一月後のシルビア目線
最近、アルファード様がすこぉしいえ、正直に言えば、かなりうるさいわぁ。
婚約者候補になってから、もうすぐ一月が経とうとしているけれど、どうして誰も彼も、ことあるごとに「カレンが」「カレンなら」と、私を彼女と比べてばかりなのかしらん。
教育係の目つきなんて、思い出すだけでむかっとする。
人を値踏みするように細めた眼差しに、冷たい光がちらつく。口元には、皮肉めいた笑みを浮かべ、わざとらしく大きなため息。
そして、私の耳にきちんと届く声量で「カレン様なら、こんなことは一度もございませんでしたのに」なんて呟くの。
嫌味以外の何物でもないじゃない。いっそ「あなたはダメです」と面と向かって言ってくだされば、まだすっきりするというのに。
だいたいね、まだ二年も時間があるのよ?
それを、誕生日が近いからって、急に全部覚え込めというのが無理なのよぉ。
招待客の名前にしてもそう。アルファード様が既に全部覚えているのだから、別に私が覚えなくても問題ないわぁ。
それを「カレン様は全員の顔と名を一度で記憶なさっていました」なんて、ことあるごとに突きつけてくるのよ。
そもそも、カレンは幼馴染みでしょう? 小さい頃から王宮に出入りして、自然と身につけたことを、今になって私に求めるなんて不公平よぉ。
私とは出発点が違う。なのに「できて当然」みたいに扱うなんて、おかしいじゃない?
アルファード様だって、そうなの。
最初の頃は「可愛いね」って微笑んでくださった。私の考えに「君の視点は新鮮だ」と、目を細めて楽しそうに受け入れてくださった。
なのに最近は、口を開けば「カレンはこうだった」「カレンならこうしただろう」と。まるで、わたしを常に前婚約者と比べてばかり。
先日は、舞踏会での立ち居振る舞いについて指摘された時もそう。
「君は愛らしいけれど、カレンはもっと落ち着いていた」って。
書簡の作法を練習した時だって、
「少し字が乱れているね。カレンは几帳面だったから」なんて言葉が返ってきた。
あのとき、胸の奥がぎゅっと縮んで、思わず唇を尖らせてしまった。
私、拗ねちゃったの。
でもね、私が頬をぷくぅっと膨らませると、アルファード様はすぐに慌てて「いや、責めているわけじゃない」「君は君でいい」と慰めてくれるの。
そういうところは可愛いと思うのよ。だから余計に、むかむかしちゃうの。
けどぉ、どうにかしないとイライラが溜まってしまう。
確かにぃ、カレンがいたら楽なのかもしれない。
だって、彼女はもう何もかも知っているんだから。
でも、だからって私は引き下がらない。
だって、私がアルファード様に一番相応しいしぃ、王妃なるんだもん。
むしろ、こう思うの。
貴族令嬢は、王子のために動いて当然。
カレンができたことを、私が全部やる必要なんてないわ。周りが動けばいいのよ。
ふふっ。
ねぇ、良いこと思いついちゃった。
そうよね、カレンがやった事を私がする必要ないもんね。




