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一ヶ月のアルファード目線

シルビアは可愛い。

その一言に尽きる。

けれど、やはり、カレンとは全く違う。

食事の仕方もおぼつかず、フォークを落としてしまったり、パンくずをこぼしてドレスを汚してしまったり。

その様子すら、私には新鮮で、思わず「そんなところも愛らしい」と笑ってしまうのだ。

いつまでもそのままではいけない、という思いも、ほんの少し胸の奥に引っかかる。

先日の舞踏会でもそうだった。

用意されたドレスを身に纏ったシルビアは、確かに可愛いはずなのに、なぜだか妙に似合わない。

首を傾げていると、横から教育係が遠慮なく告げた。

「殿下、あれは……がに股なのです。O脚のせいで姿勢が崩れて、ドレスの線が美しく出ません」

なるほど。そういうことか、と納得した。

だが、ふと気になって教育係に尋ねたことがある。

「どうしてカレンには、あまりそういう指摘をしなかったのだ?」と。

彼女は一瞬、答えを躊躇ったが、やがて小さくため息をつき、淡々と告げた。

「カレン様は、指摘するところがほとんどございませんでした。すべて自然に身についておられました。本当に完璧な方でしたわ」

「おかしいな。私の聞いた話では、カレンは教える程でも、ない程度だから諦められていた、と聞いた」

シルビアとよくその話しになる。

「何をおっしゃいます。全てにおいて完璧でしたから教育することがなかったのでございます。見ていて素晴らしい方でしたよね」

成程、と思った。

よくよく思い返してみれば、カレンは確かにいつも、美しかった。

背筋はすらりと伸び、所作ひとつひとつに無駄がなく、振り向く仕草だけでも周囲を惹きつけていた。

私はそんなことを意識したこともなかった。ただ、隣にいるのが当たり前だと思っていただけだったのだ。

「カレンは努力していたのですよ。殿下のために」

教育係がぽつりと漏らした言葉に、ふうむ、と考えた。

シルビアが勘違いしていたのか。

カレンがいてこそ、私は「王太子」として安心して振る舞えていたのだ。

隣で支えてくれていたから、私は難しいことを覚える必要もなく、ただ威厳を保っていればよかった。

そうだ、やはりカレンなのだ。

シルビアも可愛い。

でも、まだ覚えられないことが多い。貴族名簿を見せても、途中で飽きてしまう。

舞踏会で紹介しても、緊張して名前を取り違えてしまう。

無理をさせれば、泣き出してしまいそうなほどだ。

だから、私が人の名前を覚えなければならない?

そんなのは困る。

私は王太子だ。いずれ即位する者が、一人一人の細かい顔と名前を把握してどうする。

そういう細やかなことは、妻となる者が自然にやるべきなのだ。

カレンはそれを完璧にこなしていた。

だから私は余計なことを気にせずに済んだ。

そう、カレンは「私のため」にいてくれた。

そして、今はシルビアがいる。

まだ未熟で、拙くて、けれど愛らしい彼女を、私は守ってやらねばならない。

そうだ。

この間、シルビアがとても良い案を教えてくれた。

それで全てが解決する。


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