんを作ってくれるのは大変嬉しいのだが、昨日のカレーの事を考えると天使と人間の間には歴然たる味覚の差が立ちはだかっているのは確実だ。

それ故に恐ろしい。

しかしまぁ、この出来具合だと問題無いであろう。第一ホットケーキなんてまずくなる要素が見当たらない。ただ粉やら卵を混ぜて焼くだけだ、銀魂のお妙さんじゃあるまいし突如ダークマターに昇華する訳も無いだろう。もしかするとパフェになってくれるかもしれない。

まぁ取り敢えず食べてみるしかないか……、せっかく僕のために作ってくれたんだから。


「……パク、……………おお、……うん。まぁ悪くない………かな?……………………………ん?なんの味?これ…………………………………ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」


ぬかった…………!!しっかり味を確認してしまった…。

鉄板的にこのホットケーキが美味い訳がないじゃないか。なんたって相手はあの天使さんなんだぞ?

いや、マジで本当に。何このホットケーキ、マジックリンみたいな味がするんだけど?一体何入れたの?

「あの………天使と人間の味覚が正反対なら、天使である私が『これはマズイだろ。』と思う味付けをすれば良いのかなぁ~と思って…………。」

それでマジックリンを入れたと?バカじゃねえのか?!ポイズンクッキングどころじゃ済まねぇぞコレ、間違いなく僕の事を殺す為に作られた殺人兵器だ。

「…………ゔっ!…ふ、ふざけんなよ…!!あぁ、くそッもうダメだ!オロロロロロロロロロロロェェェェッ!!!」


だ、誰か早くこの殺人(未遂)天使を連れ帰ってくれ!!

もう本当誰でも良いから!!!



「あら、そう?じゃあ本当に連れ帰っちゃうけどいい訳?」


突然どこから現れたのか、一人の女性がリビングのソファの上に座ってこちらを楽しそうに眺めていた。

「…シャルロット団長いつの間に?!」

「……げほげほッ、……だ、だれ?」


「この私を知らないですって!?やだ、これだから人間は嫌いなのよ!この下品な豚野郎!貴方なんて家畜以下の存在よ!それとも、貴方なんかと比べたら家畜に失礼かしら?うふふ。何よ、その目は。もっと叩いて欲しいのドM君?本当にいやらしいわ、醜さの極みよ貴方。なんか貴方なんかに「貴方」という言葉を使う事自体が勿体無い気がしてきたわ…、そうね腐敗菌のようなゴミムシにとびきりのお名前をつけてあげる。ありがたく思いなさい!そうね………、以上から総じてあなたの名前は『エブリバディ裕一』と呼ばせてもらうわ!!!」


だ、誰だよエブリバディ裕一って…………。

「………で?結局あんたは誰なんだ。」

「真守くん、この人は天使界の空を守っている騎士団の一つである第七天騎士団団長のシャルロットさんって言うんだよ。」

天使界の騎士団長?

言われてみれば彼女の服装は天使さんよりも少し豪勢な衣装に身を包んでいる。天使さんが貴族の娘だとすれば、彼女は王宮のお姫様といったところか。

「ときにフィリーちゃん、一つ質問しても良いかしら?」

「………?、何でしょうか。」

「貴方はどうしてそんなに人間と仲良く馴れ合っているの?下手をすれば堕天使だと誤解されてしまうというのに。」

「…………いえ、彼には困っているところを助けて頂いたので…。」

「助けられた?はぁ?ちょつと待って意味わかんないんだけど、あのアホの兵士長の野郎!言ってる事が何一つ合ってないじゃないの!」

シャルロットは天井の向こうにある天使界を睨みつけるように見上げて舌打ちをした。…まるで天使の行動とは思えない、みんながみんな天使さんの様に礼儀正しくて優しい訳では無いようだな。

「………まぁ、どうでも良いけど。さあ天使界に帰りましょうフィリーちゃん、人間界に落ちた訳は天使界に帰ってからじっくり聞かせてもらうわ。」

「え、ちょ、マジで帰っちゃうの?」

ちょっと早くないか?昨日出会ったばかりなのにもうお別れなんて淋しいじゃないか。

「さっきエブリバディ裕一自身が言ってたじゃないの。連れ帰って欲しい!って。……もしかして何?フィリーちゃんともっと一緒に居たい訳?きゃぁ、ハグハグくんかくんかしたいの?セクハラよそれ。本物のド変態ね。この犯罪者予備軍。言っておくけどフィリーちゃんはかなりのドSよ?つまりはそう言う事か、フィリーちゃんに縛ってもらっていろんな意味でパンパンして欲しいのね?エブリバディ裕一のそのツラ見てると段々こっちまで腐ってきそうになるわ。あははは、何よその目は。無力を訴えてるの?すこぶる情けのない男。しょうがないわね~特別にこの私が縛ってあげるわよ。亀甲縛りで。』

………何なんだこいつは。もしかして楽しんでいるのか?僕で。

僕を縛ってもなんら楽しくないと思うな!

「まぁ、あんたが止めたところでなんの意味も無いんだけどね。」

シャルロットは服の裾から銀色の小さな鍵を取り出し、虚空に放った。

すると投げられたその鍵は淡く光を放ち、大きな光の扉の様な形を形成していく。

『天使と人の禁忌の扉よ、騎士団長シャルロットの名の下に汝の封印を解かれよ。』

ガチャ、と錠の落とす音が部屋の中に鳴り響くと同時に光の壁に扉が生まれた。

「おお、凄いなコレ。もしかしてこの扉をくぐれば天使界に行けるのか?」

「はい、これは天使界と人間界を繋ぐゲートの様な物で、『堕とし鏡』と言います。使用が許可されたんですね。」

流石は天使だな。なんかイメージ通りのファンタジックなテクノロジーを持っている。

「じゃあ行くわよ、フィリーちゃん。…………あ、そうだ。アレを確認するのを忘れてたわ。翼を出してちょうだいフィリーちゃん、一応翼の色を確認しておかなくちゃ。」

「翼の色?何の為に確認するんだ?」

「人間界に落ちた天使がもし天使界に何らかの悪意や反感を持っていれば翼の色が白から黒に変わってるのよ。それで堕天使かどうかを確かめるって訳。………フッ、そんな事も知らないのねエブリバディ裕一。どうしようもなく哀れな男だわ、思わず優しく解説してしまったじゃないの。このマゾヒストが。あなたもしかしてこの私に甘えたいわけ?嫌よやめて。気持ち悪いわ。納豆菌が付いちゃうじゃない。体の一部が腐り出したら一気に全身に広がるってあなた知ってた?この腐肉犯罪者。気の毒に、自分が腐っている事実にまだ気付いていないのね………ウフフッ。こっちを見ないでよ何だか可哀想になってくるじゃない。情に訴えるなこの肉便器が!それに……………」

「帰れェェェェェェェェエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!」

何なんだよこいつ!そんなに嫌いなのか?僕の事が!

「あの………、翼を出しても良いですか?」

「ああ、ごめんねフィリーちゃん。ちょっと黙っときなさいジョブズ裕一。」

「僕と世界の偉人を一緒にしてくれるな、天国のジョブズに失礼だ。」

天使さんはジャージのポケットから取り出した白い腕輪を胸に当てて呟いた。

『全能なる父ファルシよ、今一度我に神聖なるチカラを与えたまえ。』

天使さんの全身が薄い光を纏い、背中から真っ白な光が溢れ出していく。どうやら天使達のファンタジックテクノロジーはいちいち光が放たれる様だな。

そして一瞬にして天使さんの背中に真っ白で美しい翼が現れた。

「…うん、よし問題無しね。」

「真守くん、短い間だったけどお世話になりました。すごく楽しかったです。」

天使さんはぺこりと頭を下げて言う。

「僕もまた妹ができたみたいで嬉しかったよ、ありがとう。」




「………………なーんてね。」




突然、天使さんが光の扉の中にシャルロットを突き飛ばしてしまった。

「ッフィリーちゃん!?何を………………!!」

さらに天使さんは追い打ちをかけるように勢いよく光の扉を閉じてしまった。

「え、………ちょ、天使さん!何やってんの!?」

天使さんはそのまま光の扉の鍵をかけてしまったようだ。これでは天使界に帰れないじゃないか!せっかく仲間が迎えに来てくれたというのに…!


「お兄ちゃん。」


天使さんの口から信じられない言葉が飛び出した。


「久しぶりだね、ずっと会いたかったよお兄ちゃん。」


写真の中の笑顔が、そこに居た。

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