神様とミジンコ。2
『……まず、貴方に言って置かなくてはならない事が一つあります、』
神は祭壇の王座に優然と鎮座する。
『貴方が今そうして私の目の前に立っている事実は、私のひいひいひいお祖父様がこの世をお創りになられた際に作られた星の記憶、つまり「アカシックレコード」の上ではすでに亡き者とされています。つまり、貴方は本当はこの世に存在し得ない存在なのです。』
「……だが、僕はここにいる、」
『そうです、この私が、全知全能であるこの神が貴方の星の記憶を書き換えた結果、こうして私と再び合間見えることになっているのです、』
つまりは僕があの時、妹の代わりに死ぬことはアカシックレコードの一部であり、必然的に起こったことである。
「なら、変わってしまったその『アカシックレコード』は、もとに戻ったんだろ?」
つまりは裏の裏、表裏一体においての同義である。
『完全に、ではありませんが、もとの、本来あるべき姿には戻ったのでしょうね。……ただ一つを残して。』
「………、何が言いたい、」
『………あはは、隠してもいづれはバレる事ですね。単刀直入に言います。』
貴方を天使にします。
「………………僕が、天使に、だと?」
『はい、もとよりそれが本当に、本来のカタチなのです、』
「………………、」
たしかにそうだ、
僕はあの時たしかに死んだ、そこまでは本来の『アカシックレコード』上の出来事であったのだ。
それをこのロリっ娘神様が書き換えた結果、秋奈は天使になったのだ。
僕が死んで、秋奈が生きている世界。
それが一番正解で、『アカシックレコード』に則った本来の立場。
「………、それが、あんたの言いたかったことか?」
『……はい。』
「こっちも一つ、あんたに聞きたい事があるんだ。」
『……なんなりと、』
神はゆっくりと微笑んだ。
「秋奈はあの二人に何を吹き込んだんだ?」
『簡単ですよ、彼らに「堕とし鏡」の使用を許可する、という内容の取引です。』
取引、か。
「それであいつらは秋奈に協力したってか。」
なるほどな、
「ならその取引は僕の勝のようだな、」
『……………なぜ?』
「……気付いてないのか?鏡に映る自分の顔を見てみろよ。」
『……私の、顔?』
神は大きな柱に掛けられた鏡に目をやった。
『…………あはは、』
「……見事なまでの、ハの字型の眉毛だな、」
神の細い、控えめな眉毛が笑顔をまた別の表情を表している。
『…どうやら貴方の前だとどうしても困ってしまう自分がいるようですね、』
神が、玉座から自ら地に足を付いた。
『ありがとう、人間の少年、貴方には私の名を聞かせましょう。……レミリアファーファウス・ブルフリックキングストン。これが私の名です。』
世界を束ね、この世の存在証明であり、最も尊ぶべき生き物の名。
『更に、このつるぎを授けます、』
「……、!」
神の左手が青い光を放ったかと思った瞬間、既にその手には蒼いつるぎが握られていた。
『このつるぎは、私のひいひいひいお祖父様が世界をお創りになられた時、この世の媒体としてお使いになられた偉大なつるぎです。私の誕生日にひいお祖父様がプレゼントしてくれました。』
「い、いいのか?そんな大事な物を……、」
『いえいえ、貴方はこの私を苦しみから開放してくれました。それは世界を救ったのも同然なのです。』
「そこまで言うか…、」
少しどぎまぎするな…、
『考えてみてください、私の気分一つで世界を潰すことも可能なのですよ?』
それもそだが……、
『それに貴方はこれからこの私と同じ、天使界の住人になるのですよ?』
「ちょっと待ってくれ、僕は天使になるなんて一言も言っていない!」