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神様、どうやら僕は不幸な星の生まれのようですね。2

10


現在、日曜日の夕暮れ。時計は午後の五時とそこらを指している。

『お兄ちゃんはここで待っていて。私は神様との約束があるから、一度天使界に戻らなくちゃいけないんだ。』

天使さんがこの言葉を残して天使界に帰ってから、かれこれ三時間は時が過ぎたであろう。

結局、最後の最後まで天使さんがどのような手口でシャルロットやレミファー兵士長を味方につけたのかはわからなかった。

天使さんが教えてくれなかったのだ。

「……神様との約束……か。あてにならんだろーな……….……。」

幼い頃は誰でも神様やサンタクロースの様な迷信的な存在は信じるものだろう。しかし僕の場合は少し信じるのを辞めるのが早かった。

僕は、一度だけ神様に会ったことがある。

神の存在を認めないのではない、


神を信用していないのだ。


何故なら、彼女には一度だけ裏切られたことがあるからである。

それはあの十年前の事故の日。

僕はあの時、目の前で死んだ妹を生き返らせてくれ、と神様に願い空を仰いだ。確かに神様は僕の言葉に答えてくれたが、願いは叶えてくれなかった。

あまりに身勝手で自愛主張的な言い様ではあるが、幼い頃の僕は神様に対して酷く八つ当たりにも似た嫌悪感を抱いていたのだ。

その感情は今も胸の奥底に、けれど確かに染み付いて離れようとはしない。

「誰かに望んだって何も変わらないんだ。……まず、自分から変わらなくちゃ何も望めない。」

そう自分に言い聞かして、生きてきた。

他力本願を自制し自ら拒む、そうまさに自力本願な人生の生き方を憧れて過去を今日に繋いだ。

しかしなんてこと言っているが、実際僕はそんな大層な人間ではない。

昨日から僕の身の回りで起こっている数々のイベントを机に並べて整理しようとしてしまえば、この頭は許容値を越えオーバーヒートを起こすだろう。

それくらいに小さくて、馬鹿なミジンコのような一般高校生。

それが僕。

宮城祇真守(みやしろぎまもる)だ。

みなさんどうぞ、お見知り置きを。

そして天使界の妹に、幸運を。


[][][][][][][][][][][][][][][][][][][]


少し戻って一時間前。


「この扉の向こうは、神様の居られるエデンの園に直結している。いよいよだな、心の準備はいいか?君たち。俺様は常時万端だ、おーらい、俺。」

「私も別に問題は無いわね。あんた本当に大丈夫なの?アホなんだから………。」

「…アホだと?俺様が?いや、ない。マジない。ミスターパーフェクト、俺。シャルロットくんこそ大丈夫なのか?」

「当たり前でしょ?言っておくけど今の私は本気よ。本気の私は誰にも止められないわ、たとえ神様でもね。」

「………ふ、頼もしい限りだな。」

若干興奮気味な上級天使二人を負い目にフィリーは口を開いた。

「ごめんなさい………、お二人まで巻き込んでしまって………。」

「あやまることないわ、フィリーちゃん。正直なところ私は今この状況をとても楽しんでいるのよ。」

「シャルロットくんの言う通りだ、フィリーくん。かえってこのような機会を与えてくれたことに感謝しよう!」

上級天使とは言えども、所詮は一介の天使であることに変わりはない。普段は神を目にすることすら許されてはいないのだ。

「我等が神に、一矢報いる時!グッドラック!俺達!」

言ってからレミファー兵士長はエデンの園に繋がる扉を開け放った。


「………とうとう来たか馬鹿ども。こっちだ、神様がお待ちかねだぞ。」


扉の向こうに開けたのは薔薇の園。

天使長のミファエルが待ちに待ったかのような様子で三人を迎え出た。

美しい彫刻が施された噴水の脇には、無数の薔薇が美しくも繊細に、圧倒的な存在感をはなっていた。

「…………わぁ…、綺麗な庭園ですね…。」

「ああ、フィリーくんはエデンの園に来るのは初めてか。どうだー、綺麗な薔薇だろー。」

「はい、とっても……!」

しかしシャルロットは虚空を見つめながら呟く。

「……まあこの薔薇全部、小悪魔(インプ)のフンから養分吸い取って成長してるんだけどね……………。」

「………………………………。」

「ごめんな、フィリーくん。彼女は人の夢を潰して貪ることで自らの(かて)としているんだ。」


「おい、何をごちゃごちゃと騒いでいる。さっさとついて来い馬鹿野郎。」


「天使長のいう通りだわ、さっさと神様のところに行かないと。」

「…………そうです……ね。」


薔薇の園を抜け、いくつかの階段を登り少し歩くと、今までよりずっと開けた空間に出た。

ここが宮殿の頂上である。


『ようこそいらっしゃいました、レミファー、シャルロット、……そして、フィリーちゃん。』

「お久しぶりです、神様。申し訳ございません、エデンの園に、このような翼で赴くことにならうとは………。」

『いえいえ、レミファー。事情は存じているわ。それも仕方のないこと。』

「……………で、バカども、こちらの準備は万端だ。いますぐにでも始めれるが……………、どうする?」

天使長の視線がそれぞれの瞳とぶつかり合う。

「元よりこちらも、オールグリーンです。ノープロブレム、俺たち。」

三人の相槌がシンクロした。



『それでは早速、ルール説明といきましょうか。この勝負の決まりは一つだけ。……私の、


この神の、表情を崩す事が出来れば貴方たちの勝利です。』


かくして、闘いの際は切って下ろされた。



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